解析の結果、閃光は温度8000度の色温度で輝き、地球から観測した見かけの明るさは最も明るいときでおよそ4.7等であったという。仮に、この閃光を発生地点直下100km下方で観察した場合、その明るさは地球から眺める太陽の10倍以上に達していたと研究チームでは説明する。

また、閃光は約5.5秒継続しており、これは過去の閃光(1~2秒)と比べて大幅に長く、多くの運動エネルギーが放出されたと考えられ、その総量はTNT火薬2メガトン(200万トン)相当と推定されたとする。これは、2013年のチェリャビンスク隕石の約4倍、1908年の「ツングースカ大爆発」を引き起こした衝突天体の推定値に匹敵する規模だとする。

総運動エネルギーを基に見積もられた総質量はおよそ4000トン、直径は16~32mほど。太陽系外縁部から飛来し、秒速およそ60kmの相対速度で木星大気圏に突入したと見られ、重力の強い木星であっても、これだけの天体による衝突の瞬間が観測されたのは、1994年のシューメーカー・レヴィ第9彗星以来のことになるという。

  • 木星に衝突した天体の想像図

    木星に衝突した天体の想像図。PONCOTSの観測から推定された天体のおおよそのサイズは16~32m。下は、サイズの比較のためのジェット旅客機「ボーイング737-800」(全長およそ40m) (C)有松亘/AONEKOYA (出所:京大プレスリリースPDF)

さらに、2010年以降の世界中のアマチュア天文家による木星の動画観測の総時間と閃光現象の観測回数などから、木星におけるメガトン級の天体衝突頻度は、地球の100~1000倍となる、年に1.3回ほどと見積もられたとするほか、その推定発生頻度と、木星の衛星表面のクレーター密度から推定される衝突頻度と比較すると、太陽系外縁部には直径数10mのサイズの小天体が大量に存在し、それらが頻繁に木星に衝突していることが示唆されるという。

加えて、今回観測された閃光は、地球で観測される典型的な火球の発光傾向とは大きく異なり、チェリャビンスク隕石の巨大閃光や、ツングースカ大爆発の再現シミュレーションなどで示唆される閃光の発光傾向とよく似ているとのことで、今回の衝突閃光について研究チームでは、大気のある惑星共通の、比較的巨大な衝突で発生する閃光の一般的な特性を捉えた可能性があるとしている。

なお、木星にどの程度の頻度で小天体が衝突しているのかについては、今後も観測を継続してさまざまな規模の閃光を検出することで、より正確に理解できるようになることが期待されると研究チームでは説明しているほか、木星以外の外惑星でも、頻度や規模の違いはあれ、同様に小天体の衝突閃光が発生していると推定されることから、現在こうした外惑星への衝突閃光のモニタ観測も検討しており、木星のモニタ観測の結果と総合することで、外部太陽系に潜む小天体の空間分布を解明することが期待されるとしている。

3波長での動画データ