イオンリテールは9月26日、「イオンモバイル」の新サービス「スマホメンテナンス」「イオンスマホの乗換相談所」を発表しました。大手キャリア以外の選択肢も一般的になってきた時代に合わせ、サポート体制を強化します。
「スマホメンテナンス」で何をしてもらえる?
スマホメンテナンスは、イオンモバイルユーザーを対象とした無料のサポートサービスです。本州および四国のイオンモバイル取扱店舗(158店舗)において、端末を長く使うための設定サポートのほか、無駄なく使える料金プランの見直しを行います。
機器メンテナンスのメニューは「電池ながもち」「動作さくさく」「容量すっきり」の3点が目的。画面輝度や不要なBluetooth/Wi-Fi設定などの見直しで電池持ちを改善したり、マルチタスクで大量に起動されたままになっているアプリを終了したりと、専用機器・設備を用いるような内容ではなくスマートフォンを使い慣れた人にとっては当たり前であろうことを忠実に行います。
料金プランに関しては、イオンモバイルは使い方に合わせてフィットさせやすい1GB刻みのプランを展開しており、店舗スタッフが利用状況を確認しながら最適なプラン選びを手伝うという内容です。
6月から13店舗で実証実験を行っており、アンケート結果などを踏まえて好評だったことから本格展開を決定。「全国展開」ではない背景としては、九州や北海道のイオン店舗は地域子会社によって運営されており、現時点ではイオンリテール直轄のエリアと協力を得られたイオン東北の店舗が対象です。
なお、スマホメンテナンスを利用する際には電話での事前予約が推奨されています。一定の時間がかかることから契約受付などの通常の店舗対応への影響を考慮し、予約ありの場合は20分のフルコース、予約なしの飛び込み対応ではバッテリー関連のチェックなど一部項目を省いた10分コースとなります。
市場環境やユーザー層の変化に対応
イオンと格安SIM/格安スマホの関係は長く、2014年にはMVNO数社の商品を代理店として扱う形で「イオンスマホ」を立ち上げ、2016年から現在のように「イオンモバイル」という名称で自らMVNOを運営しています。
かつての格安SIMといえばネット販売が中心で大手キャリアのような充実したサポートも基本的にはなく、ある意味“上級者向け”という一面がありました。しかし、多くの人が当たり前にスマートフォンを持つようになってキャリアメールなどの各社固有のサービスへの依存度も下がり、その後の市場環境の変化によって大手キャリアのサブブランドやオンライン専用プランなども生まれ、3キャリア以外の通信事業者をメイン回線として選ぶこともそれほど特殊ではなくなりました。
このようにMVNOの在り方が変化する中で、通信契約やプラン選びに明るい人でなくとも安価なMVNOを選ぶ可能性が増え、当初はあまり重視されていなかったサポート体制の充実が課題となっています。その点では、もともと大手スーパーの店舗網や集客力を活かしてMVNOを一般層に届けるアプローチをしてきたイオンモバイルにとっては好機とも言えます。
スマートフォンを買った後も困った時に駆け込める場所があることは元からイオンモバイルの強みのひとつであり、その点では「スマホメンテナンス」はゼロからの取り組みというわけではありません。各店舗スタッフの裁量、現場の判断に委ねてきた部分の対応を平準化し、サービスレベルの統一を図る仕組み作りと考えられます。
また、同時に発表された新サービス「イオンスマホの乗換相談所」もイオンの携帯電話コーナーの特性を活かしたものです。各店舗ではイオンモバイルだけを扱っているわけではなく、大手キャリアの販売代理店でもあり、ひとつの売り場のなかで各社の商品・サービスを見比べながら選べる環境にあります。
そこで売場内の一角に乗換相談所と名付けた専用カウンターを設け、特定のキャリアの販売員ではない専任スタッフを置き、フェアな視点で比較提案を行おうというわけです。2021年9月から総務省の「乗換相談事業」の実証実験に参加する形で同様の取り組みを行っており、検討を経て正式サービス化されました。
イオンモバイルの現状と新サービスの今後
9月26日、記者向けに開催された新サービス発表会には、イオンリテール 住居余暇本部 イオンモバイルユニット イオンモバイル商品マネージャーの井原龍二氏が登壇。新サービスの説明と合わせて、イオンモバイルの近況も語られたのでご紹介します。
まず、大手キャリアから低廉な料金のオンライン専用プランが登場するなど市場環境の変化が大きかった2021年度に関しては、サービス開始以来初となる純減に転じました(純減=一定期間内の新規契約数を解約数が上回る状態)。
2021年4月、2021年10月、2022年4月と三度にわたって料金プランの値下げを行い、本年度の途中経過としては純増に戻せているとのこと。特に、直近では4月の値下げ対象となった20GB以上の大容量プランを選ぶ契約者が増えているようです。
また、今夏はMVNO各社に取材を行うなかで「(0円プランを終了した)楽天モバイルからのMNP転入が急増している」という情報をよく耳にしました。イオンモバイルでも6月度のMNP転入者の33%(MNP予約番号ベースで集計)を楽天モバイルからの転入者が占めるなど、数字を見ればやはり他のMVNOと同様に“0円終了”の影響を受けているように思えます。
しかし井原氏によれば、店舗からのフィードバックとしては0円終了の影響というよりも、むしろ一度使ってみて通信エリアなどのサービス面に不満を感じた人が既存キャリア網のMVNOに戻ってくるケースが多いそう。実店舗が強くメイン回線としてのユーザーが多いイオンモバイルだけに、他社との傾向の違いがみられ興味深いところです。
新サービスの今後の予定としては、まずスマホメンテナンスについては需要を把握していく段階にあり、利用人数などの目標値は非公表。乗換相談所の展開スケジュールは店舗スペースの確保状況にもよるとしつつ、20店舗までの拡大を明言しました。どちらの施策にも言えることですが、スマートフォンの契約や相談をきっかけにショッピングモールへの来店動機を作れることもイオン全体としてはプラスになるでしょう。