永瀬拓矢王座へ豊島将之九段が挑戦する、第70期王座戦五番勝負(主催:日本経済新聞社、日本将棋連盟)の第2局が9月13日(火)に愛知県名古屋市の「名古屋マリオットアソシアホテル」で行われました。

■異例の超ハイスピード進行

本局は豊島九段の先手で始まります。戦型は角換わりとなりましたが、お互いが研究手順なのか、猛烈なスピードで進行し、なんと開始から2時間ちょっとで90手も指されました。局面はすでに終盤戦へ入ろうとしていますが、それでも形勢の均衡が取れているという評判です。結果として93手目の局面で昼食休憩に入りました。

■一転して長考合戦に

永瀬王座は昼食休憩を挟んで77分の長考で、香を補充します。感想戦ではこの手に代えて自玉を補強する手のほうがよかったかとの感想がありました。この局面で、チャンスと見た豊島九段が大長考に沈みました。午前中に93手も動いた超ハイペースが嘘のように局面は微動だにしません。次の手が指されたのは16時32分。この手の考慮時間は実に2時間52分。王座戦は持ち時間5時間ですから、一手に半分以上の時間が投資されたことになります。

■千日手をめぐる攻防

先述の長考で、豊島九段は歩頭桂の手筋を選択。後手玉の形を崩した後に金打ちでベッタリと迫ります。ここでお互いに金を打ち合う千日手の可能性が浮上します。永瀬王座からすれば千日手は歓迎、先手の豊島九段からすれば良くできそうな局面だけになんとか打開したいところ。

豊島九段はもう1枚桂を捨ててさらに迫ります。これにより千日手を打開して後手玉を詰めろで追い込む手段が生まれましたが、その順に踏み込むと、渡した2枚の桂を使って逆に先手玉が詰まされてしまうことがわかりました。となってはこれ以上の踏み込みは困難。豊島九段も千日手を受け入れ、18時43分に118手で千日手となりました。

先後を入れ替えた指し直し局はまたも角換わりに。後手の豊島九段が棒銀を採用しました。持ち時間は1時間の豊島九段に対し、永瀬王座は2時間以上もあります。局面は互角と言えども、この差は小さくありません。

■見事な切り返し

本局は開戦直後に派手な応酬が繰り広げられ、この結果が勝敗を決しました。

まずは後手の豊島九段が飛車金両取りに角を打ちます。対する永瀬王座は飛車を逃げながらの銀取りで切り返しますが、最終的に飛車が捕まってしまいます。先手陣は居玉で、飛車打ちに弱い形。永瀬王座のピンチに見えます。

ここで永瀬王座は飛車を逃げず、逆に飛車取りに角を放ちました。この手が勝負手。豊島九段が飛車を逃げれば1手で角が死んでしまう位置なので意外ですが、そうすれば角こそ犠牲になるものの、捕まっていた飛車が生還して大活躍できるので角損でも採算が取れるという狙いです。

この手への対応を豊島九段が誤ったため、形勢は一気に永瀬王座に傾きました。ピンチを脱した永瀬王座は、自玉を鉄壁にしたあとに満身の寄り身で押しつぶし、105手で永瀬王座の勝ちとなりました。

五番勝負のスコアは1勝1敗のタイとなり、どちらへ流れが向くか全くわかりません。第3局は9月27日(火)に京都府京都市の「ウェスティン都ホテル京都」で行われます。

相崎修司(将棋情報局)

熱戦を制し戦績をタイに戻した永瀬王座(提供:日本将棋連盟)
熱戦を制し戦績をタイに戻した永瀬王座(提供:日本将棋連盟)