永瀬拓矢王座へ豊島将之九段が挑戦する、第70期王座戦五番勝負(主催:日本経済新聞社、日本将棋連盟)の第3局が9月27日(火)に京都市東山区の「ウェスティン都ホテル京都」で行われました。結果は93手で永瀬王座が勝利し、五番勝負の成績を2勝1敗としました。
本局は永瀬王座の先手から角換わりの相早繰り銀へ進みます。先手が先に4筋で銀交換をすると、豊島九段は自陣角を放って7、8筋に圧力を掛けました。対して永瀬王座は交換したばかりの銀を投入して固めます。さらに、その投入した銀を豊島九段の手順に乗る形で、後手の銀にぶつけました。この銀ぶつけに替えて銀を自陣に引いておけば穏やかな展開でしたが、本局は決戦となりました。
分岐点が訪れたのは71手目の局面です。後手はこのままだと6四の銀が歩で取られる形になっていますが、この銀を逃げると▲5三角成と急所に馬を作られてしまうので、銀を逃げるわけにはいきません。銀を取られる前に角を追う必要があります。
豊島九段は歩を打って3五の角を追いました。が、ここでは歩ではなく銀を打って角を追わなくてはいけなかったのです。
永瀬王座は、角取りを放置して銀を取りました。豊島九段が角を取ると、空いた地点に桂取りの歩を打つ手が入り、ここで永瀬王座が優位に立ちました。
銀打ちで角を追っていれば、同じように進んだときに銀で角を取った手がさらに飛車取りになるため手番が握れます。この差が大きかったのです。
この重要な2択を迫られたのは開始からわずか1時間あまりしか経っていない午前10時すぎのこと。早い時間から難しい選択を迫られる現代将棋の厳しさが感じられます。
実戦は銀桂と角の二枚換えとなり、さらに双方が飛車も取り合う展開に進みましたが、居玉の後手は飛車打ちへの耐性がなく、こうなってはいかに豊島九段といえども頑張りようがありません。最後は後手の駒損が確実となった状況で、豊島九段が投了しました。永瀬王座は初戦の敗戦から2連勝で、王座防衛に王手をかけました。第4局は10月4日(火)に神奈川県秦野市の「元湯陣屋」で行われます。
相崎修司(将棋情報局)