今回は、1年ぶりにパソコン用キーボードの売れ筋を取材するため、秋葉原のPCパーツショップ・パソコンショップ アークを訪ねました。
スタッフの磯田尚輝氏は「キーボードを重視する人は年々増えています」といいます。近年は、eスポーツに代表されるゲーミング需要の高まりから、入力のタイムラグがほとんどない高速モデルや、微妙な指の動きが反映できる高機能モデルが注目を集めています。しかし、需要はそれだけにとどまらないとか。
「文章やプログラムを大量に入力する人や、オフィスワークで少しでも快適な環境を追求する方も多いですね。あとは、机周りを自分好みにおしゃれにしたいということで、デザイン性を重視する傾向もありますね」
それを踏まえて、同店における直近の売れ筋トップ5を教えてもらいました。「キーボード選びの3箇条」を押さえて追いかけていきましょう。
<キーボード選びの3箇条>
- ボリュームゾーンの価格帯は1万円台半ば。12,000円以下だと安価、17,000円以上だと高級というイメージ。
- ゲーミング需要では、テンキーなどを省いてコンパクトにした60%キーボードや65%キーボードが人気。
- キー単位でカスタムするなら、キースイッチやキーキャップが交換できるタイプを検討したい。
※本文と写真で掲載している価格は、2022年8月30日12:30時点のもの。日々変動しているので、参考程度に見てください。
第1位:ゲーム用にもオフィス用途にも人気の「Keychron K8」
一番人気に挙げられたのは、Keychron(キークロン)の「Keychron K8」でした。テンキーレスの日本語配列キーボードで、メカニカルキースイッチを個別に入れ替え可能なホットスワップに対応しています。価格は「Gateron 青軸」スイッチを採用したRGB LED搭載タイプが16,940円でした。
「Keychronというブランド自体は『知る人ぞ知る』というところからじわじわと浸透しているところですが、メカニカルキーボードとして質が高くて買いやすい価格帯なので選ぶ人が多いですね。K8はゲーマーの方から文章入力が多い人、オフィス用途で使いたい人まで幅広く支持されています。WindowsとMac、スマートフォンで共用できるところも喜ばれていますね」
第2位:スリムでメカニカルな無線モデル「Keychron K3」
2位にもKeychronの製品が入りました。Bluetooth接続のワイヤレスモデル「Keychron K3」で、薄いオプティカルスイッチを採用しているのが特徴です。ホットスワップに対応しており、やはり個別にスイッチの付け替えが可能。テンキーを省いてファンクションキーを残した「75%キーボード」となります。価格は、RGB LEDバックライト付きの茶軸タイプで1万6830円でした。
「オフィス用途とゲーミング用途の比率が6:4くらいで売れています。ノートパソコンでのキー入力に慣れていると、一般的なメカニカルキーボードは高さと傾斜がきつく感じることがあります。その点、K3はすんなりと受け入れられる作りといえます。あと、キーを押し下げる距離も短いので、軽快にタイミングしたい人にも好まれている印象です」
第3位:先代から打鍵感が大幅進化したDucky「One 3」
3位は、Ducky Channel(ダッキー・チャンネル)のメカニカルキーボード「One 3 SF」です。テンキーとファンクションキーを省きつつ、矢印キーなどを残した「65%キーボード」と呼ばれるタイプで、価格は21,279円でした。英語配列を採用し、こちらもホットスワップに対応しています。
「ひとつ前の『One 2』は、ゲーム界にコンパクトキーボードブームを起こした名シリーズです。One 3は、内部に吸音パッドを加えたりして打鍵感を大幅に進化させています。タイピング感がきめ細かく進化していて高評価ですよ」
なお、One 2では矢印キーも省いた「60%キーボード」タイプがシリーズ内で一番人気となっていたそうですが、One 3は65%タイプである「SF」が先行しているとのこと。「60%だとさらにコンパクトになりますが、やはり矢印キーやDeleteキーがないと文字入力がやりづらいですからね。プレイ中のチャットやオフィスワークでの利便性を考えて65%を選ぶ人が増えているのかなと思います」
第4位:有線でも無線でも高速なCorsair「K70 PRO MINI WIRELESS」
4位に挙げられたのは、Corsair(コルセア)の60%キーボード「K70 PRO MINI WIRELESS」でした。有線と無線で使える英語配列のキーボードで、ゲーム向けの「Cherry MX Speed Silver」スイッチを採用。ホットスワップにも対応しています。価格は23,079円でした。
「有線接続でポーリングレートが通常の8倍の8,000Hz、無線でも通常の2倍の2,000Hzあって、パソコンとの通信回数が多くてタイムラグが起きにくいのが魅力ですね。キースイッチもゲーム向きなので、素早い入力を求める人によく指名買いされます。また、キーだけでなく底部にもRGB LEDライトを組み込んでいるので、ビジュアル面を評価する声も聞きますね」
第5位:カスタム性が注目を集めるSteelSeries「Apex Pro Mini」
5位は、2022年8月に登場したばかりのモデルがランクインしました。SteelSeries(スティールシリーズ)の60%キーボード「Apex Pro Mini」です。日本語配列のメカニカルタイプで、価格は29,177円でした。
「Apex Proシリーズの最新版で、キーキャップをテカりにくい仕上げにするなど、さまざまなところに進化ポイントがあります。なかでも目玉は、キーの感度設定が非常にきめ細かいところです。キー入力が成立する押し下げ幅を0.2mmから3.8mmまで0.1mm単位で個別に調整できるうえ、ひとつのキーに浅い入力と深い入力で2つのアクションをプログラムできるなど、とことん自分流にカスタマイズできます。唯一無二ということで、発売当初から指名買いが多いモデルですね」
はみ出し情報・・・予想外のヒットを続ける「Keychron K4」
ランキング外で印象的なヒットモデルを尋ねたところ、磯田氏はKeychronの「Keychron K4」シリーズを挙げました。テンキー付きながら、キー間の隙間を作らないレイアウトにすることで、全体の大きさをできる限り小さくしているのが特徴です。有線と無線接続が可能なメカニカルタイプとなります。日本語配列のRGB LEDバックライト搭載モデルは17,930円でした。
「テンキー付きで需要があるオフィス用途に使うにはEnterキーなどが打ちづらいのではと思いましたが、予想外によく売れています。テンキーや矢印キーのタイプミスなども、案外使い慣れてみれば起きにくいのかもしれませんね。ただ、以前にも似たレイアウトのキーボードが登場していましたが、ここまでの反響はありませんでした。こちらはよく指名買いされるので、そのあたりも興味深いところがあります」