今回の研究では、NASAの赤外線天文衛星WISEによって取得された、波長3~5μmの近赤外線による全天長期モニター観測で取得されたデータが用いられた。この波長の近赤外線はダストによる吸収・散乱の影響が可視光に比べてはるかに小さいため、ダストトーラスに深く隠された活動銀河核についても容易にダスト減光量の測定を行うことが可能だったとする。

  • 今回の研究で測定された活動銀河核のダスト減光量

    今回の研究で測定された活動銀河核のダスト減光量と、それらの活動銀河核におけるブラックホールから地球までの間に存在するガスの量との比較。1型活動銀河核とは、可視光放射がダストに隠されていないものを示し、同2型はほとんど隠されたものを示す (出所:東大Webサイト)

具体的には、2017年に発表されたBASSカタログにある活動銀河核に今回の手法が適用され、463個の活動銀河核のダスト減光量を測定することに成功したという。

活動銀河核は中心部の可視光放射がダストに隠されていない1型と、ほとんど隠されている2型に大別されるという。しかも、研究から、2型のダスト減光量は、1型に比べて大きいが、その減光量の大きさはさまざまで、1型よりも少し大きい程度のものから、可視光ならば明るさが1杼分の1になるほど大きなものまで、幅広い値を持つことが判明したとする。

また、測定されたダスト減光量を、大質量ブラックホールから地球までの間に存在するガスの量(BASSカタログ記載の、X線放射減光量で測定された値)との比較が行われたところ、多くの2型において、銀河系の星間物質の標準的なガスとダストの混合比を仮定したときのダスト減光量から予想されるよりも、ガスの量が多いことが判明したほか、このガスの量は、銀河系の星間物質からの予想値にほぼ等しいものからその100倍近く大きいものまで、活動銀河核ごとにさまざまな値が示されたという。

  • 今回の研究が示唆するダストトーラスの構造の概念図

    今回の研究が示唆するダストトーラスの構造の概念図 (出所:東大Webサイト)

今回の結果について研究チームでは、ダストトーラスの内側にダストを含まないガス雲が多数存在し、それらがこのガスの超過をもたらしているとする描像で説明できるとしている。また、WISE衛星が観測した活動銀河核のうち、今回の手法を適用できるものは約10万個と見込まれていることから、今後、こうして得られた大量のダスト減光量データに基づいてダストトーラスの構造や状態を推定し、活動銀河核と銀河中心の大質量ブラックホールの成長、それが母銀河に与える影響を理解するための手がかりを得たいともしている。