金融庁が発表した税制改正要望で、NIA関連の内容が大きな注目を集めています。制度の恒久化、非課税で運用できる期間を無限にするなど、非常にインパクトの大きい要望内容となっているからです。
もし実現した場合、投資家にとって非常に大きなメリットになることは間違いありません。今回の改正要望について分かりやすく解説するので、NISAをすでに利用している人も、まだ利用していないけれどちょっと気になっている人もぜひチェックしてください。
■令和5年度 税制改正要望とは
まず税制改正要望とは、各省庁から毎年8月末までに集められるものです。税制について改正を望む点、現状の問題点などが分かりやすく記載されています。
令和5年度の要望として、金融庁が8月31日に発表した内容は主に以下4点です。
・「資産所得倍増プラン」関連要望(NISA含む)
・クロスボーダー取引に係る税制上の環境整備
・保険など
・暗号資産
今回のNISAの拡充要望は、岸田首相が掲げる「資産所得倍増プラン」の関連要望として発表されました。
■NISAに関する要望の内容
金融庁がNISA関連で提言した内容は、下記の6点です。
・制度の恒久化
・非課税保有期間の無限化
・年間投資枠の拡大
・非課税限度額の拡大
・成長投資枠の新設
・つみたてNISAの対象年齢を未成年者まで拡大
ではそれぞれ詳しく見ていきましょう。
制度の恒久化
NISAは現時点では、時間に限りのある制度です。一般NISAは2024年から新NISAとなり2028年まで、つみたてNISAは2042年までとなっています。
制度ができてから遅く始めた人は、非課税で運用できる期間が短くなるのでその分不利です。しかし制度が恒久化されれば、いつ始めてもトータルの非課税期間は同じになるので平等になります。
非課税保有期間の無限化
投資家にとって最もインパクトの大きい内容がこちらではないでしょうか。非課税保有期間は一般NISAで5年、つみたてNISAで20年ですが、これを無期限にしようという要望です。
非課税で運用できる期間が無期限になれば、NISAの運用益に課税される税金が永久的になくなるということです。生きている限り非課税のまま、運用利益を得られることになります。
年間投資枠・非課税限度額の拡大
こちらも投資家には大きなメリットで、年間で投資可能な上限額を引き上げるという要望です。現在、一般NISAは年間120万円、つみたてNISAは年間40万円です。
これにより非課税限度額も引き上げられることになります。現在、一般NISAは120万円×5年=600万円、つみたてNISAは40万円×20年=800万円ですが、これをさらに引き上げようという内容です。
成長投資枠の新設
成長投資枠とは、上場株式や一定の商品性を持った株式投信等への投資が可能となる枠で、今回新たに設けることを要望しています。これは、つみたてNISAと一般NISAの一本化を前提としています。
今後はつみたてNISAの路線を基本としつつも、一般NISAの機能を引き継ぐ枠である成長投資枠を用意しようという意図です。
つみたてNISAの対象年齢を未成年者まで拡大
ジュニアNISAが2023年に終了するため、つみたてNISAの対象年齢を未成年者まで拡大するという内容です。10代から早めに資産形成に取り組む土壌がさらに整ってくることになります。
■実現する可能性はあるのか?
注意点として、現在ではあくまで金融庁から財務省への要望段階であり、実現が確定したわけではありません。過去にもNISAの制度恒久化が要望として出されたことがありますが、実現しませんでした。
ただし今回は岸田首相が「資産所得倍増プラン」を掲げていることもあり、関係者からは「NISA拡充は首相案件となった」との声も見られます。要望内容をすべて完全に実現することは難しくても、部分的に実現する可能性は十分にあるのではないでしょうか。
■NISA制度拡充の実現に期待!
金融庁から発表された、NISA制度の改正要望について解説しました。制度の恒久化、非課税期間の無限化、投資可能枠の拡大など、どれも利用者にメリットのある内容です。
すべて実現することは難しいとしても、たとえば制度を20年延長する、非課税保有期間を5年増やす、投資可能枠を2倍にするなど、部分的な実現はあり得ると言えます。また複数のNISA制度があると分かりづらいため、シンプルな一本化も期待したいところです。
今後、要望に関して与党の税制調査会を中心に議論を進め、12月には与党税制改正大綱として発表する予定です。果たしてNISA制度がどの程度拡充されるのか、今から覚えておいて年末にチェックしましょう!