ダイニチ工業(以下、ダイニチ)は石油ファンヒーターで有名な老舗メーカー。ここ10年ほどはパワフルで静かな加湿器でも人気です。
そんなダイニチが10月1日から空気清浄機「ハイブリッド式空気清浄機 CL-HB922」を発売します。加えて2023年1月末には「コーヒー豆焙煎機 MR-F60A」も発売予定。どちらもダイニチらしいこだわりのある製品ということで、プレス向けの新製品発表会で実機をチェックしてきました。
15年ぶりの空気清浄機はハイブリッド式を採用
ダイニチの加湿器は、メーカー販売金額において9年連続で日本トップのシェアを続ける人気製品。その理由は、圧倒的な加湿パワーと静音性です。
最上位モデルのLXタイプは、加湿量が最大1,200mL/hと、家庭用とは思えない業務レベルのパワー。なのに運転音は標準モードで34~13dB、ターボモードでも最大40dBとかなり静かなんです。そのうえ、LXタイプはお手入れが必要なパーツの一部を使い捨て式にすることによって、メンテナンス性の高さにも定評があります。
ダイニチが空気清浄機を発売するのは15年ぶりとなりますが、CL-HB922の開発にあたっては、加湿器で培った「パワーと静音性、お手入れの簡単さ」を重視したとのこと。そこで、空気清浄方式にはフィルター式と電気集じん式を組み合わせたハイブリッド式としました。
フィルター式とは、名前の通りフィルターの細かな目に空気を通し、汚れをからめ取って空気をキレイに方式です。フィルターの目が細かいほど空気中の汚れを除去しやすい反面、フィルター寿命が短くなり、細かな隙間に空気を通すために強力なファンが必要。そして、強力なファンは駆動音が大きいというデメリットがあります。
CL-HB922では、一般的なHEPAフィルターより少し目の粗い「静電NEOHフィルター」を採用。ただし空気清浄能力を落とさないために、空気がフィルターを通る前段階の位置に電気集じん式プラズマユニットを配置しています。電気集じん式は、帯電させた金属板に汚れを吸着する方式です。
静電NEOHフィルターと電気集じん式プラズマユニットという2種類の空気清浄機能を併用することによって、浮遊ウイルスのサイズよりも小さい0.03マイクロメートルの浮遊微粒子も捕集します。
フィルターの目を荒くしたことで、お手入れ性と静音性が高まります。CL-HB922のフィルターが掃除なしでも長持ちし、静音性も優秀。「弱」運転時は近くでギリギリ聞き取れるくらいの運転音(約15dB)でした。
標準の「中」運転時でも、ささやき声(約30dB)より小さな28dBほどの運転音です。また、風を通しやすいフィルターのため風量もパワフル。本体サイズはコンパクトなのに、風量は最大8.6立方メートル、適用床面積は38畳までと、かなり強力です。
お手入れの手間を最小限にできる機能的なフィルター類
空気清浄機は定期的なケアが必要です。最近はお手入れ不要の内部フィルターをうたう製品も増えていますが、大きなホコリなどを吸着する最前面のプレフィルターは相変わらず定期的な掃除が必要。
一般的なプレフィルターは2週間から1カ月に1回、掃除機でホコリを吸い取るなどのメンテナンスが必要ですが、CL-HB922はプレフィルターを4カ月ごとにサッと捨てるだけ。ダイニチによると、一般的なプレフィルターよりも厚みがあってフカフカの素材を使用しているため、4カ月に1回の交換でも目詰まりしないそうです。プレフィルターの希望小売価格は3枚入りで2,200円と比較的リーズナブルなのも魅力的ですね。
一方、内部の静電NEOHフィルターは、2年に1回の交換。静電フィルターは希望小売価格が4,950円、活性炭脱臭フィルターは2,750円。2枚あわせても2年で8,000円以下というのは、高機能な空気清浄機のフィルターとしてはかなりリーズナブルな印象です。プラズマユニットは2年に1回、ぬるま湯につけ置き洗いすればよく、ランニングコストはかかりません。
近年、日本メーカー製の空気清浄機のプレミアムモデルは、ほとんどが加湿機能を内蔵していますが、CL-HB922はあえて空気清浄機能だけとしました。これは複合機能にすることによって、
・本体サイズが大きくなる
・内部パーツが増えて風路のジャマをして、駆動音が大きくなる
・内部パーツが複雑になり、メンテナンスが煩雑化
・空気清浄機も加湿器も単機能のほうがそれぞれの性能を追求しやすい
という理由から、あえて単機能に絞り込んだということです。
コーヒー豆焙煎機 - プロ向けを手がけ続けてきたダイニチの新製品とは?
空気清浄機のCL-HB922とあわせて、家庭用のコーヒー豆焙煎機「MR-F60A」も発表されました。この10年ほど、家庭でも使えるコンパクトなコーヒー豆焙煎機の認知度も上がってきましたが、ダイニチは1997年から家庭用電源で利用できる焙煎機能付きコーヒーメーカーを、2000年からはコーヒー豆焙煎機「カフェプロ」シリーズを販売しています。いわば、家庭でも利用できる電気式コーヒー焙煎機のパイオニアです。
カフェプロシリーズは喫茶店などでも導入されることが多く、半業務用のような扱いでしたが、新製品のMR-F60Aは純粋な家庭用。デザインも従来の無骨な箱型からモダンな円柱型に一新されています。
焙煎方法はシンプルで、コンテナ内の豆をかき混ぜながら、スパイラル状に吹き上がる熱風で豆をムラなく加熱するというもの。最近は似たような構造をした低価格の熱風焙煎機がありますが、違いはなんといってもセンサーの有無です。
低価格の家庭用はプログラムに従って一定時間加熱する仕組み。加熱時間の長さで「浅煎り」「深煎り」の焙煎度を分けています。しかし、豆の焙煎は非常に繊細なので、外部の温度変化などで焙煎温度が変化してしまうことがあります。ダイニチいわく、この少しの温度変化が、焙煎したコーヒー豆の味に大きく響くと。
そこで、CL-HB922はコンテナ内に温度センサーを内蔵。センサーで内部温度をチェックしながら狙った温度に調整します。より正確な温度を保つため、センサーを本体内の2カ所に配置しました。複数のセンサーで温度の違いをチェックすることで、環境温度や豆量の変化による温度のズレを正確に補正し、一年を通して安定した美味しさの豆を焙煎できるというわけです。
人気の加湿器「LX」シリーズもコッソリ便利に
今回の発表会では、ダイニチの大人気加湿器「LX」シリーズ向けとなる新しい別売りアクセサリーも並んでいました。
LXシリーズは、パワフルな加湿性能と高い静音性のほか、水を補給するトレイ内部のパーツを使い捨てとして「簡単取替えトレイカバー」の存在も特徴的。ただし従来は、水を吸う気化フィルターのお手入れは自分でする必要がありました。気化フィルターは2週間に1回のペースで水洗いするほか、1カ月ごとのクエン酸洗浄が推奨されています。
新しいアクセサリーは、ハイブリッド式加湿器LXタイプ用の気化フィルター「カンタン取替えフィルター」です。この気化フィルターを使うと、3カ月に1回のペースで交換という簡単お手入れに(古いフィルターは捨てます)。価格は2個セットで希望小売価格3,300円です。
加湿器をよく使うボリュームシーズンは、乾燥しやすい秋から冬の半年間。一年3,300円でお手入れほぼ不要と思えば、なかなかコストパフォーマンスではないでしょうか? 加湿器は、これから乾燥する季節になってくると使い始めるユーザーが増えます。新しいシーズンに新しい気化フィルターで清潔に使えるのもうれしいところですね。
ダイニチ空気清浄機は加湿器に続くヒット製品になるか?
今回、ダイニチから空気清浄機、コーヒー豆焙煎機、別売り気化フィルターという3つの新製品が発表され、いずれもダイニチらしい特徴的な製品でした。とくに、空気清浄機はハイブリッド方式を導入することで、風量と静音性、お手入れのしやすさを叶えるという面白い製品です。自宅で使ってみないと実際の使い勝手はわかりませんが、なかなかワクワクさせられる製品だと感じました。
ダイニチは石油ファンヒーターや加湿器といったように、これまでは冬の家電に強いという印象でした。空気清浄機とコーヒー焙煎機の登場によって通年勝負できるメーカーとして台頭するのか、今後に注目したいと思います。