シャープディスプレイテクノロジー(SDTC)と、電子ペーパー世界最大手のE Ink Holdingsは、今後相互に協力し、電子書籍リーダーや電子ノートに利用される電子ペーパーモジュールに、SDTC製のIGZO(酸化物半導体)バックプレーンを採用すると9月27日に発表した。

今回の協業に基づく次世代電子ペーパーを、10月18日~21日に幕張メッセで開催される「CEATEC 2022」に出展予定。大きさと解像度は8型/300ppiで、画像更新時間はモノクロ(白/黒)表示で0.35秒、カラー表示で0.5~1.5秒となる。動作温度は0~50度。

バックプレーンはディスプレイの表示信号を制御するための基板回路。IGZO(酸化インジウム・ガリウム・亜鉛)はシャープが世界で初めて量産化に成功した透明な酸化物半導体で、液晶などのディスプレイを駆動するTFT(薄膜トランジスタ)の材料として、さまざまなデバイスで用いられている。

シャープは、過去5年間で1億3,000万台の電子書籍リーダーが世界で利用され、特にカラーコンテンツの電子書籍リーダーへの移行は環境面で大きなインパクトがあると指摘。また、紙の書籍は電子書籍の10万倍以上のCO2を排出するが、これが電子書籍リーダーへと置き換わることで、CO2の排出削減に大きく貢献したと見積もられているという。

SDTCとE Inkは今後、小売や交通機関の分野での大型サイネージに向けて、IGZOの適用を検討していく。また、シャープグループにおいても、さまざまな電子ペーパー用途でのE Inkとの協業モデルを検討するという。

E InkとSDTCの協業に関する詳細

電子ペーパー端末の世界最大のサプライヤーとして知られるE Inkは10年以上、電子泳動技術への酸化物TFTの活用を検討しており、同技術を用いた電子ペーパー製品の拡大を予定している。

シャープディスプレイテクノロジー(SDTC)は、シャープのディスプレイデバイス部門の分社化により、2020年10月より新会社として事業を開始。ノートPCやスマートフォン、テレビといった電子機器に、IGZO技術をはじめとする先端ディスプレイ技術を提供している。

E InkとSDTCはこの2年間、酸化物TFTの電子ペーパーディスプレイ向けの商用化に向けて取り組んできた。

酸化物TFTは、2012年にシャープが世界に先駆けてディスプレイ向けの量産に成功したもの。高い移動度(特定材料中での電子の移動しやすさ)やトランジスタの低いリーク電流により、小さなトランジスタで同じ電流を供給できるのが特徴。ディスプレイとしてより高速なスイッチングが可能であり、低消費電力化によって持続可能な環境保全に貢献できるとのこと。

E InkのJohnson Lee CEOは、「SDTCとの提携は、電子ペーパーの表示性能の向上に向けたE Inkの強い意思を示すものだ。SDTCでは、さまざまなタイプのディスプレイや電子回路に酸化物TFTを展開することを目指すとしており、酸化物TFT開発に投資していくことをコミットしている。SDTCとのパートナーシップを楽しみにしている」とコメント。

SDTCの王建二社長は、「次世代電子ペーパーディスプレイの製品化に向け、E Inkの酸化物TFTのパートナーにSDTCが選ばれたことに興奮している。SDTCは、酸化物TFTの研究開発において、先駆者かつリーダーであり、酸化物TFTを最初に量産したディスプレイメーカーだ。E Inkは電子ペーパーディスプレイの市場リーダーであり、両社協業はごく自然なことだ」と述べている。