NECレノボ・ジャパングループが図書館流通センター、キッズプロジェクトとともに開催している無償のプログラミング教室「図書館でプログラミングワークショップ」。9月4日、その第2回目が練馬区立南田中図書館で行われた。親子で参加できるワークショップの様子をのぞいてみよう。
プログラミング学習の難しさとは?
文部科学省は、新たな社会“Society5.0”の到来を見据え、新小学校学習指導要領においてプログラミング教育を掲げている。2020年には小学校におけるプログラミング学習が必修化され、子どもたちの論理的思考を養う学習として注目が集まっている。だが、多くの教師や保護者はプログラミング教育を体験したことがなく、その内容を知らない。子どもを導いていこうにも、なにを教えたらよいかわからないというのが現状だ。
NECレノボ・ジャパングループは、そんなプログラミング教育の現場をより良くするためのサポートを続けている。2018年には「キッズ・プログラミングコンテスト」をスタート。子どもたちのプログラミングスキルやプレゼンテーション能力を養うために、全国各地でさまざまな取り組みを行っている。
「図書館でプログラミングワークショップ」もまた、NECレノボ・ジャパングループが行っている取り組みのひとつ。これは幼児と小学生が、図書館でプログラミングを学ぶことができるワークショップだ。9月4日に練馬区立南田中図書館で行われたワークショップの様子から、その内容をチェックしてみよう。
環境問題に力を入れている南田中図書館
平成21年に開館した練馬区立南田中図書館は、地域住民に気軽に利用してもらう"ご近所図書館"を目指した施設だ。練馬区内で始めてICタグを導入した図書館でもある。南田中小学校の敷地内にあり、学校とも連携。図書館の使い方や調べ学習の場としても利用される。そういった経緯から、児童書も充実している。
同館がとくに注力しているのが環境問題だ。館内には環境に関する図書を集めた「環境コーナー」を用意。また屋上緑化に取り組むとともに、太陽光パネルによる発電データを入口の電光掲示板で確認できる。
世界にひとつだけの「ももたろう」のお話を作ろう
「図書館でプログラミングワークショップ」の内容は、子どもたちにプログラミング的思考とプログラミングの基礎・応用を伝えるというもの。そのための教材として、キッズプロジェクトが企画、エンジンズが開発した幼児向けデジタルコンテンツ「オリガミ」、学校用プログラミングツール「#みんなでプログラミング」が使用される。
13時からは、5~8歳を対象とした「ものがたり動画制作ワークショップ」が開催された。教材として使用される「オリガミ」は、時間軸を動かしながら、イラストをスタンプのように画面上に押していくだけでオリジナル動画が作れるアプリだ。この体験が、プログラミング的思考の第一歩になる。
イラストは「ももたろう」をベースとしており、おじいさんやおばあさん、桃や鬼、犬・猿・雉、そして桃太郎などが用意されている。これらを利用して、世界にひとつだけのオリジナル「ももたろう」を作っていく。もちろん、原作のストーリーをなぞっても良いし、独自の物語を作ってもOKだ。
子どもたちは最初は戸惑いながらも、先生や保護者からタブレットとアプリの使い方を学びながら、世界にひとつだけの「ももたろう」を作っていった。最後に、子どもたちの中から数人が作った動画を発表し、ワークショップは無事終了。最後に参加した子どもたちに「キッズ動画クリエイター認定証」が授与された。
本格的なブロック・プログラムに挑戦!
15時からは、7~12歳を対象とした「みんなでプログラミングワークショップ」がスタートした。使用される「#みんなでプログラミング」は、東京書籍が監修し、全国の小学校で利用されているブロック・プログラミング教材だ。業用プログラミングツール「バーチャルスクール」、児童・教師用の専用Webサイトとハンドブック(PDF)の3点で構成されており、教育クラウドプラットフォーム「まなびポケット」からアクセスできる。
子どもたちが挑戦する主なプログラミングは、命令が書かれたブロック・プログラムを選んで"くもねこ"というキャラクターを動かし、フラッグを手に入れるというゲーム。前半のステージはくもねこの向きや動きを指定すればOKだが、中盤以降はバグを直すという動きが求められるようになる。
上手にできた子は、「くもねこを動かし節電方法を見つける」という発展コースにも挑戦。センサーを使って、電力消費を抑えつつヒーターで室内を温めるという理科の内容も踏まえた課題に挑んでいた。
子どもたちは開催時間ギリギリまでブロック・プログラミングに挑戦。その熱気が冷めやらぬまま、ワークショップは終了を迎え、参加した子どもたちには「キッズプログラマー認定証」が授与された。
このワークショップに参加した保護者は、「本人が行きたいといったので、家内が申し込みました。レゴなどでプログラミングに触れる機会があり、興味を持ったようです。自分もそういった仕事をしていますし、本人の意思があるのであればやらせてみたいと思いました」と参加のきっかけについて話す。
参加した8歳の男の子からは「プログラムを作るのが楽しかったから、またやりたい。」とプログラミングへの興味の深まりを伺うことができた。
度重なるコロナ禍の影響を経て開催されたワークショップ
どの親子も熱心に課題に取り組み、プログラミング教育への興味の深さを伺うことができた今回の「図書館でプログラミングワークショップ」。もともとは、STEAM(科学・技術・工学・芸術・数学)教育の草の根活動の一環として計画されたものだという。レノボ・ジャパンの柳沼綾氏、練馬区立南田中図書館の楢原達也氏に、ワークショップの経緯と感想、今後の展望について伺ってみたい。
「『図書館でプログラミングワークショップ』は、2020年から図書館流通センター(TRC)さまとともに企画してきた取り組みです。しかし、コロナ禍によって延期が続き、昨年ようやく第一回が開催できたものの、その後再び緊急事態宣言、まん延防止法が始まってしまい、今回ようやく第二回を開くことができました。多くの図書館のみなさまにお待たせしてしまっております」(レノボ・ジャパン 柳沼氏)。
南田中図書館は、一番最初に開催を希望した図書館だったという。ちょうど9~10月は世界中のレノボで規定されている奉仕月間(社会貢献活動やボランティアを促進する期間)であったため、このたび南田中図書館が第二回の開催場所となった。
「小学校での必修化を踏まえ、以前からプログラミングのニーズは高かったのですが、いかんせん図書館側はどういった方を呼べばよいのかわからなかったのです。そんなときに運よくTRCから連絡があり、ぜひやってみたいということですぐに希望しました」(南田中図書館 楢原氏)。
南田中図書館がワークショップに期待したのは、プログラミング的思考の学習だけではない。普段図書館に来ないような子供たちに来る機会を設けるとともに、図書館資料の利用促進につなげたいという思いがあったそうだ。
「今回のワークショップもそうですが、コロナ過で学校さんとのイベントが開催できない時期が続きましたので、また少しずつイベントを増やしていきたいですね。最近はオンラインでの講習会も行っております。会場でやっているものをサテライトで映したり、完全にオンライン限定で講習したり、そういった取り組みにも力を入れて行きたいと思います」(南田中図書館 楢原氏)。
すでに年末まで全国各地で開催が予定されているという「図書館でプログラミングワークショップ」。今後の開催について、レノボ・ジャパンの柳沼氏は次のように展望を述べる。
「離島のような遠隔地では、図書館が地域の拠点になっています。そういった場所では、特にこういったイベントのニーズがあると伺っていますので、高品質のサポートを含めた形で実施できればと考えています。私どももプログラミングだけでなく、例えばeスポーツをちょっと楽しみながらICTを学ぶような企画として検討していければなと思います」(レノボ・ジャパン 柳沼氏)。
コロナ禍は対面の機会を減らした一方で、ICTの重要性を浮き彫りにした。これによって、小学校のプログラミング教育必修化に対する理解も深まったと言えるだろう。だが、現在の大人のほとんどは幼児・児童の歳でプログラミング教育を体験していない。ゆえに学校も保護者もその教え方に悩んでいるのが現状だ。
NECレノボ・ジャパングループは現在、プログラミング教育への支援に全力で取り組んでいる。古くからPCメーカーとして世界のICTを牽引してきた同グループの活動が、Society 5.0 時代の子どもたちが羽ばたく力となることを期待したい。