伊藤園は9月9日、『第7回 伊藤園健康フォーラム』を開催。テーマを「~今日からはじめるフレイル予防~」とし、専門家を招いて40代からフレイル対策をするべき理由について説明した。フレイル(健常から要介護への移行段階)に陥るリスクを回避するには? そのとき”お茶”は、どのように貢献するのだろうか?
フレイルには3つの特徴
これまで伊藤園健康フォーラムでは、健康課題に対してお茶が果たす役割を考えてきた。今回は健康寿命を延伸する新たな視点として、フレイルに注目する。冒頭、伊藤園中央研究所の衣笠仁所長は「歳をとったから身体の機能が低下するのは当たり前、と対応を怠っていると、やがて普段の生活にも悪影響をおよぼします。人生100年時代、自分らしく生きるためにフレイル予防は重要なことだと考えています」と挨拶した。
ここで基調講演として、筑波大学 人間系の山田実教授が登壇。同氏によれば、フレイルには可逆性があり、たとえフレイルになっても元気な状態に戻れる可能性もあるという。
そしてフレイルには、身体的な機能が低下する『身体的フレイル』、認知機能、精神機能が衰える『精神的フレイル』、閉じこもりに代表される『社会的フレイル』があると説明。
身体的フレイルの予防対策は、壮年期(40~50代)から始められるという。「明らかな加齢変化が始まるのが壮年期です。そのため、壮年期に運動を習慣づけて筋肉の量を蓄えておくが大事です」と山田教授。
山田教授は、フレイル対策に必要な「運動」「食事」「社会参加」をオート3輪にたとえる。健康の推進のため3つの車輪をまわすことが大切で、ひとつが回れば他の車輪も回りだす、と山田教授。たとえば社会参加が活発になれば、自然と運動もはじめ、栄養もとれるようになっていく、という考え方を示した。
続いて登壇した医薬基盤・健康・栄養研究所の南里妃名子氏は、食事の観点から行うフレイル予防について説明する。
南里氏によれば(男女ともに)タンパク質の摂取量が増えるほどフレイルの該当率が低くなるという。しかし日本人のタンパク質摂取量は不足しがちだ。国民健康栄養調査の結果から分析すると、30~64歳の男女は高齢者以上にタンパク質が足りていないとのこと。「このようなタンパク質不足の食生活が続くと、高齢期においてフレイルのリスクが増加します」(南里氏)。
このほか、抗酸化物質がフレイルに有効であることが分かってきた。そのため酸化ストレスの蓄積を防ぐことが重要であり、食事から抗酸化物質を摂取するには野菜、果物、緑茶が良いと南里氏。「どの年代においても、緑茶はよく飲まれています。日本人の日常生活に身近なこの飲料には、ポリフェノールの一種である『カテキン』が含まれています。すでに肥満、生活習慣病、循環器疾患、がん、認知機能、抑うつ、口腔疾患について有効であると報告があります」としたうえで、さらに「これまでフレイルと緑茶についての報告は少なく、まだ効果については詳細が分かっていないところもありますが、私たちの研究では緑茶を飲む人のほうがフレイルの該当率は低くなるとの結果が得られています」と紹介した。
最後にフレイル予防のために、3食しっかりとること、1日2回以上は主食・主菜・副菜を組み合わせて食べること、色いろな食品を食べることが大事であるとまとめた。1日20品目を目安にすると良いそうだ。
緑茶が貢献できること
続くパネルディスカッションで、伊藤園の衣笠所長は「早めの段階からフレイル予防を意識することが大切だと再認識しました」とし、山田教授も「もちろん60歳、70歳、80歳以上から身体を鍛えても効果はありますが、壮年期からの対策が有効です」とあらためて強調する。南里氏は、生活習慣病とフレイルのリスクの関連性について触れたうえで「30代、40代から食生活を見直しましょう」と呼びかける。
南里氏は「私たちはデータから、緑茶が持つ抗酸化物質が何らかの良い結果をもたらしているのだろうと推測しています。緑茶を飲むような機会、つまり誰かとコミュニケーションをとっている、社会的な参加をしていることが良い効果につながっていることも考えられますが、コーヒーについては、まだ同様のデータは得られていません」と説明。
お茶が媒介する人と人のコミュニケーションの重要性については、山田教授も「コロナ禍になり、友人とお茶をするために連絡をする機会が減った、そのことで社会的な孤立をさらに深めてしまった、という例がいくつもありました」。これに対し、衣笠所長は「お茶はコミュニケーションツールのひとつにもなります。お茶を活用することで、皆さんのフレイル予防に貢献できたら幸いです」と話していた。