マツダが高価格帯にチャレンジする新型SUV「CX-60」の出足が好調なようだ。6月24日に予約注文の受け付けを開始し、9月11日時点で受注台数は8,726台に到達。月間販売計画は2,000台なので4倍以上の受注を積み上げた格好となる。どんな販売状況なのか、話を聞いてきた。
500万円超のグレードが売れ筋?
CX-60はマツダが「新世代ラージ商品群」の第1弾と位置づける注目のモデル。パワートレイン別に2.5L直列4気筒ガソリンエンジンの「25S」、3.3L直列6気筒クリーンディーゼルエンジンの「XD」、同マイルドハイブリッド(MHEV)の「XD-HYBRID」、プラグインハイブリッド車の「PHEV」の4種類をラインアップし、各タイプにいくつかのグレードを用意する。価格帯は299.2万円(25SのSパッケージ)から626.45万円(PHEVのPremium Sports/Premium Modern)までと幅広い。発売はディーゼルMHEVが9月15日、ほかは2022年12月以降の予定だ。
マツダがCX-60に担わせようとする役割は多様だ。例えば成長する高価格帯SUV市場(400万円以上)の開拓もそうだし、マツダユーザーの上級車種需要の受け皿としての期待も大きい。
マツダの売れ筋SUV「CX-5」は再購入率の高い人気車種だが、ユーザーは乗り換えごとにグレードを上げたり、他社の上級SUVと比較検討したりする傾向があるという。CX-5や「CX-8」など、同社ラインアップの頂点に位置するクルマに乗っているユーザーが、さらに上のクラスのマツダ車に乗り換えようと思っても、これまでは選択肢がなかった。今後はCX-60を提案できるので、選べるクルマがなくて泣く泣くマツダから離れようとするファンを引きとめられる、かもしれない。
予約注文の内訳を見ると、マツダの狙いはけっこう当たっているようだ。
まずはエンジン別の販売構成だが、ディーゼルが全体の8割以上と人気だ。ディーゼルMHEVが43%で最も売れている。マツダ 国内営業本部の二宮誠二さんによるとディーゼルの割合については見立て通りとのことだが、MHEVの割合は想定以上に伸びているそうだ。
グレード別に見ると、上級車種が販売構成比の上位を占めている。つまり高価格帯の商品が売れているわけで、こちらもマツダの狙い通りだ。
CX-60予約者の57%がマツダユーザー。もともと乗っていたクルマで最も多いのはCX-5、次がCX-8だ。他メーカーからの流入は43%で、そのうちの21%が輸入車、レクサスを含むプレミアムモデルからの乗り換え。マツダ車で輸入車からの乗り換え比率が高いのはCX-8の10%強だそうだが、CX-60はそれを上回っている。
世代別に見ると40代以上の購入者が多いが、マツダで最も高価なクルマであることを考えると、30代以下の比率が34%というのはかなり高いといえそう。二宮さんは若年層の購入が増えた大きな原因として、残価設定型クレジット「マツダスカイプラン」の普及を挙げる。中古車相場が上昇して査定が高くなっているので、月々の支払いが軽くなり、若年層でも買いやすい状況が生まれているそうだ。
グレードによってはCX-60とCX-5の価格帯が重なるので、2台によるマツダ内での競合(いわゆるカニバリズム)が発生するのではという見方もあったが、CX-60の登場後もCX-5は「絶好調で売れている」(二宮さん)そう。CX-60発表後に新規顧客の来店が増えた結果、相乗効果でCX-5の販売が伸びているという側面もあるという。
クルマの発売直後は上級グレードに注文が集まりがちなので、多少は追い風参考のデータではあるものの、これまでのところCX-60はマツダの想定以上に売れているし、販売構成も同社の狙い通りに推移している。
サイズが大きく、グレードによっては価格も高いCX-60はマツダにとって「初めてづくし」(二宮さん)の商品。通常、同社では新型車を発売するにあたり、全国の販売店からスタッフを招いて試作車を披露するそうなのだが、今回はチャレンジングな商品でもあるので、数台の試作車を作って全国を回り、販売スタッフの全員にクルマを見てもらったそうだ。事前にCX-60を見た販売員が商品の魅力を理解し、自信をもって販売活動を行った結果が台数につながっているのかもしれない。