セガは8月24日、プログラミング学習ができる教材「ぷよぷよプログラミング」を用いた「ぷよぷよプログラミング講座」をセガサミーグループ本社で実施した。「ぷよぷよ」プロプレイヤーでシステムエンジニアの経験もある「ぴぽにあ」選手を講師に、小中学生が「ぷよぷよプログラミング」でプログラミングを体験した。
ゲーム事業を軸に教育支援にも注力するセガ
1991年に誕生した「ぷよぷよ」は、セガの国民的落ち物アクションパズルゲーム。対戦形式を導入したゲーム性などから爆発的なヒットを記録し、アクションパズルゲームの定番として、さまざまなゲーム機、プラットフォームで今なお愛されている。
「ぷよぷよプログラミング」は、2020年度から小・中学校で順次必修となったプログラミング教育の導入として、そんな「ぷよぷよ」のソースコードを写経のように書き写すことで、本物志向のプログラミングを体験できる教材だ。
ゲーム事業や「ぷよぷよ」の eスポーツ展開を通じて培ったノウハウや資産を活用し、各地の学校などで「ぷよぷよプログラミング」を用いたプログラミング教育を支援する取り組みを進めているセガ。
品川区の主催、セガの企画・運営で開催された今回の「ぷよぷよプログラミング講座」には「ぷよぷよ」シリーズ総合プロデューサー・細山田水紀氏も登壇。品川区に在住・在学する小・中学生を対象に、普段は入ることができないセガサミーグループ本社に会場を設けた。
講師を務めたのは「ぷよぷよ」シリーズのジャパン・eスポーツ・プロライセンスを保有するぴぽにあ選手。システムエンジニアを経て、 2020年から「ぷよぷよ」プロプレイヤーとしての活動に専念し、セガ公式大会で現役プロ選手38人中最多の記録となる優勝6回、入賞15回を達成している。
本講座は休憩を挟んで前半/後半、約50分ずつの2部に分かれ、前半ではまず「ぷよぷよ」のルール確認とゲーム内容について説明された。
「ぷよぷよ」は6×12マスのゲームフィールドに2つ1組の「ぷよ」を組み合わせていき、同色の「ぷよ」が4つ以上揃うと消えるというゲーム。上から下へ落ちる「ぷよぷよ」の原理を踏まえ、色の配置などを考えながら、連鎖を起こすのが醍醐味だ。
ぴぽにあ選手曰く「いろんなパターンを覚えて上達すると、大連鎖を組めるようになります」とのことで、こうした説明をしつつ、さっそく参加者たちの前で13連鎖のスーパープレイを披露。会場の拍手を誘っていた。
正確さが命のコード入力に挑戦
「ぷよぷよ」のゲームを構成する基本的な要素を理解したところで、参加者たちは実際にプログラミングすることとなった。
プログラミング画面は各ファイルを確認できる左カラム、コードを入力する中央カラム、開発中成果物を確認するためのゲーム画面となる右カラムの3つに分かれた構成。左段のファイル構成部分からファイルを選択し、中央に表示させたソースコードに指定された文字を書き込んで、反映された動作を確認するというのが基本的な流れとなっている。
入力するコードには馴染みの薄い半角記号などが含まれることも多いようだが、プログラミングでは英字のスペル間違いのほか、大文字・小文字の違いに注意し、半角スペースなども正確に入力することが肝心なようだ。
「間違えることは普通のことなので、頑張ってどんどん入力してもらいたいなと思います。人間と違ってコンピューターは言い間違いが一切通用しません。言い間違いの通りに動いて、何を言われたのかが伝わらないと、混乱してバグが発生してしまいます」
ひと通り「ぷよぷよ」が完成すると、プロから連鎖のコツが紹介された。
「同じ色の『ぷよ』が4つ揃うと消えるので、『ぷよ』が3つ連結した状態をたくさん作っておくと連鎖が発生しやすいです。『ぷよ』を縦に3つ連結させていく“階段積み”が初心者の方にはおすすめの形ですね。ほしい色の『ぷよ』が来るのを待つことも大事で、要らない『ぷよ』があっても左右にとりあえず積んでいって、連鎖につなげていけるということが見えてくると、より上級者かなと思います」
プロの対戦で使われるのは基本的に15連鎖くらいまでだそうだが、プロのソロプレイでは17連鎖も不可能ではないという。
eスポーツ選手もフィジカルが大事
後半は前半に自分たちでつくった「ぷよぷよ」を改造。ゲームフィールドの背景に好きな画像を反映させるなど、参加者それぞれが好みのアレンジやカスタムをしていくことになった。
HTMLとJavaScriptの入力ルールなどを理解すれば、それに従って好きな数値などを入力するだけで、ゲームフィールドの大きさや「ぷよ」の落下スピード、「ぷよ」の種類を動物や果物へ変えることも簡単にできるようだ。
「いろんな感想があるかなと思うんですけど、学校でもプログラミングの授業が入ってきています。どうしても硬い文法とか学ぶものが多く、最初はおもしろくないかもしれないんですけど、こういうモノづくりができる楽しさを少しでも経験しておけば、今後の授業も楽しくなるんじゃないかなと思います」
最終パートではプロ選手のリアルな生活についても紹介された。大会に出場する以外にも大会の実況解説、ゲーム上達のためのコーチング、さまざまなイベントへの参加、個人でのYouTube動画配信なども大事な仕事だという。
「私の場合、SEとして2年前まで働いていた経験を生かし、こうしたプログラミング講座などもやっています。大会やイベントが特にない日は、頭が回りづらい午前中を前日の対戦の見直しなど研究の時間にあてています。昼間は動画制作、メールなどの連絡、会議などをやっていて、対戦相手が多い夜は他のプレイヤーと対戦しています」
試合を勝ち進むと12時間ほど拘束される大会もあり、決勝前に疲労から集中力が切れてしまうということもあるらしく、ぴぽにあ選手は筋トレやランニングなどのフィジカルトレーニングもしているそうだ。
その後、希望参加者とぴぽにあ選手の対戦コーナーの時間も設けられた。親しみやすいキャラクター「ぷよぷよ」をきっかけに、プログラミングやゲーム開発、職業としての eスポーツ選手に触れる機会となり、子どもたちの貴重な夏休み学習となったようだ。