デノンは、AVアンプの新製品3機種を9月下旬から順次発売する。上位の9.4ch「AVR-X3800H」、7.2ch「AVR-X2800H」は10月下旬発売で、価格は前者が181,500円、後者が121,000円。5.2ch「AVR-X580BT」は9月下旬発売で、価格は58,300円。

  • AVR-X580BT

  • 9.4ch「AVR-X3800H」(ブラック):181,500円 / 10月下旬発売
  • 7.2ch「AVR-X2800H」(ブラック):121,000円 / 10月下旬発売
  • 5.2ch「AVR-X580BT」(ブラック):58,300円 / 9月下旬発売
  • AVR-X3800H

  • AVR-X2800H

国内で展開するデノンAVアンプでは“久々の3000番台”となるAVR-X3800Hを筆頭に、入門機からミドルクラスまでをリニューアルしたかたち。いずれもデノンのサウンドマスター・山内慎一氏が音決めに関わっており、音質にこだわったパーツや機構を盛り込んでいる。HDMI入力は8K/60p、4K/120pの映像信号パススルーに全機種対応しており、3機種の刷新によってデノンAVアンプはすべて8K対応となった。

  • デノンAVアンプはすべて8K対応に

3機種で対応するフォーマットが異なり、X3800HはDolby Atmos、DTS:X、MPEG-4 AACに加え、IMAX EnhancedやAuro-3Dといった高品位フォーマットにも対応。X2800HはDolby Atmos、DTS:XおよびMPEG-4 AACをサポートする。入門機となるX580BTはロスレスのDolby TrueHDや、DTS-HDの対応までで、Dolby AtmosやDTS:Xには対応しない。

  • 上位のX3800HはDolby Atmos、DTS:X、MPEG-4 AACに加え、IMAX EnhancedやAuro-3D、MPEG-H 3D Audio(360 Reality Audio)もサポート

オーディオ機能にも違いがある。まず、MPEG-H 3D Audio(360 Reality Audio)にX3800Hのみ対応しており、対応コンテンツをHDMI端子から入力して再生可能だ。また、上位のX3800HとX2800Hは、独自のネットワークオーディオ「HEOS」テクノロジーを搭載しており、Amazon Music HDやSpotifyなどの音楽ストリーミングサービス、インターネットラジオ、LAN上のミュージックサーバー(NAS/PC/Macなど)に保存したハイレゾ音源(5.6MHzまでのDSDや、192kHz/24bitまでのPCM)を再生できる。

AVR-X580BTはネットワークオーディオ再生機能は備えていないが、手持ちのスマートフォンやタブレットの楽曲をBluetooth経由でワイヤレス再生可能だ。USBメモリーからの最大192kHz/24bitまでのハイレゾ音源再生にも対応する。

  • X3800HとX2800Hはネットワークオーディオ「HEOS」搭載

3機種共通の進化ポイントとして、誰でも簡単に初期設定が行えるようにガイドするセットアップメニューを刷新。テキストや画像の表示解像度を上げ、読みやすさや視認性を高めつつ、現代的なデザインの「HD GUI」に変更した。また、スピーカーの接続や設定、入力機器との接続、ネットワークの設定など、初期設定を分かりやすくガイドする「セットアップアシスタント」機能も強化したという。

  • セットアップメニューは3機種とも刷新。現代的なデザインの「HD GUI」になった

  • X580BTのセットアップアシスタント画面

  • X3800H/X2800Hのセットアップアシスタント画面

AVR-X580BT

  • AVR-X580BT

5.2ch出力に対応するAVアンプで、Hi-Fiオーディオアンプの設計思想を継承したという全5ch同一構成のディスクリートパワーアンプを搭載。最大出力は140W(6Ω)。AVアンプで最もシンプルな基本設計を活かした「ミニマムシグナルパス(信号ラインの短縮)の徹底」と、「Hi-Fiアンプライクな作り込み」に注力しており、デノンHi-Fiオーディオの特徴である“ビビッド”、“スペーシャス”なサウンドも追求した。

  • X580BTの内部

HDMI 4入力/1出力の全端子で、8K/60pと4K/120pの映像信号をサポートし、著作権保護技術「HDCP 2.3」に対応。新4K/8K衛星放送や動画配信サービス、最新ゲーム機の高精細映像を楽しめ、8Kアップスケーリング機能も利用できる。HDR映像のパススルーにも対応し、HDR方式はHDR10、HDR10+、HLG、Dolby Vision、Dynamic HDRをサポートする。音声面ではオブジェクトオーディオを伝送できるeARC(Enhanced ARC)に対応している。

ほかにも、HDMI 2.1の以下のゲーミング機能に対応する。

  • ALLM(Auto Low Latency Mode)
    コンテンツに応じて画質優先/低レイテンシー優先を自動的に切り替える
  • VRR(Variable Refresh Rate)
    映像ソースとディスプレイのリフレッシュレートを同期してチラつきを抑制
  • QFT(Quick Frame Transport)
    映像ソース機器からの伝送速度を上げてレイテンシーを低減

X580BTのHDMI出力端子は、電源供給能力が300mAに向上しており(従来は200mA)、電源供給を必要とする長尺のHDMIケーブルを使うときも、高品位かつ安定した伝送を可能にした。

  • X580BTの背面

オーディオ面では、サウンドマスターによるリスニングテストによって選ばれた24bit対応のDACチップを採用。グラウンドを介したノイズの影響を受けにくい、ディファレンシャル動作のDACを採用している。ポストフィルター用のオペアンプには、上位機種と同じ高音質パーツを使用。ボリュームについても上位機種と同様に、ストレートサウンドを実現する独自カスタムの電子ボリューム機構を採用している。

HDMI以外の端子は、アナログ音声入力×2、光デジタル入力×2、サブウーファープリアウト×2、ヘッドホン出力×1。ワイドFM対応のFM/AMチューナーも搭載する。ネットワークオーディオのHEOSには前述の通り非対応だが、Bluetooth受信に対応しており、X580BTのみAACコーデックもサポートする。

消費電力は310W。電源部も強化しており、カスタム仕様の大型EIコアトランスを搭載し、プリアンプとパワーアンプに専用の巻き線から電源を供給。電源部のブロックコンデンサーには、X580BT専用にチューニングした大容量6,800uFのカスタムコンデンサーを2個使い、信号経路や電源供給ラインの最短化、基板上のパターンを太くするといった改良も行った。

スピーカーターミナルは従来のプッシュ式から、上位機種と同じスクリュータイプにグレードアップ。横一列に端子を配置し、バナナプラグも使用可能になった。本体サイズ/重さは434×330×151mm(幅×奥行き×高さ)/7.6kg。

  • スピーカー端子は上位機種と同じスクリュータイプにグレードアップ(下)

AVR-X3800H/X2800H

  • AVR-X3800H

  • AVR-X2800H

X3800Hは9.4ch出力、X2800Hは7.2ch出力に対応。どちらもHi-Fiオーディオアンプの設計思想を継承したという全チャンネル同一構成のディスクリートパワーアンプを搭載し、最大出力はX3800Hが215W(6Ω) 9ch、X2800Hが185W(同) 7ch。

X3800Hは、放熱効率の高い肉厚なアルミ押し出し材のヒートシンクに、2枚の基板に分けた9chアンプを搭載し、効率的な放熱と不要振動の抑制を追求。また、パワートランジスタをパーツメーカーと共同開発し、サウンドマスターが望む「シャープな音像、フォーカス感、分解能がもたらすしなやかさと高い精度感」を実現したという。

  • X3800Hの内部

X2800Hも上位機種同様に、サウンドマスターが徹底的にチューニング。パワーアンプ基板の信号ラインや電源供給ラインの低インピーダンス化、パーツ配置の最適化を行い、ノイズの影響を最小化したという。また、電源供給ラインを2系統に分けて、チャンネル間のクロストークやSNを改善している。

  • X2800Hの内部

X3800Hのみの新機能として、11.4chプロセッシングに対応。上位機で搭載しているDSPを超える「Griffin Lite XP」を新たに採用し、演算処理能力を大幅に高めた。これにより、11.4ch分のデコードやアップミックス、音場補正など、高負荷な処理も余裕をもって同時に行えるようになっている。Auro-3Dでは7.1.4chを実現する。

また、11.4chプリアウトを備えているため、パワーアンプを追加してシステムの拡張や音質のグレードアップが可能。高品位なAVプリアンプとして使えるようにする「プリアンプモード」も備え、以前はモードのオン/オフしか選べなかったが、X3800Hでは9chすべてのパワーアンプの動作を停止できるだけでなく、チャンネル毎に個別にオン/オフを設定できるようになった。プリとパワーを切り離すことで、大出力時にパワーアンプがクリップしたときの歪みの影響をプリアンプが受けなくなり、高音質で楽しめるとしている。

  • X3800Hのみの新機能

このほか、X3800Hには4系統の独立したサブウーファープリアウトも装備し、音量レベルとリスニングポジションまでの距離を個別に設定可能だ。マニュアルでの設定に加え、Audyssey Sub EQ HTによる自動設定も可能。4系統のサブウーファーすべてで同じ音を出すスタンダードと、各サブウーファーの近くにある「小」に設定されたスピーカーの低音を再生する「指向性」の2モードから選べる。

X3800H/X2800Hは、設置する部屋によって異なる音響的な問題を補正するAudysseyの音場補正技術を搭載しており、付属のマイクを使って補正が行える(X3800Hは「Audyssey MultEQ XT32」、X2800Hは「Audyssey MultEQ XT」)。

これに加えて、X3800Hではユーザーのための新たな選択肢として、PCアプリと測定マイク(別売)を使って音場補正をデジタル的に処理する「Dirac Live」(有償)にも、今後提供するファームウェアアップデートによって対応予定だ。

Dirac Liveに対応することで、複数のスピーカー、複数のリスニングポイントに対し、マイクによる測定データから最適な補正結果を導き出し、多様な視聴環境において広いエリアのスイートスポットを実現。1人で音楽を聴いたり、複数人で映画を楽しんだりといった場合でも、変わりなく良好な視聴環境で楽しめるようにするという。

  • X3800Hは「Dirac Live」にも今後のファームウェアアップデートで対応予定

HDMI端子は、X3800Hが6入力/3出力、X2800Hが6入力/2出力。8K/60pと4K/120pに対応する入力端子については、X3800Hは6入力すべてで対応。X2800Hは3入力が対応する(出力はどちらも2系統で対応)。全端子が著作権保護技術のHDCP 2.3に対応する。HDMI出力の電源供給能力が300mAに向上しており(従来は200mA)、長尺のHDMIケーブルでも高品位かつ安定した伝送を可能にした。

どちらもHDR映像のパススルーに対応し、HDR方式はHDR10、HDR10+、HLG、Dolby Vision、Dynamic HDRをサポートする。8Kアップスケーリング機能も利用可能。ALLM、VRR、QFTといったHDMI 2.1のゲーミング機能にも対応する。また、音声面ではオブジェクトオーディオを伝送できるeARC(Enhanced ARC)に対応している。

  • X3800H/X2800HのHDMI端子の特徴

オーディオ面では、サウンドマスターによるリスニングテストによって選ばれた32bit対応のDACを採用。X3800HはプレミアムステレオDACを8基、X2800Hは高音質ステレオDACを4基搭載している。X3800HではDA変換回路を、映像回路やネットワーク回路から独立した専用基板にマウントし、周辺との相互干渉を排除するといった作り込みも行っている。

X3800H/X2800Hでは、IEEE 802.11a/b/g/n/ac(2.4/5GHz、MIMO対応)の無線LAN機能を内蔵。上述の通り、ネットワークオーディオのHEOSを搭載するほか、Amazon Alexaや、Apple AirPlay 2にも対応する。また、Bluetoothは受信/送信機能をサポートし、AVアンプで再生中の音声をBluetoothヘッドホンなどにワイヤレス伝送可能だ。新たに、無線LANやネットワーク機能、Bluetoothは個別にオン/オフもできるようになった。このほか、ワイドFM対応のFM/AMチューナーも搭載する。

消費電力はX3800Hが660W、X2800Hが500W。どちらもクリーンで安定した電源供給のために電源部を強化しており、カスタム仕様の大型EIコアトランスを搭載。プリアンプとパワーアンプに専用の巻き線から電源を供給する。電源部のブロックコンデンサーには、各機種専用にチューニングした大容量12,000uFのカスタムコンデンサーを2個使い、信号経路や電源供給ラインの最短化、基板上のパターンを太くするといった改良も行い、5ch同時再生時でも定格出力の70%以上という大出力を可能にした。

X3800Hは、HDMI入力のほかに、アナログ音声入力×5、PHONO入力(MM)×1、光デジタル入力×2、11.4chプリアウト×1、ゾーンプリアウト×1、ヘッドホン出力×1を装備する。本体サイズ/重さは434×389×167mm(幅×奥行き×高さ、アンテナを寝かせた場合)/12.5kg。

  • X3800Hの背面

X2800Hは、HDMI以外にも、アナログ音声入力×4、PHONO入力(MM)×1、光デジタル入力×2、サブウーファープリアウト×2、ゾーンプリアウト×1、ヘッドホン出力×1を備える。本体サイズ/重さは434×341×167mm(同)/9.5kg。

  • X2800Hの背面