常に、WindowsとPowerToysは共に歩んできた。PowerToysはWindows単体では足りない機能を補うため、Microsoft自身が開発・利用していたツール群。その歴史はWindows 95の時代までさかのぼる。「PowerToys for Windows 95」は15種のツールを備えていたが、中でも人気だったのがTweakUIだ。
本来はレジストリエントリーの編集を必要とするカスタマイズをGUIから操作できるため、TweakUIは個人でWindows 95 PCを使用するユーザーに欠かせないものだった。当時のユーザーにとっては、キーボードの再割り当てなどを行う「Windows 95 Kernel Toys」も懐かしいだろう。なお、Windows XPにも「PowerToys for Windows XP」として引き継がれた。
Windows 10にPowerToysがやってきたのは2019年9月(Windows 11でも使える)。当時のMicrosoftは「Windows 95時代のPowerToysプロジェクトに触発されて再起動した」と、公式ブログで述べている。そこでは、「Win」+任意キーの組み合わせをビジュアル表示する「Shortcut Guide」と、ウィンドウを指定レイアウトで配置する「FancyZones」を紹介していた。
筆者も登場当初からインストールしてきたが、大半の機能は不要だったため、ランチャーの「PowerToys Run」などいくつかの機能利用にとどまっていた。しかし、先日リリースされたバージョン0.62で見直す時期が来たようだ。
PowerToys バージョン0.62には、任意の画像からテキストを抽出する「Text Extractor」、デスクトップ上のピクセルを測定する「スクリーンルーラー」、アクセント文字入力を容易にする「Quick Accent」の3機能が加わった。このうち個人的に注目したのはText Extractorだ。
これまで長年使ってきたキャプチャーツールもテキスト抽出機能を備えていたのだが、とあるバージョンからサポートを終了した。OS側の描画変更に追従するのが難しかったのだろう。今回、Text Extractorを試したところ英文は当然として、日本語も一応は抽出できた。ただし半角スペースが挿入されるため、利用するには置換などの加工が必要だ。それでも、テキストの再利用を制限するPDFファイルに出くわした場合は有用な機能である。
現在、筆者が有効化している機能は、エクスプローラーの表示形式をカスタマイズする「File Explorer add-ons」、ファイル/フォルダー名を置換する「PowerRename」、PowerToys Run(ランチャー)の3つだが、ここにText Extractorが加わった。もちろんベストな機能はそれぞれ異なり、ユーザーによって組み合わせは変わるだろう。
もともとWindowsは標準機能のみでは使いにくく、多くのツールによってUIを改善してきた経緯がある。昨今はフリーウェアやシェアウェアと呼ばれるツール開発の盛り上がりも減少し、ユーザーの選択肢は狭まってきた。今後もWindows 11を使うユーザーにとって、PowerToysは必須ツールとなりつつある。関心を持たれた読者諸氏はMicrosoft Storeから入手してほしい。