NVIDIAのGPUを専門に扱う米ビデオカード・メーカーのEVGAが、次世代のGPUを搭載したビデオカードを提供しないことを公式フォーラムで明らかにした。事実上のNVIDIAとのパートナーシップの解消であり、今後AMDやIntelのGPUを採用する計画はなく、同社がビデオカードから撤退する可能性が高いと報じられている。

EVGAは1999年にカリフォルニア州サンタクララで設立されてからNVIDIA一筋でビデオカードを開発・販売し、北米でNVIDIA製GPU搭載ビデオカードのシェア40%を占めるトップメーカーになった。米国に比べると日本での知名度は低いが、ここ数年で欧州においても人気メーカーの仲間入りを果たしている。

次世代GPU搭載カードを開発・製造しないことをこのタイミングで発表したのは、NVIDIAの次世代GPU発表が近いからだ。発表時にEVGAの名前がないことで憶測が広がらないように、本社にJon Peddie Research(JPR)やGamers Nexusなどを集めて経緯を説明。ミーティング参加者が9月16日にEVGAの決断を報じ、EVGAも公式フォーラムで発表した。フォーラムに投稿したEVGAのプロダクト・マネジメント・ディレクターのJacob Freeman氏によると、既存のビデオカード製品についてはサポートを継続。また、在庫がなくなるまで現行世代のビデオカード製品を提供し続ける。

EVGAはフォーラムへの投稿で、今回の決断に至った理由を明かしていない。ミーティングに参加したJPRによると、同社のビデオカード事業は大きくなっても利益が増えず、負担だけが重くなる効率の悪い事業になっていたという。

NVIDIAの多額の研究開発投資の成果で、グラフィックスとGPUコンピューティングが目覚ましい進化を遂げるのに従って、ビデオカードの研究開発費や製造コストが上昇。EVGAは多くのエンジニアリングスタッフを維持し、独自にPCBと冷却システムを開発してハイエンドゲーマーの高い要求に応えてきたが、2000年頃には約25%だった粗利益が2015年は10%に、今は5%程度に縮小しているという。

また、NVIDIAが以前リファレンス版と呼んでいたビデオカードを「Founders Edition」として販売し始めたことで、ビデオカード・パートナーとの間で摩擦が生じるようになった。例えば、EVGAがGeForce RTX 3090 Ti搭載ビデオカードを1399.99ドルで提供している時に、NVIDIAがパートナーに知らせることなくFounders EditionをBest Buyを通じて1099.99ドルで提供。EVGAなどは値下げで対抗せざるを得なかった。

北米で40%のシェアを持つEVGAの撤退によって、NVIDIAがその穴を埋めるのに1〜2四半期を要するとJPRは予測する。しかし、ユーザーにとって最も重要なのはGPUであり、EVGA製品の利用者が代わりの製品に落ち着くまで時間がかかっても、NVIDIAの痛手は小さいと見る。EVGAにとってビデオカードは売上全体の約80%を占めるが、ビデオカードからの撤退後も同社はPSU(電源ユニット)や他の製品で事業を継続するという。