販売が始まって10日ほど経ったiPhone 14シリーズですが、私の率直な感想はかなり“がっかり”。ここまで成熟したスマートフォン市場において、毎年さまざまな技術革新をもとに新機能をたくさん届けてくれるのは、ほかのメーカーには真似できないすごいこと。ただ、何も分かっていないワガママないち消費者の観点から見ると、なんとも買い替えるほどには思えないんですよね。
えっ、Lightningのままなの!?
現在使っているiPhone 12 mini(2020年11月発売)の性能・機能はそこまで衰えていないものの、iPhone 14シリーズの発表前には「欲しくなるような新しさがあれば買い替えてもいいかな」くらいには思っていました。が、9月8日の朝起きてiPhone 14のニュースをざっくりチェックしたところ、発表イベントの動画をしっかりと見るまでもなく購入は“即パス”することに決めました。
その最大の理由は、iPhone 14シリーズは「コネクターがLightningのまま」だったから。24年秋までにスマホなどの充電端子をUSB-Cに統一する法案が欧州連合(EU)で可決されましたが、今年の新モデルでは変更なし。搭載されるとしたら来年のiPhone 15(?)の線が濃厚ですね、これは。
もちろん、iPhoneが気軽に買い替えられるデバイスなら、コネクターの形状なんてどうだっていんです。ただ、iPhone 14シリーズの価格、皆さん見ましたか? 国内では円安の影響も受けて、iPhone 14が119,800円~、14 Plusが134,800円~、14 Proが149,800円~、14 Pro Maxが164,800円~です。「お金に余裕がある」「とにかく最新のモデルが欲しい」「仕事で利用するので最高の性能を」「現在のモデルが古すぎる」といった人以外、おいそれと手を出せませんよね。
ですから、どうせバカ高いiPhoneを買うなら、Lightningのままはちょっと…と思うわけです。もちろん、今のiPhoneにはワイヤレス充電の仕組みもあるので、充電自体はそう問題ではありませんが、少なくとも私の場合は身の回りにUSB-Cを搭載したMacBook AirやiPad Proがあるので、USB-Cのほうがケーブルやアクセサリを統一できて楽。それに、USB-Cのほうが充電速度やデータ転送速度も上がるでしょうし。
実際に来年のモデルでUSB-Cが搭載されるのか、はたまた物理的なコネクタ自体が廃止されるのか、そのあたりは現時点では明らかではないものの、コネクタ周りのなんらかの動きはありそうなので、「買い替えはそれを待ってから」が多くの人にとって妥当な判断なのではないでしょうか。もちろん、「最後になるかもしれないLightning搭載機が欲しい」という人は別ですが。
欲しいのはiPhoneではなく、iPhoneでできること
Lightningのままであること、そして価格が高いことを上回るメリットがあれば、買い替えも現実的だったかもしれません。ただ、とあるテレビのニュース番組では「iPhone 14がついに発表されました。暗闇での写真が一段と綺麗に撮れるようになっています」と紹介されていたりして(笑)、個人的にもこれといった大きな進化を感じられなかったのが正直なところ。iPhone 14シリーズの新機能・新性能のうち、おもなものをピックアップすると以下でしょうか。
【iPhone 14シリーズ共通】
- 衛星通信への対応
- 衝突事故検出機能を搭載
- バッテリーの持ちが向上
- カメラの性能強化
【iPhone 14、14 Plus】
- A15チップの改良
【iPhone 14 Pro、Pro Max】
- 新しいA16チップを搭載
- クアッドピクセルセンサー化やアクションモードなどカメラ性能を大幅強化
- TrueDepthカメラの刷新
- 新しい操作方法「Dynamic Island」の導入
- ディスプレイの性能強化
- ディスプレイの常時表示に対応
このうち、通常の電波が届かない場所でも衛星経由でSOSを発信できる通信衛星への対応や、自動車での重大な衝突事故を検出してくれる機能の搭載は「命を救ってくれるかもしれない」ことから、とても素晴らしいと思います。しかし、いざというときに役立つ機能なので、どこまで必要かは人それぞれ。それに、そもそも衛星経由の緊急SOSは米国とカナダのみが対象なので、日本でのサービス開始を待ってからでも遅くなさそう。
それ以外のポイントに関しては、ここ数年に発売されたiPhoneと比べて少し良くなった…というくらいの印象しか持ちません。新しいチップで処理性能が速くなる、もっと写真やビデオが綺麗に撮れる、バッテリーが1時間くらい長持ちする、よりディスプレイが明るくなる…。確かに正当な進化ですし、技術的にはすごいことなのでしょうが、すでに手元のiPhoneが十分すぎるのであまり大きなメリットを感じられないのです。
ちなみに「Dynamic Island」に関しては、「iPhoneを使っているときに、今していることに気を散らすことなく、重要な通知やアラートなどが形を変えて画面上部にさりげなく表示され、操作できるもの」と理解しています。「新しいiPhoneの操作方法」とAppleは言いますが、これは実際に使ってみないことにはその真価が分かりませんね。MacBook Proに搭載後すぐに廃止された「Touch Bar」のように結局使われないのではないか、タッチするとカメラが指紋で汚れてしまわないのか、といったことが気になっています。
iPhoneの新機種が発表されたときは、必ずAppleが制作した紹介ビデオを見るようにしているのですが(言葉よりも映像のほうが新しさを直感的に分かるから)、そこでも「あっ、こんな新しいことができるんだ!」といった驚きが今回は少なかったように思えます。映像だけで表現できずに、言葉やテキストでその良さを語っていましたからね。映像に自分を重ね合わせることがあまりできませんでした。
“モノ”を買う時代から“コト”を買う時代といわれて久しい昨今、ひと昔前のiPhoneでは「手にしたら、こんな新しいこと(体験)ができるんだ」と想像を掻き立てられたものです。しかし、ここ数年のiPhoneは成長曲線が緩やかになったせいか、そう感じることが本当に少ないですね。
もっとお金があれば別ですが…
なんだか全体的に新しいiPhone 14シリーズをけなすような記事になってしまいましたが、それに追い討ちをかけるような残念な点を最後にもう1つ。それは、もっとも安価に購入できた「mini」がラインアップから外れてしまったことです。おそらく、あの筐体サイズでは十分なバッテリー性能を確保できなかった(または売れ行きが悪かった)のだと思いますが、これにはminiユーザーとしては本当にがっかりです。
過去記事「売れてないといわれる『iPhone 12 mini』は本当にガッカリ端末なのか?」で書いたように、miniはもっともコストパフォーマンスに優れていると感じていたので、なくなってしまったのは本当に悲しい。来年はぜひ復活を、もしくは機能・性能の進化とは別のベクトルの進化を兼ね備えた、欲しくなるiPhoneの復活を期待しています。
さて、それはさておき、果たしてiPhone 14シリーズはこれで売れるのでしょうか? 発表後、すぐにTwitterで「USB-Cじゃないのかよ」がトレンド入りしてしまったように、Lightning継続による一定数の買い控えは避けられないような気もします。それに、特に国内では端末価格上昇の問題もありますから、買い替えは来年以降に回そうと思う人も多くいそうです。私の場合は、新型コロナの影響による生活様式の変化で消費を抑えるようになりましたし、『FIRE』を夢見てお金は投資に回したいですし、高くて変わり映えしないように見えるiPhone 14にお金を使うよりは、しばらく我慢していた海外旅行へ行きたい!ということで、オーストラリア旅行を予約してしまいました。
とはいえ、iPhoneに何を求めるかはもちろん人それぞれです。この記事はいち個人の意見としてちょっと読んだ程度にとどめ、iPhone 14シリーズの新機能の詳細や特徴に関してはレビュー記事などを参考にしながら総合的に判断いただければと思います。また、古い機種から乗り替える場合は、iPhone 14ではなく、継続販売されるiPhone 13やiPhone 12、そして64GBモデルが62,800円で買えるiPhone SEあたりが狙い目かもしれません。