人気の下町・月島に新ランドマーク「築地本願寺佃ビル」が誕生。1階におしゃれな和カフェ、2階に築地本願寺の佃島分院、3階以上は介護付き有料老人ホームが入るユニークな組み合わせ。街の歴史を交え、ビルの全貌を紹介します。
レトロな佃島説教所が消えた!?
ここは、東京・月島の通称「もんじゃストリート」の入り口。「佃島説教所」という看板のついたレトロな木造建築がかつてありました。そこは築地本願寺とゆかりが深い念仏道場。いや、ゆかりが深いどころか、佃島説教所の歴史をたどると、築地本願寺の焼失・再建、築地の地名誕生に関わる壮大な物語が。
築地本願寺の前身は浅草近くにあった寺院。しかし、1657年の明暦の大火、いわゆる振袖火事で焼失し、同じ場所での再建は江戸幕府から許可されませんでした。
代わりに与えられたのが、八丁堀の海上の土地で、佃島に住んでいた浄土真宗門徒が苦労をしながら埋め立て工事をし、その上に築地本願寺が建立された歴史があります。「築地」の地名は、海を埋め立て、土地を築いたことに由来するのです。
佃島の人たちはこの地に念仏の道場を作り、法話の会や法要などを開催しながら、浄土真宗の教えを代々受け継いできました。それが1934年、佃島説教所となりました。
複合ビル「築地本願寺佃ビル」に変身
歴史ある佃島説教所も老朽化が進み、このほど複合ビル「築地本願寺佃ビル」に生まれ変わることに。構成が面白く、1階にカフェ、2階に築地本願寺の佃島分院、3階から上に介護付き有料老人ホーム「ドーミー月島駅前」が入ります。
カフェは入りやすい雰囲気ですが、お店を利用せずとも1階の公衆トイレのほか、「赤ちゃんふらっと(授乳、ミルク作り、おむつ替えOK)」という施設を誰でも使えます。また、広く一般に開かれた施設、寺院なので、2階の本堂も自由にお参り可能。
新しい建物の随所に、旧佃島説教所の瓦や木材などがあしらわれ、和のイメージがしっかり継承され、重厚な歴史を語りかけてくるようです。
カフェ名物はブッダボウル、大福、日本茶
カフェの名前は、「築地本願寺カフェ Tsumugi はなれ 月島店」。ブッダボウル、大福、日本茶を柱とする素敵な和カフェです。ブッダボウルとは、さまざまな食材を盛り込んだボウルのこと。ブッダ(仏様)のぽてっとしたお腹に似ていることから、こんな名前になったという話です。
看板商品の一つは、「18品のブッダボウル」。
18は、築地本願寺のご本尊である阿弥陀様が、生きとし生けるものを救うために立てた誓願のうち、最も重要な「第18願」にちなんだ数字です。ふっくら炊いた雑穀の表面を覆い尽くすように、多彩な食材が盛り付けられています。全部合わせて18品!
中央卸売市場が豊洲に移転しても、築地には場外市場が健在。ボウルには、築地場外のおいしいものがふんだんに使われています。
魚河岸北田の銀鮭を取り囲むように、つきぢ松露(しょうろ)の卵焼き、吉岡総本店のゆずべったら漬けなどが並べられ、どれも非常にいいお味。そのほか、ボウルにさり気なく添えられた味噌汁が貝だしだったり、別皿に惜しげもなく盛られた鰹節も屈指の老舗・秋山商店のものだったりと、細部まで抜かりなし。これが、築地の底力なのです。
お楽しみのスイーツは和の大福と、洋のケーキ類が人気を二分。ご利益がありそうな「親鸞聖人ごのみの塩豆大福」をいただいたところ、口の中でとろける生地にびっくり。
水引があしらわれ、上品で小粋なパッケージなので、ちょっとした手みやげにもよさそうです。お店でいただくなら、ドリンクとセットでどうぞ。ドリンクは、日本茶のほか、日本茶ハーブティー、お茶ベースのアレンジドリンクなど多種多様。
佃、月島散歩の楽しみが増えました。
●information
築地本願寺佃ビル
東京都中央区月島1-2-9