9月16日に販売が始まるiPhone 14シリーズ、SNSでは上位のiPhone 14 Proシリーズの人気が高いように見受けられ、納期も4~5週間前後にまで延びています。実機を使ってみると、カメラ性能は「歩きながらの撮影でもぶれない動画性能の向上」「ナイトモードに頼らずにサッと撮れる暗所写真撮影の向上」「望遠撮影性能の向上」など明確な進化が体感でき、前面カメラの部分を巧みに利用する「Dynamic Island」(ダイナミックアイランド)はユニークなうえに便利で、常時表示ディスプレイは重要な通知を見逃さずに済み重宝しました。iPhone 14 Pro、期待の高さに応えると実感しました。

  • 外観の変化は最小限ながら、Dynamic Islandや常時表示ディスプレイなどこれまでにない改良が施されたiPhone 14 Proシリーズ。従来モデルからの買い替えで「変わった!」と感じる部分が多く、満足度の高い1台となりそうだ

動画撮影時の揺れを補正する「アクションモード」は使える!

まずはカメラ機能です。iPhone 14 Proは、3つのカメラ(超広角、広角、望遠)+LiDARセンサーという構成は変わりませんが、以下のような強化が図られています。

  • 動画モードに、撮影時の大きく激しい揺れを補正して見やすい映像にする「アクションモード」を追加
  • メインカメラ(広角カメラ)のクアッドピクセルセンサー化とセンサーの大型化で、薄暗いシーンや室内でもナイトモードに頼らずサッと撮影できるように。高画質化も
  • 4800万画素相当の周辺部を切り取って中央部の情報だけを使って撮影することで、2倍の望遠撮影がワンタッチで可能に
  • デジタルズームの画質をこっそり向上
  • ProRAWモードで広角カメラを使った撮影時のみ、センサーが持つ4800万画素での高精細出力が可能
  • 超広角カメラ、広角カメラ(メインカメラ)、望遠カメラの3カメラ+LiDARセンサーという構成を継承するが、中身は大きく変わっている

iPhone 14 Proで搭載された新機能の1つが、動画の「アクションモード」。アクションカメラ(アクションカム)のように、撮影時の大きく激しい揺れを電子的に補正して見やすい映像にしてくれます。

電子式の補正機能は、映像の左右がゆがんで不自然に見える場合もありますが、iPhone 14 Proのアクションモードの動画はジンバル(スタビライザー)を使ったかのようななめらかで自然な補正となり、かなり驚きました。歩きながらの撮影でも、足が地面に着いた際に見られる上下のブルッとした映像の乱れもうまく補正しているようで、かなり見やすい映像となりました。アクションカムのように常に水平を維持する機能はありませんが、自然な傾きを伴う動画となります。

【動画】横に歩きながらお地蔵様を撮影。歩きながらの撮影で避けられない上下の振動もうまく抑えられ、映画チックな表現もできそうだ

【動画】今後は階段を上りながらの撮影。途中で息が切れて集中力が薄れたが、それでもスタビライザーを使ったようななめらかな仕上がりになった

アクションモードは暗いシーンでは光量不足で真っ暗になってしまうため、基本的に日中しか使えないのが残念なところですが、スタビライザーいらずでなめらかな動画が撮れるのは魅力。配信やSNS、Vlogで動画を中心に撮影する人にとっては、買い替えの理由になる機能となりそうです。

ナイトモードを使わずに明るく撮れるシーンが増えた!

今回、特に注目したいのが、iPhone初のクアッドピクセルセンサーの採用による改良です。4800万画素に高めたセンサーの情報を単純に高画素のまま出力するわけではなく、4つのピクセルの情報を1画素に合算して1200万画素相当とすることで、明るい屋外では精細感を高めた写真が撮影でき、薄暗いシーンではより明るく自然に撮影できる仕組みです。この改良は、iPhone 14シリーズで搭載された最新の画像合成技術「Photonic Engine」が大きく寄与しているとみられます。

実際に試したところ、ナイトモードに頼らずに通常モードでも十分な明るさで撮れるシーンが増えたと感じました。ナイトモードを使った方がより明るく撮れるのは確かなのですが、数秒iPhoneをホールドしなければならないのは面倒なうえ機動性に欠けます。通常モードでパシャパシャとアクティブに撮影できるようになり、iPhoneの活躍の場が広がりそうです。

  • 照明の少ない路地。ナイトモードを提案されたが切って通常モードで撮影したところ、一瞬のシャッターで見た目よりもいくぶん明るく撮れた。感度はISO12500まで上がったが、精細感は上々

  • やや薄暗い室内で猫を撮影。毛並みがしっかりと表現されている

新たに2倍の望遠撮影が可能に(画質はやや劣化)

スマホでニーズが高まっている望遠撮影も改良が加えられています。今回、広角カメラ(35mm判換算で24mm相当)の中央部の1200万画素相当をクロップ(切り抜く)して2倍相当(35mm判換算で48mm相当)の望遠撮影が可能になるモードを追加し、「0.5倍」「1倍」「2倍」「3倍」の4つの倍率がワンタッチで切り替えられるようになりました。

  • 新たに「2倍」のモードが加わり、ボタン一発で48mm相当の標準画角にサッと切り替えられるようになった

iPhone 13 Proを使ってきた筆者は、これまで「3倍(35mm判換算で77mm相当)だとちょっと望遠すぎるな…」というシーンによく遭遇しました。特に強く実感するのが、ラーメンを撮影する際。3倍だと丼がすべて入りきらず、デジタルズームを用いて2倍前後にしていました。iPhone 14 Proでは、ボタン一発でズバッと2倍の望遠に設定でき、ラーメンがのびないうちにサッと撮影が済ませられるようになります。これは便利だと感じました。

  • 2倍にして撮影したラーメン。手を無理に上げなくても丼全体を収められ、ラーメンファンにはうれしい存在となりそうだ

ただ、意外な事実も。広角カメラの4800万画素センサーの中央部を切り抜くクロップなので、デジタルズームとは違って画質は基本的に劣化しない…と思っていたのですが、実はそうではないようです。2倍撮影時、細かく見ると画像処理による画質劣化が見受けられ、純粋な光学3倍の望遠カメラよりも解像感はいくぶん落ちていました。

  • 1倍(広角カメラ利用)

  • 2倍(広角カメラ利用)

  • 3倍(望遠カメラ利用)

  • 酒樽のラベルの文字を見ると、素直で精細な描写の3倍の写真と比べ、2倍の写真は文字の周囲に縁取りが現れているのが分かる。2倍モードは、解像感の低さをカバーするために多少の輪郭強調処理が施されているようだ

おそらく、同じ色の画素が4つまとまって配置されているクアッドピクセルセンサーの特性上、中央部をクロップすると一般的な1200万画素センサーよりも解像感が足りなくなるため、画像処理をかけて精細感を高めているのでは…と推測します。とはいえ、解像感が気になるのは文字などコントラストの高い被写体がある場合に限られ、一般的な風景などでは解像感の低下は気になりません。実用性の問題はないといえます。

  • クアッドピクセルセンサーの仕組み。4つの画素がひとまとめになって構成されている

  • 2倍モードで撮影した写真。多くのシーンでは、解像感の低下は気にならないと感じる

デジタルズームはこっそり画質向上、実用性が増した

逆に、望遠撮影で意外な進化を確認できた部分もありました。デジタルズームです。iPhone 14 ProはiPhone 13 Proと同じく、写真撮影時に最大15倍のデジタルズーム(Exif情報では403mm相当)が可能ですが、画質は明確に向上していました。両者で撮り比べると、画像処理で細かい部分がつぶれていたiPhone 13 Proに対し、iPhone 14 Proは細かい部分の精細感や表現が改良されたことが確認できました。センサーの改良やA16 Bionicの性能向上、Photonic Engineによるものだと思われますが、運動会などのイベントもスマートフォンのみで撮影に臨むファミリーが増えたことを考えると、スマホでニーズの高まる望遠撮影の画質が高まったことは評価したいと思います。

  • iPhone 14 Proで撮影

  • iPhone 13 Proで撮影

  • 15倍のデジタルズームで撮影。iPhone 13 Proは文字の部分がにじんだような描写になっているが、iPhone 14 Proはスッキリと精細な仕上がりになっている

  • iPhone 14 Proで撮影

  • iPhone 13 Proで撮影

  • 同じく15倍のデジタルズームで遠景の建物を撮影。中央の「八幡宮」という看板の文字を見ると、iPhone 14 Proはしっかり解像しているのが分かる

4800万画素の画像が出力できるようになったProRAW

iPhone 14 Proでは広角カメラを使ってProRAWモードで撮影した時に限り、4800万画素の画像を出力できるようになりました。クアッドピクセルセンサー特有の画素加算をしていないため、夜間はかなりノイズの多い仕上がりになりますが、Lightroomなどの現像ソフトを使ってノイズ低減などの補正をすれば理想通りの仕上げにすることも可能。iPhone 14 Proは、写真愛好家の作品作りに使うカメラにもなったといえそうです。

  • ProRAWモードで撮影した夜景。画像サイズは8064×6048ドットと、4800万画素そのままのサイズを持つ。ノイズは多めだが画像はシャープで、レタッチして磨き上げる素材としては上々だ

楽しさと実用性を兼ね備える「Dynamic Island」

iPhone 14 Proで話題になっているのが、前面カメラが収まる部分の切り欠きを巧みに利用してスマートな表示や操作を可能にする新機能「Dynamic Island」(ダイナミックアイランド)です。いろいろなアプリで試しましたが実用性の高さと楽しさを兼ね備えており、今後対応アプリが増えればより魅力的な存在になると感じました。

前面カメラの部分、通常は楕円形のように黒く切り取られていますが、音楽の再生時やボイスメモの録音時にアプリをバックグラウンドでの動作にすると、この部分に動作中のアプリの内容が表示されます。表示部を長押しすると、表示を大型化して操作できるようになる仕掛けもあります。音楽アプリとタイマーアプリなど2つのアプリを同時に起動している場合は、2つを同時に表示するようになっています。

  • Dynamic Islandが機能しているところ。音楽アプリの再生時は、Dynamic Islandを長押しすると拡大して操作部が現れる。電話の着信時はDynamic Islandの部分に表示される。いずれもレイアウトが巧みで、黒く切り取られている部分があることを一切感じさせない

特に巧みなのが、まるで生き物のようにスムーズにアニメーションすること。Face IDの認証の際は、この部分がスッと下にふくらんでFace IDの認証アニメーションが出るなど、遊び心にあふれています。バッテリー容量が20%まで少なくなると、中央の警告ウインドウの代わりにDynamic Islandの部分に容量の警告表示が現れるなど、スマートさも兼ね備えています(ゲームなど横画面のアプリを実行していた場合は、従来通りのウインドウが現れる)。

Dynamic Islandは標準アプリのほか、サードパーティ製アプリも対応を始めており、今後対応アプリが充実するのは間違いありません。今後、iPhoneの顔となるかもしれません。

大事な通知を見逃しにくくなる常時表示ディスプレイ

便利だと感じたのが、iPhone 14 Proに備わる常時表示ディスプレイです。電源ボタンを押してスリープさせても、画面の明るさをかなり抑えつつも日時や通知が表示され、常に確認できるようになります。すでにApple Watchで実現している機能のiPhone版といえますが、大事な通知やメッセージを見逃しにくくなり、ありがたい機能だと感じました。

  • 常時表示ディスプレイになった画面(右)。通常の明るさの画面と比べればだいぶ暗いが、時刻や通知の内容はしっかり確認できる

今回は、iPhone 14 Proの改良点を駆け足でチェックしていきましたが、ノーマルのiPhone 14にはない機能や装備がとても魅力的であることを実感できました。多少重く、価格も高いのが欠点ですが、日々少なくない時間をともにする相棒としてiPhone 14 Proシリーズは理想的な存在だと感じます。

  • iPhone 13 Pro(右)から明確な進化を感じさせたiPhone 14 Pro(左)。iPhone 13シリーズからでも乗り換える価値は十二分にあるが、唯一iPhone 13 Proで人気だったシエラブルーのカラーがなくなったのが残念