「推し活」や「推し消費」という言葉をよく耳にするようになりました。「推し」を対象にお金や時間を費やすことで、推しを応援することを意味しますが、どれだけの金額をどのような目的で使っているのでしょうか?

今回はZ世代を中心に広まっている推し活・推し消費の実態について解説します。マーケティングにおいても、推し活・推し消費を上手に利用した施策が求められるシーンも増えるでしょう。

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推し活・推し消費とは

推し活や推し消費とは元々、アイドルを応援するファンの活動の概念でした。アイドルにどっぷりハマり、夢中になってお金や時間を使うことを意味していました。今ではアイドル以外にも、アニメのキャラクター・声優・有名人・ユーチューバー・Vチューバ―など、推す対象は様々なカテゴリーに広がっています。

「オタク」や「萌え」などとの違い

グッズを買うだけなら、従来のアニメや音楽などのファンと変わりませんし、昔からそのような行動は見られました。また従来からある「オタク」や「萌え」といった言葉との違いが分かりづらいかもしれません。

ここで押さえておきたいのが、推し活は単独ではなく複数人で盛り上がるということ。オタク・萌えはどちらかというと自分一人で楽しむことがメインですが、推し活はSNSを経由して大勢で楽しむ傾向があります。それには人に薦めたいほど好感を持っている推し活の一環として、周囲の人への布教活動(発信・宣伝)があるからです。

推し活・推し消費の具体的な行動

推し活の具体例は、コンサートや展示会などのイベントやWeb上でお金を使うこと、企業とのコラボグッズを買うこと、誕生日を祝うことなど。たとえば「本人のいない誕生日会」では、下記のような行動が挙げられます。

・移動
・グッズの購入
・美容・ヘアセット
・装飾・服飾
・カラオケボックスの利用
・ホテルの宿泊

本人のいない誕生日会とは、推し本人なしで行う誕生日会です。グッズや装飾を使い、推しの生誕を祝うイベントです。推し活とはこのように、単にファンがグッズを買うことに留まらず、推しを支援する意識が強いのが特徴です。

この他にも、イベントで入手したグッズをインスタやツイッターでアピールしたり、YouTubeでスパチャ(投げ銭機能)をしたりする活動も推し活に含まれます。またツイッターでは時々、アニメのキャラクターの生誕祭がトレンドワードになる現象も見られます。

推し活の中心となっているのはZ世代とされていますが、アイドルやアニメなどはそれ以外の年代のファンも数多く抱えています。よって推し活はZ世代を超え、あらゆる世代に広がりつつあると言えるでしょう。

推し活や推し消費にどれだけ費やしているのか?

推し活にどれだけの金額を使っているのか、Oshicocoによる調査結果を見ていきましょう。 この調査は推し活をしている女性に聞いた結果です。

1カ月で推し活に使う金額は?

18歳~24歳では、4割以上が毎月3万円以上を推し活に使っているという結果になりました。中高生では5,000円以下が過半数ですが、10,000円以上も26%と大きな割合を占めています。お小遣いやバイト代の相場などを考えると、毎月費やすのにはかなり大きい金額ではないでしょうか。

25歳以上はさらに増える

25歳以上になると、毎月1万円~3万円が最大になり、イベントの「遠征費」で高額になる傾向が見受けられます。学生よりも収入が増えることで、推し活に費やせるお金も多くなると考えられます。

推し活・推し消費とコラボするマーケティング施策の実例

推し活とコラボした企業のマーケティング施策についていくつか紹介します。

森永乳業

森永乳業はリプトンの紙パックドリンクの売上をてこ入れするため、「アイドリッシュセブン」とコラボ。ゲームから生まれた2次元アイドルで、10代~20代前半の女性に人気です。

リプトンの購入者にオリジナルグッズが当たるキャンペーンで、ブランドの認知度・売上の向上に成功しました。

ローソン

コンビニでアニメやアイドル関連のグッズを販売しているのを見かける方も多いでしょう。ローソンでは2022年8月から初音ミクの15周年キャンペーンを実施しました。

オリジナルグッズの展開のほか、ツイッターの投稿キャンペーンも実施。ハッシュタグをつけて引用リツイートした方の中から1名にオリジナルQUOカード1万円分が当たる内容でした。

タワーレコード

タワーレコードは推し活を応援するため、「推し活グッズ」を販売しています。たとえば「銀テープキーホルダー」は、ライブで入手した銀テープを収納することができます。その他にも写真や切り抜きを収納できる「推し活お守り」など様々な推し活グッズがあります。

タワーレコードの推し活グッズの特徴は、気軽に身につけられること、バリエーションが豊富なこと、カスタマイズ性があることです。

推し活とマーケティング施策のヒント

推し活・推し消費に積極的なファンをうまく取り込むと、大きなマーケティング効果も期待できます。そのために大切なポイントについてみていきましょう。

推しを主役に据えること

ファンにとっての主役はあくまで推しであり、商品やサービスではありません。コラボグッズはたくさん販売されていますが、単にグッズを出すだけではなく、推しの魅力を引き立てるような仕掛けを加えたいところです。

推しの活躍を祝う、さらなる飛躍を願うといったファンの心理に寄り添うことが重要です。推し活で企業のコラボ商品を買うのは、推しを起用してくれた企業への感謝であることを忘れないようにしましょう。

SNSで共有したくなるポイントを作る

推し活は、仲間同士のコミュニケーションで盛り上がるのも重要なため、商品やサービスをSNSでシェアする仕掛けを作ることも重要です。そのためには以下のような点が重要になってくるでしょう。

・自分好みにカスタマイズできること
・小物などは手軽に身につけられること
・キャラクターやストーリーなどに親和性のあるグッズにすること

SNSでうまく拡散されれば、ファンがファンを呼ぶ流れを生み出せます。推し活がさらに盛り上がれば企業・ファンともにWin-Winとなります。

推し活・推し消費をマーケティングに生かす

推し活はSNSを通じて不特定多数へ幅広く拡散されています。コアなファンの推し活は盛んに行われ、毎月相当な金額を費やしていることもアンケートから判明しています。

マーケティングにおいてコアなファンはロイヤリティの高い顧客と言い換えることができるため、このパワーを味方に付けない手はありません。すでにいくつかの企業で実施しているような施策を、他の企業が行うケースも増えてくると考えられます。