住友商事と東急電鉄は、ローカル5Gを活用した線路巡視業務の効率化などの実証実験を12月に開始すると発表した。

  • ローカル5Gを活用した実証実験の概要

両社は昨年度、東急電鉄の自由が丘駅で同様の実証実験を実施した。今年度は自由が丘駅に加え、新たに菊名駅、妙蓮寺駅、横浜駅(東急東横線・横浜高速鉄道みなとみらい線)において、ローカル5Gを活用した線路巡視業務の効率化・高度化、線路敷地内の安全性向上に関する実証実験を行う。

この実証実験は、今年7月に総務省の「令和4年度課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証(特殊な環境における実証事業)」に選定された。鉄道業界全体の課題として、作業現場における自動化や省力化、安全性向上が求められていることを背景に、高速大容量で超低遅延、かつ多数同時接続ができ、独立したネットワーク網を構築できるローカル5Gを活用した課題の解決をめざす。

取組みの1点目は線路巡視業務の効率化・高度化。電車内に設置した高精細4Kカメラで撮影した映像をローカル5Gで伝送し、AIで解析することにより、作業員が現地に出向くことなく線路設備等の異常を確認できるしくみを構築する。

昨年度の実証実験では、駅停車時間内のデータ伝送とAI解析処理時間の短縮に成功したという。今年度はAIの精度向上を図るとともに、ローカル5Gシステムの一部設備とAIアプリケーションを横浜駅で横浜高速鉄道と共用化する。横浜高速鉄道以外の複数事業者ともこのソリューションの共同利用に関する検討を行い、2023年度以降の商用化をめざすとしている。

取組みの2点目として、線路敷地内の安全性向上に寄与する新規ソリューションの検討も行う。線路敷地内や踏切を網羅的にカメラで監視し、歩行者などの踏切の渡り残りや第三者の線路内への侵入を自動で検知。リアルタイムの映像を司令所や運転士に伝送することで事故の未然防止を図り、異常発生時における早期運転再開につなげる。住友商事と東急電鉄は今回の発表で、「線路敷地内の安全性向上は、将来の鉄道自動運転の実現にもつながる」と展望を描いている。