ソニーからハイエンドスマートフォン「Xperia 5 IV」が発表されました。ハイエンドながらコンパクトなボディを採用し、使い勝手の良さが光る製品です。現時点ではグローバル版としての製品発表のみで、国内キャリアからの取り扱い発表はまだですが、日本でも発売予定であることは発表時点でアナウンスされています。
そんな「コンパクトでハイエンド」という期待のXperia 5 IV、グローバル版をチェックしてみました。
コンパクトで細長いボディ
「Xperia 5」シリーズは、同社のスマートフォンラインナップとしては最上位の「Xperia 1」と中級機にあたる「Xperia 10」の間に位置します。基本的なスペックはハイエンドながら、一部機能を省くなどしつつ、コンパクトなボディを実現したモデルです。
Xperia 5 IVでもそのスタンスはもちろん変わりません。SoCはXperia 1 IVと同じSnapdragon 8 Gen 1。メモリこそXperia 1 IVの12GBより少ない8GBですが、ストレージは128GBまたは256GBと同等で、通常利用時のパフォーマンスはほとんど変わらないでしょう。
Xperia 1 IVのディスプレイは6.5型で21:9の有機ELを採用し、4K解像度でHDRに対応しています。Xperia 5 IVでは6.1型/21:9の有機ELで、FHD+の解像度でHDRに対応しています。
ディスプレイが小さくなった分、本体サイズもコンパクト。H156×W67×D8.2mm/172gで、Xperia 1 IVと比較すると高さで9mm、幅で4mm、重さで15gの小型軽量化となっています。
この差は意外に大きく、とても手に持ちやすいサイズ感。特にXperiaの21:9という細長いディスプレイは、画面サイズの割に手のひらへの収まりが良く、さらに縦が短くなったので片手での操作性が向上しています。
実は重さではiPhone 14と同じ。画面サイズは同等ですがアスペクト比が異なり、高さは10mmほど高く、幅は4mmほど細いので、Xperia 5 IVの方が持ちやすいでしょう。
細かい点ですが、側面のボタンが1つ減っています。これはもともとGoogleアシスタント用の起動ボタンで、正直あまり意味のないボタンでした。これが排除されたことで、ボタンの押し間違いも減って使いやすくなりました。
デザイン的にはほぼ従来通りですが、なだらかな曲面を描いていた側面がよりフラットに近くなった点は違いです。手のひらへのフィット感は減ったようにも感じますが、このぐらいだと人それぞれの感覚でしょう。
ワイヤレス充電の追加やバッテリー容量の増加
新機能としては、ワイヤレス充電に対応。Qi互換のワイヤレス充電ですが、個人的には重要度の高い機能なので歓迎。ケーブルなしで置くだけで充電できるので、ちょっと充電、そのまま持ち出して使用して、減ったらまた充電、という感じて気軽に使えるのがいいところです。
バッテリー関連では、容量も500mAhの増加で5,000mAhに達しました。バッテリー容量が増えれば単純に使用時間が延ばせるので、これもうれしい変更点です。
個人的にはあまり使いませんが、スピーカーが強化されたのも変更点です。動画視聴でスピーカーをと利用するユーザーはそれなりに多いそうで、より音質が向上し、音圧が増加したことで、迫力のある映像体験となります。実際、手元の一世代前の最上位モデルであるXperia 1 IIIと比較しても、Xperia 5 IVの方が音質は向上しているように感じます。
オーディオ機能では、360 Reality Audio対応や3.5mmオーディオ端子を使ったハイレゾ対応、LDAC対応といった機能に加え、最新のBluetooth LE Audioにも今後対応予定とされているので安心です。
基本的な部分では順当なバージョンアップという印象ですが、従来とは異なるアップデートとなったのがカメラ機能です。
Xperia 1 IVとは異なるカメラ機能
これまで、Xperia 1とXperia 5はカメラ機能がほぼ共通のものでした。前世代のXperia 1 IIIとXperia 5 IIIでは、三眼の構成は共通で測距用の3D iToFセンサーの有無が違いでしたが、今回はそれに加えて、Xperia 1 IVとXperia 5 IVではカメラ性能に明確な差が生じました。
Xperia 1 IVでは、望遠カメラに新たに光学ズームレンズを搭載。35mm判換算で85~125mmをカバーしています。それに対してXperia 5 IVでは、35mm判換算で60mmという単焦点の望遠カメラとなりました。Xperia 1 IIIとXperia 5 IIIはともに70mm/105mmの2つの焦点距離を切り替える形でしたが、Xperia 1 IVでは光学ズームを搭載、一方のXperia 5 IVでは単焦点に回帰した形です。
超広角カメラの16mmと、広角カメラの24mmは変わらず、望遠カメラだけ60mmとなったことで、スペックとしては低下しているとも言えます。その分、内部スペースに余裕ができて500mAhのバッテリー増量とワイヤレス充電に対応できたということでしょうが、少し残念なところです。
その代わり、センサーはXperia 1 IVと同様、全て120fpsの高速読み出しに対応しました。これによってAF/AE追従の20コマ/秒という高速連写が可能で、さらに連写中のHDR撮影もサポートします。
動物などの動く被写体を追尾するリアルタイムトラッキングもすべてのカメラで利用可能。このあたりの性能はXperia 1 IVと同等と言えそうです。
本体側面のシャッターボタンを長押しすると、画面オフからでもカメラが起動して、すぐに撮影できる操作性はこれまでと変わりません。Photography Proアプリも、カメラライクなUIで露出補正や各種撮影設定が変更しやすいので、個人的には使いやすいと思います。
画質に関しては、必要十分な写り。特にメインの広角カメラは、他社のように高画素センサーをピクセルビニングすることでピクセルピッチを大型化するのではなく、素直に12MPの大型センサーを使っており、自然な描写かつ適度なシャープネスと色味で高画質です。
あんがい良かったのが望遠カメラで、無理をしない60mmという焦点距離のせいか、画質は向上している印象です。光学倍率としてはメインカメラ比で2.4倍程度なので、数歩近づけばカバーできるレベルですが、被写体に近寄れないようなシーンでは有効でしょう。
使い勝手の面では望遠光学ズームを搭載したXperia 1 IVには劣りますが、画質面では有利な面もあります。ニーズに応じてXperia 1 IVと比較し、コンパクトさを重視して望遠光学ズームを諦めるという選択もありでしょう。
快適動作のスマートフォン
パフォーマンス面でもSnapdragon 8 Gen 1なので問題は感じません。今回試用したのはベンチマークテストが行えないものでしたが、すでに発売済みのXperia 1 IVと同じチップセットなので、基本的な傾向は変わらないでしょう。
Xperia 1 IVと比べると画面が小さいので、マルチウィンドウや動画の視聴にはやや物足りない印象はあります。反面、持ちやすさや可搬性の良さというメリットがあるので、どちらを重視するかというところでしょう。
従来機種に比べて、Xperia 1シリーズとはカメラが異なり、ワイヤレス充電の追加とバッテリー容量の増加という機能が追加されました。Xperia 1 IVとの差は、画面サイズとカメラに加えてミリ波対応の有無という程度です。さらに、先日発表されたXperia 1 IVのオープンマーケット版(SIMフリー版)はミリ波非対応なので、両者の差が縮まります。
カメラという差は大きいのですが、コンパクトさを重視すれば、Xperia 5 IVは十分な選択肢となるでしょう。