大日本印刷(DNP)は9月26日、東京工業大学、ファシリティジャポン、リアルタイプと連携し、文字の読み書きに困難がある人(ディスレクシアを含む)にも見やすく読みやすい「じぶんフォント」のプロトタイプを開発したと発表した。
知的能力に関係なく文字を読むことが困難な学習障がいであるディスレクシアの人にとって、フォントの変更が読み難さの軽減に役立つ場合があり、欧米ではディスレクシア対応フォントに関する研究が進み、実用化されているという。
国内でも東京工業大学・朱心茹助教によるディスレクシア対応の日本語フォントの試作・評価が進み、その有用性が確認されている。一方で、日本語の情報処理で少なくとも必要とされる約7,000字(JIS第1・第2水準)のフォント開発には、高い負荷がかかっていた。
こうした課題を解決すべく、DNPは「じぶんフォント」の開発を開始し、朱助教、Webアクセシビリティ技術を有するファシリティジャポン、フォント開発やWebフォントの配信技術を有するリアルタイプとの連携による「じぶんフォントプロジェクト」を結成した。
朱助教は、文字の読み書きに困難がある人の協力のもと、自身が開発したフォントの評価・分析を行い、(1)文字の下部が太い、(2)全体が細め、(3)全体が縦長で太めといった3つの傾向のあるフォントが好まれることを発見した。「じぶんフォント」は、これらの特徴を活かした形状となっている。
「じぶんフォント」は、画線がシンプルで、先端や角が丸い、DNPのオリジナル書体である秀英体の「秀英丸ゴシック」をベースに開発。ひらがなは形状や大きさを整え過ぎないようにしており、例えば「い」は平たく、「く」は縦に長くなど、手書きの形状に近いデザインで字間にゆとりがある。これらの特徴は、読み書きに困難がある人に好まれる形状であることが朱助教の研究で判明しているという。
DNPは実用化に向け、誰でも「じぶんフォント」の読字体験ができ、多様なフォントと比較しながら自分に合うフォントを見つけられるWebサイトを公開。サイト上でアンケートを実施し、その結果から研究を進め、開発フォントのブラッシュアップを図るとしている。