西山朋佳白玲へ里見香奈女流五冠が挑戦する第2期ヒューリック杯白玲戦七番勝負(主催:ヒューリック株式会社)の第3局が9月10日(土)に鹿児島県指宿市「指宿白水館」で行われました。結果は86手で西山白玲が勝ち、七番勝負の対戦成績を1勝2敗としました。

本局は里見女流五冠の先手番。となれば先手中飛車対後手三間による相振り飛車になるのは予想できるところ。美濃囲いの構築を急ぐ西山白玲に対し、里見女流五冠は自玉の囲いを後回しにして9筋からの端攻めを見せます。

西山白玲は2筋の歩を換えて、30手目に△5六飛と横歩をかっさらったのが決断の踏み込み。がら空きになった2筋へ里見女流五冠が▲2三角と打ったのに対し、西山白玲は△4五角と打ち返します。この手がキラリと輝く好手でした。

▲3四角成を防ぎながら6七の地点に狙いをつける手ですが、一見して狭い地点に後手の飛車と角が密集しており、いかにも不安定。ひとつ間違えば大失敗のリスクもある一手です。しかしその後飛車角を細かく使い、その両方を好位置にまとめることに成功、後手がうまい指し回しでペースを握りました。

じっくりした展開になると玉形の差もあって後手が指しやすくなりそうなので、里見女流五冠は端攻めに出ました。しかし後手陣を崩す決定打とまでは至りません。対して後手は増えた手駒を生かして反撃に出ます。こうなるとやはり玉形の差が大きく響いてきます。

66手目の△2六飛打が厳しい一手。先手玉は詰めろです。後手の飛車が2五と2六に連結して並んだ形は珍しいですが、この二枚飛車が縦横によく利いており、先手玉の受けが難しくなりました。ちなみに後手の飛車が2五と2六で連結した形は過去に4局登場していますが、女流棋戦で現れたのは本局が初めてです。

80手目の△6四歩が最後の決め手で、先手の玉頭を守っている6五の銀に働きかけました。▲同銀は△5六金の一手詰めで、またこの手自体も先手玉の詰めろになっています。西山白玲が里見女流五冠の端攻めにカウンターを決めた形で勝利し、七番勝負で待望の一勝目を上げました。第4局は9月17日(土)に北海道札幌市の「札幌ビューホテル 大通公園」で行われます。

また本局が行われた日には女流王将戦の挑戦者決定戦が放映され、西山白玲が里見女流王将への挑戦権を獲得しました。これで今年度行われる西山―里見のタイトル戦は、マイナビ女子オープン、女流王位戦、白玲戦に続き4度目の実現が確定しました。今年度の両者の直接対決はここまで13局、里見女流五冠の8勝5敗となっていますが、この数字はどこまで伸びるのでしょうか。白玲戦で女流棋戦史上初の第7局が行われるまでに至るか。頂上決戦から全く目が離せません。

相崎修司(将棋情報局)

待望の初白星を挙げた西山白玲(写真は第14期マイナビ女子オープン五番勝負第5局のもの)
待望の初白星を挙げた西山白玲(写真は第14期マイナビ女子オープン五番勝負第5局のもの)