永瀬拓矢王座に豊島将之九段が挑戦する第70期王座戦(主催:日本経済新聞社、日本将棋連盟)五番勝負第3局が、9月27日(火)に京都市東山区「ウェスティン都ホテル京都」で行われています。今期の王座戦は第1局を豊島九段が、第2局を千日手指し直しから永瀬王座がそれぞれ勝っています。

今期の王座戦は千日手局も含めて全局角換わりに進んでいます。豊島九段が先手だった第2局の千日手局では、午前中に90手ほど進むという超スピードだったことも注目されました。

■戦型は角換わりに

第3局は9時に永瀬王座の先手で対局開始となりました。10手目に豊島九段が角交換し、戦型は角換わりに確定。相早繰り銀という攻撃的な作戦を選びました。豊島九段が34手目に銀をぶつける積極的な手段を選びここで前例がなくなりました。

以下、豊島九段は自陣角を放ち、突き捨てや角ののぞきを織り交ぜた複雑な手順で7~8筋に戦端を開きます。対して永瀬王座は銀を6七に打ってガッチリと守り、その銀が7六~6五~5六~6五と細かく動いて後手からの攻めの面倒を見ます。

■前局に続く超ハイペース

その後も変化の多そうな局面が続いているにもかかわらず、両者の着手ペースはいっこうに衰えません。ついに手数は70手を超えました。第2局の千日手局を思い起こさせる超ハイペースです。

水面下に大量の分岐が含まれている中、前例から離れて40手近く進んでいるにもかかわらず、十分に想定済みですよと言わんばかりの両者の着手。両対局者が本局に懸けた思いに感嘆せざるを得ません。

■豊島九段、長考に沈む

75手目、永瀬王座が角銀交換に踏み込んで桂頭に歩を打った局面で豊島九段は長考に沈みました。桂を逃げればまっすぐな攻め合いになりますが、玉が危険地帯にいる豊島九段にとって苦労の多い展開になりそうです。攻め合いがまずいとすれば二枚替えを受け入れて桂を取らせて収めるか、変化球を放つか、豊島九段にとって早くも正念場を迎えている局面です。

1時間13分の長考を経て、豊島九段は桂を逃げずに飛車取りに銀を打ちました。桂は取られますが、飛車の取り合いを挑むことで局面のバランスを保ちにいった手です。

永瀬王座が4連覇へあと一勝と迫るか、豊島九段が無冠返上へ王手をかけるか、五番勝負のキー局から目を離せません。

相崎修司(将棋情報局)

対局開始時、深々と一礼する永瀬王座(右)と豊島九段(提供:日本将棋連盟)
対局開始時、深々と一礼する永瀬王座(右)と豊島九段(提供:日本将棋連盟)