「生保レディ」は、顧客のライフスタイルに適した保険商品の提案やコンサルティングを行う仕事です。いわゆる保険の営業ですので、「ノルマが厳しい」というイメージがあるかもしれませんが、実は、必要な資格を取得しなければならないという大変さもあります。
生保レディには、どのような資格が必要なのでしょうか。今回は、生保レディとして働くために必須となる資格やスキルアップのための資格をご紹介します。
■生保レディの仕事内容、なり方
はじめに、生保レディの仕事内容や、仕事に就く方法を確認してみましょう。
<生保レディの仕事内容>
生保レディとは、女性の「(生命)保険外交員」「生命保険募集人」のことで、個人や企業などの顧客に対し、個々のライフスタイルに合う生命保険を提案、販売する仕事です。その人に最適な保険商品はそれぞれ異なりますので、生保レディには、一人ひとりのライフスタイルや人生設計を丁寧にヒアリングすることが求められます。
また、保険を販売するだけでなく、ライフステージの変化に伴う保険の見直し、保険金請求手続きのサポートなど、顧客へのアフターフォローも大切な仕事です。
生保レディは歩合給であることが多く、成績によっては高い収入を得ることも可能です。契約が成立した時には達成感がありますし、顧客が加入した保険が役に立った時には喜びも大きいでしょう。
一方、契約にノルマが課せられていることも多く、新規契約のため営業をかけ続けなければいけない大変さもあります。さらに、顧客に合わせて働くため、休みが取りづらい面も。また、仕事しながら保険についての最新情報を学ぶ必要があり、継続的な努力を必要とする仕事です。
<生保レディはどうすればなれる? >
生保レディ(保険外交員)は主に、生命保険会社に所属しています。生保レディになるには、保険会社への応募や、すでに生保レディとして働いている人からの紹介などが多いようです。
また、生保レディは、正社員ではなく個人事業主の形態で働くケースが多いという特徴があります。正社員として勤めることもありますが、生保レディの多くは保険会社と雇用契約を結ばず、業務委託契約を締結して働いています。
生保レディを始める時点で必要な資格は特になく、一部の外資系企業などを除けば、学歴不問、もしくは高卒以上の学歴があれば応募が可能です。また、常に新規の募集がかけられており、生保レディになること自体はそこまで難しいというわけではありません。
ただし、保険外交員となった後には、保険業界が統一して実施する研修に参加する必要があります。そして、研修後には後述する試験に合格し、営業員として国に登録しなければなりません。このような過程を経て、ようやく保険外交員として現場で働くことができるのです。
■生保レディに必須となる資格
まずは、生保レディが保険営業に携わるために必須となる資格をご紹介します。
1. 生命保険募集人資格(一般過程)
先ほど、保険外交員として働くには試験に合格する必要があると述べましたが、生保レディが最初に受ける試験が「生命保険募集人資格 一般過程」です。この試験に合格し、国に登録することで資格を取得でき、保険商品の提案や販売が行えるようになります。
この資格がないと保険外交員として働けませんので、厳密な意味では「唯一の必須資格」と言えるでしょう。
なお、通常は、生保レディとして働くことが決まってから会社で研修を受け、その後一般過程の試験に臨みますので、必ずしも事前に勉強が必要なわけではありません。
一般過程に合格したら、生保レディとして働きキャリアを重ねる中で、専門課程、応用課程などより上位の試験を目指していくことになります。
2.専門課程
生命保険募集人資格の一般過程に合格したら、次は「専門課程」試験を受験します。一般過程よりも上位の試験ですが、難易度は一般過程とさほど変わらないとされています。
生保レディとして働くには一般過程の合格が必須ですが、実際には、専門課程に合格していないと働き続けることは難しいようです。そのため、専門課程も事実上の必須の資格と言えるでしょう。
専門課程は、入社から2年以内に取得するのが一般的です。その期間内に専門課程に合格できない場合、昇格が遅れる可能性もありますので、早めの取得を目指しましょう。
3.応用課程
「応用課程」は、専門課程の次に受験する試験です。専門課程より難易度は上がりますが、他の資格試験と比べて特別に難しい試験というわけではありません。保険の営業や販売に携わる多くの人が取得している資格であり、生命保険会社でも取得が推奨されています。
応用課程は入社後2~3年以内の取得が目安となり、また、一般過程から応用課程までは一発合格が望ましいとされています。応用課程に合格しないままだと、退職を余儀なくされる場合もありますので、こちらも早めに取得しておいた方がよさそうです。
4.変額保険販売資格
「変額保険販売資格」は、変額保険を販売するのに必要となる資格です。変額保険とは、保険会社が株式や債券をメインに資産運用し、その運用実績に応じて保険金や解約返戻金が増減する保険を指します。
外資系の生命保険会社のほか、国内でも大手の生命保険会社では販売しているところもあります。
変額保険販売資格の試験を受けるには、専門課程に合格していることが条件です。また、応用課程試験と同時に試験が開催されるため、たとえ変額保険を販売しない会社でも、事実上取得が必須とされています。
難易度としては、他の資格試験と比べて、特別難しいというわけではありません。この試験に合格したのち、生命保険協会に登録を行うと、変額保険を販売することができるようになります。
5.外貨建保険販売資格
外貨建て保険とは、払い込まれたお金を外貨で運用する保険商品です。外貨建て保険のメリットは、割安な保険料で高い運用が期待できる点ですが、反面、為替相場次第では思っていたより低い運用益となり、損失を被る恐れもあります。さらに、為替手数料もかかります。
2022年以降は、「外貨建保険販売資格」を保有していないと、外貨建て保険を販売することができません。そのため、保険の営業や販売に携わる人に必須の資格となっています。
■生保レディにとってスキルアップになる資格
ここまでは、生保レディとして働くために必須となる資格をご紹介しました。次に、必須ではないものの、持っていると昇進の判断材料になったり、顧客へのアピールやスキルアップに役立ったりする資格を解説します。
1. 2級FP(ファイナンシャル・プランニング)技能士、AFP
ファイナンシャルプランナー(FP)とは、貯蓄や投資、税金や保険、不動産、相続など幅広い金融の知識を備えたお金の専門家で、顧客に資産設計や運用法などをアドバイスします。
2級FP技能士試験を受験するには、「FP3級合格」または「FP実務経験2年以上」、もしくは、「AFP認定研修の受講修了者」であることが条件です。合格率は40%程度で、きちんと勉強すれば取得するのにさほど難しい資格ではありません。
一方、2級FP技能士と同等に扱われる「AFP」という資格もあります。こちらは、国家資格であるFP技能士とは異なり、日本FP協会認定の民間資格です。
FP資格の取得を目指すと、その勉強を通じ、お金に関するさまざまな知識を身に付けられます。また、名刺に「FP」の記載があれば、「家計やライフプランに寄り添った保険の提案ができる」と顧客にアピールできるかもしれません。
2. 1級FP(ファイナンシャル・プランニング)技能士、CFP
2級FP技能士の上位資格である「1級FP技能士」になると、その難易度は跳ね上がります。1級を保有していれば、高度な専門知識を持ったFPとしてアピールできるでしょう。ただし、1級FP技能士試験を受けるためのテキストや受験料は合計で5万円を超え、金銭的なハードルも高い試験です。
一方、1級FP技能士と同等に扱われる資格として、「CFP」があります。こちらは、先ほどご紹介したAFPの上位資格で、国際的なファイナンシャルプランナー資格として認められています。
なお、AFPやCFPは、FP技能士と異なり、資格を継続するためには単位取得が必要で、更新料もかかります。「顧客へのアピールやスキルアップとして、どちらを取るべきか」と悩んだら、単位継続の労力やコストのかからない、FP技能士を選ぶのも良いでしょう。
3. 投資診断士
「投資診断士」は、日本に正しい投資の考え方を根付かせることを目的に、2019年に誕生した新しい資格です。難易度は、FP2級の下位にあたるFP3級と同程度とされ、しっかり勉強すれば比較的容易に取得できます。
投資診断士の勉強をすると、株式や投資信託、不動産、保険、暗号資産といった投資商品、iDeCoやNISAなどの制度投資、ポートフォリオなどの知識が身に付けられます。
投資について総合的に学びたい場合は、取得を目指してみましょう。
4.大学課程
「大学課程」は、応用課程の次のレベルの試験です。大学課程になると試験の難易度も非常に高くなり、ほとんどの生命保険会社では、取得が必須とはされていません。
大学課程に合格すると、名刺に「トータル・ライフ・コンサルタント(TLC・生命保険協会認定FP)」と記載することができ、生命保険について高度な専門知識を有していることの証明になります。ただ、一般的な知名度は低いため、大学課程の取得は必ずしも重要とは言えません。
5.中小企業診断士
中小企業診断士は、経営コンサルタントとして唯一の国家資格です。企業をさまざまな角度から診断し、経営課題に対応するための助言を行います。
中小企業診断士の勉強をすると、経営全体を幅広く診断し、解決策の立案や、より効率的な経営を行うためのスキルが身に付きます。
法人に対しては、法人保険を活用したリスク管理や節税の提案ができるでしょう。中小企業診断士の資格取得を通じ、中小企業の財務状況や経営資源の分析が可能になれば、大きな武器となるはずです。
6.相続診断士
相続診断士とは、相続の基本的な知識を身につけ、相続診断ができる資格です。相続についてトラブルが起きそうな場合は、税理士、弁護士、司法書士などの専門家へつなぎ、問題の解決を目指します。
生保レディとしては、相続診断士の資格取得を通して得た相続の知識を活用し、相続税の節税対策や、遺産をバランスよく配分するための保険活用を提案できるでしょう。
相続の悩みは、一部の富裕層だけのものではありません。相続診断士の資格をアピールすれば、「相続の面から保険の提案をして欲しい」という顧客のニーズに応えることができるでしょう。
■生保レディに資格取得は欠かせない
今回は、生保レディに必須の資格、スキルアップに役立つ資格をご紹介しました。資格を取得しなければ生保レディとして働くことは難しいため、「生保レディと資格は、切っても切れない関係」と言えるでしょう。
働きながら時間を見つけて資格の勉強をするのは、簡単なことではありません。どのくらいの期間でどの資格を取るのか、しっかり計画を立てておくことが大切です。