2021年1月に買収が完了し、Google傘下となったFitbitが傘下後の初となるトラッカー/スマートウォッチ新製品「Inspire 3」「Versa 4」「Sense 2」を発表し、9月15日から順次発売されています(Sense 2は9月29日発売。なお、いずれの製品も2022年8月に国内で発表・予約開始済み)。
Google東京オフィスで開催された発表会で触った実機のインプレッションをお届けします。
Fitbitのスマートウォッチ3製品が国内販売スタート
各製品の紹介の前に、まず注目しておきたいのが価格。スマートトラッカー「Inspire 3」と、スマートウォッチ「Versa 4」「Sense 2」は円安状況下にも関わらず、既存モデルから全製品が値下がっています。
登場時の販売価格は、Inspire 2(既存モデル)が21,470円でしたが、Inspire 3(新モデル)は12,800円。Versa 3(既存モデル)が29,990円に対しVersa 4(新モデル)は27,800円。Sense(既存モデル)が39,990円のところ、Sense 2(新モデル)は32,800円となっています。
ちなみに現在のFitbit公式サイトでは既存モデルの価格改定が行われ、Inspire 2が7800円、Versa 3が22,800円、Senseが34,990円で販売されているので、現在の価格で言うと、新製品のSense 2は旧製品よりも安く購入できる逆転現象が起きています。
Inspire 3はエントリー向け、SpO2測定に対応
縦39.32mm、横18.6mmと細長の健康管理トラッカー、Inspireシリーズの新モデル。約2cm弱の細い画面ですが、視認するには十分な表示スペースがあります。
カラバリは、本体がブラックで共通ですが、ベルトはモーニンググロウ(橙系)、ミッドナイトゼン(黒)、ライラックブリス(紫系)の3種類。サードパーティを含めればバンドの種類は豊富に用意されています。
Fitbit製品の中ではエントリー向けとなり、お手軽な価格ながら、十分な機能と最大10日間という長いバッテリライフを持っています。
新製品3モデルの開発に携わったスティーブ・モーリー氏(Google Inc. International Fitbit at Google Director APAC&Health Solutions)は、「健康管理やフィットネスを考え始める新しいユーザーが初めて使う製品」と紹介しました。
機能面では、エクササイズの記録や歩数、距離、カロリー計測、常時心拍計測、睡眠スコアなど、一般的な健康トラッカーに求められる機能を備えています(水深50m防水で水泳もOKです)。新たに、既存モデルの利用者から要望が多かったという、SpO2(血中酸素濃度)の測定にも対応しました。
本体の大きさは既存モデルから若干大きくなりましたが、厚みは薄くなっており(12.9mm→11.75mm)、装着しやすい印象です。ベルトも薄くなったように感じました。
ベルトはバネピンで接続されていますが、本体の内側に入り込むタイプなので通常の腕時計バンドは使えません。ただ純正のバンドの種類も多いですし、サードパーティ製バンドもこれから増えると思います。
トラッカーのため、スマートウォッチの上位製品と比べると「追加アプリを入れられない」「GPSを内蔵していない」「気圧計がない(高さのある動きが把握できない)」というあたりがデメリットになりますが、そのぶん軽く、日常生活を送る上で睡眠や歩数をチェックするという健康管理においては役立つ製品です。SpO2対応となったことで多くの人にフィットする製品でしょう。
Versa 4は物理ボタン採用、操作しやすい本体に
Versaシリーズは、Fitbitのメインストリームスマートウォッチ。スティーブ氏は「健康管理とフィットネスを第一に考えるユーザー向け」と紹介しました。四角型で多機能、追加アプリや文字盤の自由なカスタマイズができる点が特徴です。
Versa 4でももちろんエクササイズの記録や歩数計算、カロリー計測、常時心拍、睡眠スコアなどを計測可能。Inspire 3と異なりGPSも搭載し、今後はGoogleマップの表示が可能になり、目的地への道順を手首で表示できるようになるといいます。
キャッシュレス決済もサポート。一部のVISAデビットカードとして利用できるFitbit Pay(日本ではソニー銀行とPayPay銀行が対応)に加え、Suicaが利用できることも魅力の1つです。
カラーはブラック、ウォーターフォールブルー、ピンクサンド、ビートジュースの4種類で、ベルトに合わせた本体カラーを採用しています。
既存モデルのVersa 3比で、本体サイズはごくわずかに増えていますが、厚みは12.35mm→11.2mmと薄くなり、装着感が改善しました。Versa 3ユーザーのフィードバックから、左ボタンが圧力式から物理ボタンに変更されたほか、ボタン位置は上の方に変更されており、押しやすくなっています。
スティーブ氏によると、Versa 3とVersa 4シリーズはベルトの互換性があるとのことで、既存モデル利用者はベルトがそのまま利用できるのはうれしいところ。
ハイエンドのSense 2、1日のストレスを細かく計測
Fitbitのハイエンド製品となるのが、スティーブ氏が「我々の基幹商品」と紹介したSenseシリーズ。
最新のSense 2は、Versaシリーズと見た目や基本機能は近いですが、継続的皮膚電気活動(cEDA)センサーを始めとした健康管理関連センサー類が追加されています。このcEDAセンサーの搭載により、1日を通じた体のストレス兆候を検知できるほか、ストレスパターンに応じてガイド付き固有法やエクササイズ、瞑想などのリラックスを促せます。
なおグローバルモデルでは心電図測定機能も搭載していますが、国内では制限があるため現在は使えません。スティーブ氏は「現在も日本での認可に向けて作業中だ」と補足しました。
本体は「全てを再設計した」とスティーブ氏が語るように、左ボタンが物理式になったほか、ケース上半分をアルミ合金、下部分を樹脂にすることで軽量化を実現しました(金属アレルギーに配慮した可能性もあります)。多数のセンサーを内蔵しているため、厚みは12.35mm→12.3mmと、既存モデルとほぼ同等に留まっています。
カラーリングはシャドーグレー/ルナホワイト/ブルーミストの3種類。いわゆるブラック以外は、Versa 4とSense 2でカラーリングが異なるのですが、バンドはVersa 4とSense 2で共通して利用できるので、豊富なデザインを選べます。個人的には通気性がよくてムレず、水にも強くて止め位置が自由に選べる「フック&ループベルト」がおススメですが、今回の発表会ではアクセサリ類の展示がありませんでした。
Fitbitの強みは「心拍計測と睡眠分析」
開発に携わったスティーブ・モーリー氏(Google Inc. International Fitbit at Google Director APAC&Health Solutions)が、Fitbitの優位性として挙げたポイントが「心拍計測」。Fitbitが世界初の心拍計測機能付きトラッカー、Charge 2を発売したのは2016年10月のこと。世界初ということは必然的に世界で最も長く心拍計測データを保有・分析できている、ということで、心拍計データとその分析を強みの一つとして紹介しました。
心拍計測と合わせてアピールされたのが「睡眠分析」。睡眠の状態は、腕に取り付けるGセンサー(加速度センサー)である程度正しい結果が得られるという事になっていましたが、これに心拍データを加えることでレム睡眠の計測を可能にしています。
現在は10以上の指標で睡眠を分析できるほか、月額640円/年額6,400円の有償プレミアムサービス「Fitbit Premium」を使うと、睡眠の傾向を動物の名前に例えて表示するので、例えば普段は「ハリネズミ」だったのに、今日は「オウム」だったなど、普段と違う傾向になった時に一目でわかるようになっています。
なお、Inspire 3/Versa 4/Sense 2を購入すると、Fitbit Premiumサービスを6カ月無料で利用可能です。
なお、今回の製品はすべて従来通りのFitbit OSであり、GoogleのWare OSではありません。
発表会ではPixelWatchに関する質問もあり、スティーブ氏は「10月6日に(Made By Googleイベントがあるので)何か発表があると思う」とかわしたものの、「後日、Versa 4やSense 2でGoogleマップが動くようになる」と説明し、Googleとの結びつきが強まっていることをアピールしていました。
既存のSenseユーザーとして気になるのが、「Fitbitスマートウォッチのアプリの一つとしてGoogle Mapsが入るなら、既存モデルでも使えるのか?」ということ。日本の関係者に聞いたところ、「現時点ではよくわからない」との回答でした。
公式サイトの説明文ではVersa 4/Sense 2の新機能のような紹介(近日対応予定と記載)をしているため、まだ全く未定ではありますが「旧製品でも、もし使えたならラッキー」くらいの認識でいたほうがよさそうです。