放送開始55周年を迎えた『ウルトラセブン』の4K特別上映が2022年10月1日から全国16劇場にて実施され、これを記念して東京・TOHOシネマズ池袋に豪華ゲストを招き「55周年記念セレブレーション トークイベント」が催された。

  • 『ウルトラセブン』55周年イベントでダン隊員役・森次晃嗣が登場「最終回のセリフは身体にしみ込んでいる」

    左より黒木ひかり、森次晃嗣、ウルトラセブン、樋口真嗣監督、関智一

『ウルトラセブン』(1967年)は、『ウルトラQ』(1966年)『ウルトラマン』(1966年)に続く、円谷プロ「空想特撮シリーズ」3作目にあたる。『ウルトラマン』の後を受けた東映の『宇宙特撮シリーズ キャプテンウルトラ』(1967年)は宇宙開拓時代の人類を待ち受ける未知の脅威に挑む英雄キャプテンウルトラの活躍を描く和製スペース・オペラとして健闘した。これに続く『ウルトラセブン』は、美しい緑の星・地球を狙う恐るべき侵略者を撃退する地球防衛軍・ウルトラ警備隊と、彼らに味方する謎のヒーロー・ウルトラセブンの活躍を描く宇宙規模のSFストーリーが繰り広げられた。

『ウルトラQ』『ウルトラマン』を経た円谷プロの若いスタッフが成熟した才能を発揮し、『ウルトラセブン』ではよりレベルの高い作品作りを目指していた。

人間を次々と誘拐し、研究のための標本を作ろうとするクール星人とウルトラ警備隊の激闘を描く第1話「姿なき挑戦者」、植物生命体「生物X」が人間を襲い、自分と同じ姿に変えていく第2話「緑の恐怖」、地球人を油断させるため可愛い少女に化けたピット星人の陰謀を描く第3話「湖のひみつ」、原子力船の消失事件から始まり、地球防衛軍極東支部の中枢を爆破しようと企むゴドラ星人の作戦をウルトラセブンが阻止する第4話「マックス号応答せよ」など、あの手この手で襲ってくる宇宙からの侵略者に挑むウルトラ警備隊とウルトラセブンの、スリリングな攻防戦が毎回の見どころとなった。やがて、地球を攻撃してくる宇宙人が単純な「悪」といえず、地球人の側にも何か原因があったのではないか? と視聴者に問題提起するような、ひねりの効いたエピソードもいくつか作られ、55年を経た今もなお「ウルトラ(マン)シリーズの傑作」という不動の評価を幅広い年齢層から与えられ、愛され続けている。

  • 「ウルトラセブン55周年」メインビジュアル

第1話「姿なき挑戦者」の放送日である10月1日に催されたセレブレーション トークイベントの司会は、大の特撮ファンであり「ウルトラセブンの息子」=ウルトラマンゼロの仲間のひとり・グレンファイヤーの声を演じている人気声優の関智一が務めた。関はウルトラセブン誕生35周年記念として製作されたビデオシリーズ『ウルトラセブン誕生35周年“EVOLUTION”5部作』EPISODE:3「ネバーランド」、EPISODE:5「アカシックレコード」でメタル宇宙人「ガルト星人」の声を演じたと共に、ガルト星人の人間形態・タシロ役として出演もしており、「ウルトラセブン55周年」イベントを任せるに十分な実績を残している。

関の呼び込みにより、今回のメインゲスト2人が登壇した。1人目は、近年の人気作『ウルトラマンZ』(2020年)で対怪獣ロボット部隊「ストレイジ」の天才科学者オオタ・ユカを演じた黒木ひかり。

そして2人目は、今年春の話題を集めた映画『シン・ウルトラマン』でおなじみ、樋口真嗣監督である。

黒木と樋口監督は、円谷プロの配信サービス「TSUBURAYA IMAGINATION」で配信中の番組『ウルトラファイトクラブ』で共演経験がある。このときのことをふりかえった樋口監督は「朝早くから夜遅くまで、まる1日かけて撮っていた。限られた時間の中で、黒木さんに『ウルトラファイト』を好きになってもらわなければ、と重大な責任を感じながら収録していました」と、アトラクション用のウルトラセブンと怪獣たちが広場で果てしなきファイトを繰り広げる素朴さが持ち味のオリジナル『ウルトラファイト』の“良い部分”を黒木に知ってもらいたかったと本音を語った。関から「ウルトラセブンのことは知っていた?」と問われた黒木は「ウルトラマンZのオーディションを受ける際に観ました。それ以前に主題歌だけは知っていたので、セブン~セブン~♪っていうのはコレか! と気づいて嬉しかったです」と、詳しくセブンのことを知らなかった時点でも、有名な「主題歌」だけは聴き覚えがあったと笑顔で話した。

続いて、「ウルトラセブン55周年」を記念した各種イベントやアイテム発売の看板となる、メインビジュアルがここで初公開された。朝焼けを背にして立っているウルトラセブンの姿を目の当たりにした樋口監督は「最終回(第49話)のラストシーンのイメージなんですね。ウルトラセブンの手袋とブーツを強調したビジュアルになっているのがいい」と、人知を超えた宇宙生命体としてのイメージを求めた『シン・ウルトラマン』のウルトラマンと異なり、ウルトラセブンはデザインとして手袋とブーツが備わっているところに魅力があると熱く語った。

ウルトラマンとウルトラセブンの違いについて関が「ウルトラマンはハヤタ隊員に生命を預けている=一心同体の関係ですけれど、ウルトラセブンは、彼自身がモロボシ・ダンに変身している。つまりセブンがそのままダンなんですね」と言うと、樋口監督は「セブンが侵略者との戦いで疲れてフラフラになり、宇宙へ帰っていくのが悲しかった。帰っちゃうの? って」と、ヒーローが地球に別れを告げて去ってしまうことに寂しい思いがあったと話した。

最終回(第48・49話)「史上最大の侵略(前後篇)」でのセブンの疲労具合について関は「ポール星人との戦い(第25話「零下140度の対決」)でエネルギーの消耗が早くなり、額のビームランプ(ウルトラビーム)が点滅するようになったあたりから、最終回の兆候があったんじゃないですか」と推論を述べると、すかさず樋口監督が「M78セイウンニハ、冬ガナイ!」と高音ボイスでポール星人のモノマネを披露し、客席のセブンファンをどよめかせた。

関はまた「今ではゼロの父親ということでしっかりしているイメージのあるセブンですけど、改めて『ウルトラセブン』を観ると、ダンって意外と無邪気だなって思いますね」と、セブンと同じ人格であるはずのモロボシ・ダンに、とても「ピュア」な部分があると指摘。これを受けて樋口監督は「そうなんです。第26話「超兵器R1号」のラストで、超兵器の開発中止を提案しようというタケナカ参謀の言葉を聞いて、すごく嬉しそうな表情をする。あの笑顔が可愛いんです。少年のようで」と同じ考えであることを明かした。関はまた「恐竜戦車の回(第28話「700キロを突っ走れ!」)でダンがラリー車レースの魅力を熱弁し、僕も走りたいな~とか言いますけど、あれってセブンの気持ちなんだよなと思うと、とてもいいですよね」と、2人でモロボシ・ダンの少年のような無邪気さに着目していることを明かした。

黒木は樋口監督と関の「ダン」トークを聞き、「ふだんはカッコいいのに、ふと“可愛い”部分を見てしまったりすると、そのギャップにキュンとなるときがありますね」と、ダンが昔から女性人気の高いキャラクターである「理由」を独自に分析。黒木の鋭い意見を聞き、関は「やっぱりアンヌ隊員も、ダンのそういうところ(ギャップ)に惹かれたんでしょうね」と納得していた。

どんどん盛り上がっていく『ウルトラセブン』トークの途中、ここでもう一人のスペシャルゲストが登場。「ウルトラ警備隊」のテーマ曲に乗って現れたのは、『ウルトラセブン』の主人公モロボシ・ダン隊員を演じた俳優・森次晃嗣だった。

森次は『ウルトラセブン』放送開始55周年記念のイベントにかけつけた大勢のファンを前にして「こんなにたくさんの方たちが集まってくれて、ありがとう。20代のころに出演した作品が、55年もの長きにわたって愛され、記念イベントの壇上に立てるなんて夢にも思っていませんでした」と、感慨深そうにコメントした。

森次は『ウルトラセブン』を撮影していた時期について「毎朝5時に起きて、小田急線に乗って、美セン(東京美術センター/当時の撮影場所)に通っていました……。若かったからできたのであって、過酷な日々でしたよ」とハードな撮影に明け暮れていた日々を回想。そして「撮影が休みの日には、イベントの予定が入るんです。それも切符だけもらって、たった一人で行かなくちゃいけない。バッグにウルトラ警備隊の隊員服、ヘルメットなど装備を入れて、九州や北海道に行きました。休みの間もそんな状態だったから、ウルトラセブンのころは毎日ずっと仕事をしていたことになります」と、超人気番組ゆえ、各地の子どもたちが待つイベントへの出演によって休みが潰れることもあったとこぼしていた。

少年時代から『ウルトラセブン』をはじめとする特撮作品を愛し続けていた樋口監督は、森次とじっくり話をする機会を持つことができて感激しながら「初めてウルトラセブンを観たのは3歳のころ。再放送で何度も観ていたが、なぜかいつも、ガブラの出てくる回(第23話「明日を捜せ」)だけ観ることができなくて、大人になって初めて観たんです」と自身の思い出を語り、森次を感心させた。

先ほど話題に上った「ダンの無邪気さ、少年ぽさ」について、森次は「それは僕の“地”が出てるんだね。かわいいところがあるんだよ、僕は(笑)。劇場で、でっかいせんべいをかじっているとかを積極的に見せて、セブンと日常のダンとのギャップを感じさせたかった。なるべくお茶目なところを見せたいと思っていました」と、当時の森次の素の部分を出そうとしていた「狙い」を明らかにした。

今回の55周年記念4K上映では、第7話「宇宙囚人303」、第26話「超兵器R1号」、第37話「盗まれたウルトラ・アイ」、第48話「史上最大の侵略(前編)」、第49話「史上最大の侵略(後編)」の5本がピックアップされた。樋口監督は第7話の見どころについて「コニチワ~ガソリンクダサ~イと言って出てくるキャシー・ホーランさんですね。松竹の『吸血鬼ゴケミドロ』でも印象的な役柄を演じられていました。キュラソ星人より強いインパクトがありました」と、カタコトの日本語がものすごい印象を残した外国人女優について語った。

黒木は第37話「盗まれたウルトラ・アイ」について「マゼラン星人マヤを演じられた女の子がかわいい」と、マヤ役の吉田ゆり(現:香野百合子)のはかなげな宇宙人少女役を絶賛した。森次も第37話について「ラストシーンは夜の新宿で隠し撮りを行ったんです。隊員服姿で街を歩くのは、恥ずかしかった」と、当時のロケ撮影のことを懐かしそうに回想していた。

セブンが地球を去る最終回・第49話について森次は「ダンがアンヌに向かい合って、自分がセブンだと告白するシーン、あれが一番思い出に残っています。『アンヌ、僕は人間じゃないんだ。M78星雲から来たウルトラセブンなんだよ!』今でもセリフを覚えていますね」と、樋口監督のほうを向きながら名セリフを披露すると、客席から大きな拍手が巻き起こった。森次は続けて「もうセリフが身体にしみ込んでいるから、忘れようとしても忘れられません。『明けの明星が輝くころ、ひとつの光が宇宙へ飛んでいく……。それが僕なんだよ』ってね」と、最終回の感動的なセリフがどんどん飛び出し、樋口監督と関を感激させた。

ここで、森次がダンになりきり、ウルトラ・アイを目に装着。するとあの変身音と共に、われらのウルトラセブンがさっそうと登場した。

森次はセブンに「アイスラッガーのポーズやってみて」とリクエストし、セブンの動きに合わせて「デュワッ」と絶妙な間でかけ声を乗せた。

最後の挨拶で黒木は「ウルトラセブン55周年という特別な日に、私がこうして並んでいてもいいのかわからないくらい凄い人たちや、ファンのみなさんと一緒に時間を過ごすことができて、うれしかったです!」とにこやかにコメントを残した。

樋口監督は「お集まりのみなさんのおかげでイベントができ、森次さんと初めてじっくりお話をすることができました。職権乱用という気もしますが(笑)。ここから新たな関係の一歩が始まれば……と、何か企んでおります」と、森次との出会いが今後の作品作りに深く関わっていくのではないかと期待を持たせていた。

最後にマイクを手にした森次は「ウルトラセブン60周年の日まで、まだまだ元気でいたいと思います。最近は、まわりの仲間たちがだんだんいなくなってきて、寂しい日々を送っているのですが、でもセブンがある限り、頑張っていきたいです。今日はセブン55周年をみんなでお祝いしてくださって、ありがとうございました」と55年もの長きにわたってウルトラセブン=モロボシ・ダンを愛し、支えてくれた古参ファン、そして不滅の生命力を持つ『ウルトラセブン』という作品にさまざまな時代で出会った幅広い世代のファンたちに、等しい感謝の気持ちを伝えた。

「『ウルトラセブン』55周年記念 4K特別上映」は東京、神奈川、愛知、京都、広島の全16劇場で10月1日から10月13日まで催される。

(C)円谷プロ