西山朋佳白玲に里見香奈女流五冠が挑戦する第2期ヒューリック杯白玲戦七番勝負(主催:ヒューリック株式会社)の第5局が10月1日(土)に奈良県奈良市「ふふ奈良」で行われました。結果は117手で里見女流五冠が勝ち、七番勝負の対戦成績を3勝2敗としました。

本局は里見女流五冠の先手番。先手中飛車対後手三間飛車の相振り飛車は見慣れた進行とも言えますが、お互いに譲らない両者の意地がぶつかった戦型でもあります。さらに双方が向かい飛車に振り直し、それぞれの玉頭を飛車でにらむ形となりました。

西山白玲が継ぎ歩と垂れ歩を駆使して先手玉頭に拠点を作ったのに対し、里見女流五冠は後手陣に角を打ち込み、その角を金銀との二枚換えとして駒得に成功します。駒損の代償として玉頭に拠点が残っている形で手番を貰った西山白玲は、80手目の△6九角から猛攻を仕掛けます。角切りから拠点を生かして駒を打ち込んでいき、飛車を成り込んだ後に再度△6九角と引っ掛けて先手玉は2手スキです。

ここで里見女流五冠は▲8四歩と反撃に出ました。対して西山白玲の△同歩は自然にも思えますが、次の▲6五桂が厳しく、ここから形勢は徐々に里見女流五冠へ傾いていきます。

△8四同歩では代えて△6七銀と攻め合う手がありました。これで先手玉は詰めろです。▲3八歩の受けには△1九竜と香を取ってどうか。先手は持ち駒に銀が入ると後手玉が詰めろとなるので、△1九竜に▲5七玉と銀を取りに行きたくなりますが、それは△5八角成▲同金△6九竜の詰めろが受けにくくなります。銀と違い、角をもう一枚渡しても後手玉は詰みません。△6七銀には▲5九金打と堅く受けて難しい勝負のようですが、持ち駒の金を手放す受けは先手にとっても指しにくいところでしょう。

優勢になった里見女流五冠はそのまま押し切り、3勝2敗と西山白玲をカド番に追い込みました。第6局は10月15日(土)に東京都台東区の「浅草ビューホテル」で行われます。西山白玲が踏みとどまって最終局へ持ち込むか、里見女流五冠が2019年以来の女流六冠に復帰し、節目となる50期目のタイトル獲得を実現するか、注目です。

相崎修司(将棋情報局)

女流六冠復帰まであと1勝とした里見女流五冠(写真は33期女流王位戦五番勝負第2局のもの 提供:日本将棋連盟)
女流六冠復帰まであと1勝とした里見女流五冠(写真は33期女流王位戦五番勝負第2局のもの 提供:日本将棋連盟)