しかし、せっかく抱っこ歩きで眠っても、親の身体から離され、ベッドに寝かせると起きるということは子育てをした親であれば少なからず体験したことがあると思われるが、今回の研究でも約3分の1の赤ちゃんがベッドに置かれると起きてしまったという。
これを受けて、赤ちゃんの状態をより精密に調べることを目的に、心電図を用いた心拍数の変化による、自律神経の活動状態の解析を実施。その結果、寝ている状態で抱っこからベッドに寝かせた赤ちゃんのうち、寝続けていた3分の2の赤ちゃんは、ベッドに置かれた後の方がさらに深い眠りに入ることが判明。しかし、このように見た目はよく眠ったままの赤ちゃんでも、起きてしまった赤ちゃんと同様、ベッドに置かれる際には心拍数が速くなり覚醒方向に変化していたとする。
日本では、眠っている赤ちゃんをベッドに置くと起きてしまう現象からこうしたベッドに置いたときに起きてしまうことを「背中スイッチ」と呼んでいるが、今回の研究から、覚醒し始めるタイミングは親に抱っこされている状態から離れ始めるときで、スイッチは背中ではなくお腹(親との接触面)にあったことが判明。このほか、赤ちゃんは寝ているときも、親が歩く向きを変えたり、手の位置を変えたり、ベッドで寝ている赤ちゃんに触れたりするだけで、鋭敏に反応して心拍が速くなることも確認され、赤ちゃんが寝ている時も親の行動の変化を感知し、反応していることが示されたという。
研究チームでは、では、どうすれば眠っている赤ちゃんを起こさずにベッドに置けるのかを明らかにすることを目的に、赤ちゃんが起きてしまったグループと眠り続けていたグループで、親の寝かせ方に違いがなかったかの調査も実施。親が赤ちゃんの体を置く速度や、体のどの部分を一番に置くかなどは2つのグループで違いはなかったものの、ベッドに置く前の赤ちゃんが寝ていた時間の長さが異なることを確認。起きてしまった赤ちゃんは眠り始めてから平均3分間、寝続けていた赤ちゃんは平均8分間経ってからベッドに置かれていたこと、ならびに寝続けていた赤ちゃんでも、5分以内の場合は、かなり起きかけていたこともわかったという。
研究チームでは、眠ってすぐの睡眠は眠りの浅い「ステージ1睡眠」のため、ちょっとした物音などで起きてしまいやすく、赤ちゃんのステージ1睡眠は平均で8分ほどであったことから、赤ちゃんが眠り始めてから5~8分間ほど待つと、より深い睡眠の段階に入るため、赤ちゃんが起きにくくなることが考えられるとしている。
なお、今回の研究から、赤ちゃんが泣いているときには、抱っこでできるだけ一定のペースで5分間歩き、赤ちゃんが寝ついてもすぐにベッドに置くのではなく、5~8分程度待ってからにすると、赤ちゃんが起きずにさらに深く眠り続ける可能性が高いことが確認されたわけだが、研究チームでは、今回の実験には母親が参加したものの、抱っこやベビーカーでの寝かしつけは、母親以外でも効果があると考えられるとしている。
このほか研究チームでは、今回の研究などをベースとした、心拍数から赤ちゃんの気持ち(リラックスか緊張かなど)を親が把握できるアプリを開発中としている。