マツダの新型SUV「CX-60」は、大排気量のマルチシリンダーエンジンにFRプラットフォームというクルマ好き垂涎のレイアウトで登場した。サイズも価格も従来のマツダ車と比べれば規格外な1台だが、乗り味はどうなのか。最新機能の使い勝手は。公道で試乗した。

  • マツダ「CX-60」

    マツダの新型SUV「CX-60」(本稿の写真は撮影:原アキラ)

クルマ好き歓喜? FRらしいレイアウト

マツダが「ラージ商品群」の第1弾に位置付けるだけあって、CX-60のボディサイズは全長4,740mm、全幅1,890mm、全高1,685mm、ホイールベース2,870mmと数字的にも結構大きい。試乗した「XDハイブリッド プレミアムスポーツ」は新開発の3.3L直列6気筒という前後に長い「SKYACTIVE-D」クリーンディーゼルターボエンジン(+48Vマイルドハイブリッドシステム)を縦置きで搭載しているので、ボンネットはそれを主張する如く長大。前輪の軸の中心から伸びるような角度で立ち上がるAピラーを備え、キャビンをボディの後方寄りに配置したシルエットは、いわゆるFRらしいレイアウトとなっている。

  • マツダ「CX-60」
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  • 「CX-60」のラインアップは2.5L直列4気筒ガソリンエンジンの「25S」、3.3L直列6気筒クリーンディーゼルエンジンの「XD」、同マイルドハイブリッド(MHEV)の「XD-HYBRID」、プラグインハイブリッド車の「PHEV」の4種類。各タイプにいくつかのグレードを用意する。価格帯は299.2万円~626.45万円。ディーゼルMHEVは9月15日に発売、そのほかのタイプは2022年12月以降に販売開始の予定だ

実車を目の前にすると、そのバランスはちょっとクラシカルでありながら、なかなか新鮮なイメージだ。一方で1,890mmという車幅は、機械式駐車場を普段利用しているユーザーにとっては、ちょっと気になるところかもしれない。

フロントフェイスはハニカムグリル(グレードによって異なる)のセンターに同社のエンブレムを装着した最新の「マツダ顔」。サイドフェンダーのガーニッシュには控えめに「INLINE 6」(直列6気筒の意)の文字が入り、リアゲートには「e SKYACTIVE D」と「CX-60 AWD」のエンブレムを装着する。20インチの10本ブラックスポークホイール(こちらもグレードによって異なる)に装着されるタイヤは235/50R20サイズのブリヂストン「アレンザ001」だ。

  • マツダ「CX-60」
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  • マツダ車らしからぬ(?)傾向なのだが、これまでのところ人気のボディカラーは白(新色のロジウムホワイトプレミアムメタリック)なのだという(写真はXDハイブリッド プレミアムモダンというグレード)

インテリアには美しいタンカラーを採用。クッションたっぷりのシートは表皮がナッパレザーと「レガーヌ」と呼ばれる合皮のコンビ仕様で、本皮巻きのステアリングはセンターホーンの部分までタンで覆うという徹底ぶりだ。

  • マツダ「CX-60」
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  • 上質なタンカラーの内装。センターホーンの部分までこの色というのは珍しい

幅広で高さのあるセンターコンソールはいかにも「FRでござい」という雰囲気がぷんぷん。この辺りもオーナーを喜ばせてくれる部分だ。しかし、その下側の足元は意外に広く、フットレストを左奥側にセットしているので、ドライバーは前方に向かってきちんと正対したポジションをとることができる。運転姿勢にこだわるマツダ車らしい美点だ。

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    センターコンソールは高くて幅がある

3.3L直6ディーゼル+MHEVの走りは?

ドライバーに正しいドラポジを取ってもらうため、マツダはCX-60に新機能「自動ドライビングポジショングガイド」を導入した。センターディスプレー右上のカメラ映像とドライバーが入力した身長などのデータを使い、最適なポジションを自動で調整する機能だ。顔認証も行ってくれるので、一度登録しておけば、シートポジションだけでなくステアリングやアウターミラー、アクティブドライビングディスプレイなどの位置を記憶しておいてくれる。

同システムで推奨されたポジションで乗り込んでみると、CX-60はウエストラインが意外と低いので周囲の見晴らしが良く、さらに左右のバックミラーの位置が適切なので、斜め前の低い位置までしっかりと見ることができるのに気がつく。

これでも「ボディが大きいので不安」というユーザーには、オプションで「シースルービュー」が用意されている。センターコンソールのボタンひとつで起動するこのシステムは、ボディ各所に配置したカメラ画像を合成し、モニター画面を見ているだけで周囲の状況が丸わかりとなるという優れもの。実際に試してみると、狭い駐車場で後方から脇をすり抜けてくるベビーカーやカートをすぐに見つけられたり、左右の内輪差を大きく表示して駐車枠からの出入りを容易にしたりと、なかなか便利な機能だと実感できた。目視なしで、画面上の情報だけを100%信じてクルマを操作できるかという点についてはなんとも言えないが、あくまで運転を補助してくれる機能だと考えれば、かなり役に立つと思う。

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    クルマの周囲を確認するのに役立つ「シースルービュー」

さて、肝心の走りはどうなのか。3.3リッター直6直噴ディーゼルターボの動力性能は最高出力254PS/3,750rpm、最大トルク550Nm/1,500~2,400rpm。これに16.3PS/153Nmのモーターを組み合わせた48Vマイルドハイブリッドシステムなのだから、期待は高まる。

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    3.3リッター直列6気筒の直噴ディーゼルターボエンジンを搭載

「P」から一旦左に横スライドして「R」「N」「D」と下げていく独特のシフトレバーをDに入れて走り出すと、流体を使ったトルクコンバーターを廃して機械式クラッチを採用した新型8速ATがロスなく車体を駆動させる感じが伝わってきて、車速がぐんぐん伸びていく。車格からは想像できない21km/Lという燃費も、このATによるところが大きいのだろう。ただ、短時間の試乗だったので実際の燃費は確認できなかった。

前が空いたところでアクセルを踏み込んでみると、6気筒ディーゼルの音色は例のガラガラ音ではなく、目の詰まった「グイィィーン」といった感じ。結構なレベルで音が車内に侵入してくる。あえて完璧には遮音せずエンジン音を聴かせてくれているようで、このところ音のないEV(電気自動車)の試乗が多いこともあってか気分が上がる。

足回りには「ロードスター」でお馴染みとなった「KPC」(キネマティックポスチャーコントロール)を採用。背の高いボディながらも、中速でのコーナリング姿勢が安定しているのがわかる。

視界が良好なうえ、縦置きエンジンとしたことにより最小回転半径は5.4mと小回りが利くのもCX-60の特徴だ。恩恵は車線変更時やUターン路での取り回し時にしっかりと実感することができた。

そんな中で気になったのは2点。アイドリングストップからの復帰で結構な振動が伝わってきたことと、荒れた路面を通過する際、サスペンションは柔らかいのに角が立ったショックが感じられた点だ。試乗後、これを開発主査の和田宣之氏にぶつけてみると「おっしゃる通りです」とのお返事だったので、マツダが得意とする年次改良などの機会をみてどんどんとリファインされていくのだろう。

和田氏によると、今後出てくる2.5Lエンジンのプラグインハイブリッド車(PHEV)のほうも「いい音するんですよ」とのことなので、それもまた楽しみだ。

冒頭にも述べたが、大排気量縦置きエンジン、FRレイアウト、さらに好燃費や新機能、美しい内装など、他メーカーや輸入車からユーザーを取り込むための魅力をぎっしり詰め込んだCX-60。ロングドライブを敢行してその魅了を味わい尽くしたいと思った1台だ。

  • マツダ「CX-60」
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