千葉大学は9月14日、スギなどの花粉症(アレルギー鼻炎)の体質改善作用が期待される「舌下免疫療法」の不明だった作用メカニズムの一部を解明したことを発表した。
同成果は、千葉大大学院 医学研究院 耳鼻咽喉科・頭頸部腫瘍学の飯沼智久助教、同・花澤豊行教授、同・医学研究院 免疫発生学の中山俊憲前教授(現・千葉大学長)、同・平原潔教授、同・木内政宏助教らの研究チームによるもの。詳細は、アレルギーや免疫に関連する全般を扱う学術誌「The Journal of Allergy and Clinical Immunology」に掲載された。
(スギ)花粉症の患者数は年々増加しており、現在は3人に1人が花粉症と推定されるほどとなっている。花粉症は、花粉などの抗原を患者が吸入すると、鼻腔に存在する「抗原特異的記憶Th2細胞」によって産生されたタンパク質「サイトカイン」が「IgE抗体」の産生を促し、同抗体と抗原が「マスト細胞」上で結合することで「ヒスタミン」などの各種炎症性物質が放出され、症状が引き起こされることが知られている。一般的に抗ヒスタミン薬の内服やステロイド点鼻治療が行われるが、これらは対処療法であり根治治療ではない。
そうした中、低濃度の抗原を繰り返し曝露することで免疫寛容を獲得する「舌下免疫療法」は、高い効果を得られる上に、重篤な副作用もほとんど報告されておらず、治療終了後も持続することから、アレルギー性鼻炎に対する体質改善を目指せる治療法として近年、注目を集めつつある。
しかし、耳鼻咽喉科などでの案内などは増えつつあるものの、毎日治療薬を飲み続ける必要があり、その期間も3~5年ほどとされることもあり、必ずしも治療法として普及しているとはいえない状況となっている。また、臨床試験の結果では、2~3割の患者には効果がないことも確認されており、短期投与でも高い効果を発揮する新規投与法や、治療効果を予測する新規バイオマーカーの開発が求められるようになっているものの、これまで舌下免疫療法の作用メカニズム自体の詳細な解明はあまり行われてこなかったことから、そうした新薬の開発もあまり進んでいなかったという。
そうした中、研究チームは以前よりアレルギー疾患の病因となる記憶T細胞についての研究を進めてきたというが、スギ花粉に特異的に反応するそうした病原性記憶Th2細胞(Tpath2細胞)は数が少なく、研究方法に工夫が必要だったという。
そこで今回の研究では、近年開発が進んだ、細胞1つ1つの遺伝子を網羅的に解析する「シングルセル解析」を行うことで、舌下免疫療法によるT細胞の性質変化についての解析を試みることにしたという。