さらに、実験で決定された結晶の構造をもとに、RuP中の電子状態が計算されたところ、三つ子の分子は4個の電子を取り込むことで化学結合を作る、新しいタイプの分子であることが判明。三つ子の分子を作るために電子が捕捉されてしまった結果、0℃以下になると急に電気が流れにくい絶縁体となってしまうことが明らかにされた。
なお、今回発見された分子は、固体中では初めて確認されたタイプだったという。ただし、ヨウ素デンプン反応でお馴染みの「ヨウ素イオンI3-」も、3個のヨウ素原子が4個の電子によって結合する、同タイプの分子を形成するとのことで、このように身の回りにある分子は複雑な化学結合を作るものが多数あることから、固体中でも今後、多様な分子形成が見つかることが期待されると研究チームでは語っている。
また、固体中での分子の形成や乖離は、今回のRuPや二酸化バナジウムのように室温付近で起こり、電気伝導や反射率の急激な変化を引き起こすことから、固体中分子の性質を利用したセンサやスイッチングデバイスへの応用研究も行われているとのことで、今後、さまざまなタイプの分子が発見されれば、より急激な物性変化や高速な応答、磁場・電場・応力など、さまざまな外場を使った分子制御を行えるようになる可能性があるともしている。