また、下地基板表面を「Al援用クリーニング」で清浄化することで、表面酸化膜由来の酸素不純物がN極性を金属極性に反転させてしまう問題を解決したともしている。同技術は、高真空チャンバー内で極薄のAlを成膜することで、表面酸化膜を還元して揮発させる手法だという。
さらに、高真空チャンバー内において、続けて分子線エピタキシー法による結晶成長を行うことで、N極性AlNおよびGaN on AlNの作製に成功。透過電子顕微鏡による原子配列観察から、下地基板の極性を引き継いだ良質なN極性AlNを成膜できていることが実証されたとする。一方、クリーニングが施されなかった試料ではN極性から金属極性に反転する様子が捉えられたことから、クリーニングの作用メカニズムが原子スケールの分解能で解明されたとする。
実際に作製されたN極性GaN on AlN試料では、GaN/Al0.9Ga0.1Nからなる2次元電子ガス蓄積層をAlN下地基板上に結晶成長させ、3.6×1013cm-2の電子密度が観測されたという。この値は、理論計算の4.2×1013cm-2とほぼ一致することから、電気分極差に由来する2次元電子ガスであることが実証されたと研究チームでは説明している。
なお、今回開発された技術の6G向け高速パワーデバイスへの応用は、次世代高速無線通信を低消費電力かつ安価に提供することにつながると研究チームではコメントしているほか、今回実証された成果については、パワーエレクトロニクス分野にとどまらず、発光ダイオードなどの光エレクトロニクスでも利用できる普遍的な技術だとしており、GaNに代表される窒化物半導体の社会実装を大きく前進させる重要なマイルストーンとなるとしている。