苫前鉱も砂白金を構成する鉱物の1つで、最大20μm程度の微細粒子だという。苫前町の海岸で採取された砂白金に包有される形で発見された。苫前鉱は、プラチナと銅が1:3となる化学組成であることが、SEMによる分析で確認された。そのような化学組成を持つ鉱物はこれまで知られておらず、新種の可能性が浮かび上がったという。

そこで、より詳細に調べるため苫前鉱の結晶構造解析をTEMを用いて実施。電子線回折や高分解能像が取得・解析され、苫前鉱の結晶構造イメージは、立方体の角にプラチナを置いて各面の中央に銅を置いた姿であることがわかったとするほか、国際鉱物学連合の新鉱物・鉱物・命名分類委員会宛に、今回の結果についてまとめた鉱物学的な証明と命名の理由を添えた申請書が提出され、審査を受けて「苫前鉱」が正式名称として承認されたという。

  • 苫前鉱を含む砂白金

    (a)苫前鉱を含む砂白金。(b)苫前鉱が密集する箇所の走査型電子顕微鏡画像。最大で20μm程度の不定形な微細粒子として含まれている。(c)苫前鉱の透過型電子顕微鏡写真とシミュレーション像(右下挿図)。主成分であるプラチナと銅の配列が観察された。(d)苫前鉱の結晶構造。その結晶構造はサイコロのような立方体の隅にプラチナ原子が置かれ、面の中央に銅原子が置かれた姿となる (出所:東大 物性研Webサイト)

なお、プラチナは装飾品に多く利用されるほか、触媒としても工業的に多方面で用いられる上、産出量が少ないという重要な元素で、日本ではレアメタルに分類されている。また、プラチナは単独では算出せず、天然に産出する鉱物から抽出されたものだ。どういう鉱物にどのように存在するかを明らかにすることは、鉱物学上で重要な課題であるとともに、資源のあり方を見つめる上で社会的にも重要なテーマだとする。

苫前鉱はプラチナの天然における新しい存在様式であるために、それを生み出したユニークな地質環境があったことが考えられるという。研究チームは今後はその解明や、さらに新たな未知の鉱物の発見に取り組んでいきたいとしている。