漫画界の巨匠・石ノ森章太郎の名作コミックをもとに、1990年代にテレビドラマ化されて人気を博した『HOTEL』。およそ25年の時を経た現在を舞台に、フルオリジナル脚本でリブートされた『連続ドラマW HOTEL -NEXT DOOR-』(毎週土曜 22:00~全6話 ※第1話は無料放送)が、9月10日からWOWOWで放送&配信スタートする。競争が激化し凋落してしまった「ホテル・プラトン」に、新たな総支配人として着任した"ホテル座の怪人"こと、三枝克明役でWOWOW初主演を果たすディーン・フジオカに、本作の舞台裏や、「いつか自分でもプロデュースしてみたくなった」という、理想のホテル像について語ってもらった。
――今回、御法川監督がディーンさんに求めたのは、"狂気と色気"だそうですね。日頃から「俳優として参加するときは、現場の良い歯車になりたい」とおっしゃっているディーンさんが、監督からの求めに対し、その狂気と色気をどう表現されたのか、とても気になります。
現場では、監督が見たいと思う三枝像を責任を持って提示し続けることに徹しましたが、そこに関してはあまり自分では意識してなかったです(笑)。監督が演出でそのように持っていってくだされば、それでOKかなぁと。ただ、役を演じる上で一点だけ自分なりに意識したことは、利用客が入れるスペースと、従業員だけが使う空間とが明確に分かれているホテルが舞台のドラマであるということ。つまり、その空間の違いによって、三枝の佇まいやジェスチャーにも変化があるべきではないかと。なので、そこはちょっとしたトリビア的というか、「観た方が気づいてくだされば……」ぐらいの気持ちで演じ分けたりしてましたね。
――そもそもホテルを舞台にした作品に出演すること自体についてはどう感じましたか?
もともと私生活でも仕事でも世界各国のホテルを利用してきたなかで、様々な産業の集合体であるホテルが、どんなメカニズムで運営されているのか。そこにどんな人間ドラマがあるのか。その両方にとても興味があったので、ホテル文化を擬似体験できることにワクワクしました。ドラマのバージョンとしては、約25年という時を経たからこその伏線であったり、オマージュや文脈であったりも、所々にしっかり散りばめられているので、作品世界を楽しむための一つの要素になっていると思います。僕個人としては、今回普段は絶対に見られないホテルの裏側や、ホテルに関わる人たちの人間ドラマを追体験させてもらえたことで、「いつか自分でもホテルをプロデュースしてみたい」と思うようになりました。でも今後、通常の利用客としてホテルに行った際、ホテル側の裏事情にあまりにも理解がありすぎて、「こうすればもっとよくなるはずだけど、きっとこういう理由があってなかなか変えられないんだろうなぁ」と、あまり強い物言いがしづらくなってしまったような気もしています(笑)。
――もしご自身でホテルをプロデュースするとしたら、どんなホテルにしたいですか?
やっぱりおいしいごはんは欠かせないですよね。もちろん無臭の方が好まれる文化もあるとは思うんですが、僕は敷地全体が良い意味で結界で守られているかのような、視覚とマッチした形で嗅覚も満たされる空間の方が、より素晴らしい体験になるんじゃないかと思うんです。五感を最大限刺激し、ときに安らぎをもたらせるような、そんなホテルが理想かな。もしプロデュースする機会に恵まれたら、そういったところにもこだわって作れたらなと。
――実現したら、総支配人と広報もディーンさん自ら兼任されたりして……!?
たしかに(笑)。意外と「皆さん、ここも見てください!」とか言いながら、楽しくやっちゃうかもしれないですね。その際は防水カメラをサウナや水風呂の中にも持ち込んで、自ら動画配信したいと思います(笑)。
――ぜひともその動画を拝見したいです。楽しみにしています。
これ、ぜひ書いてくださいね(笑)。オファーお待ちしております!
――(笑)。具体的には、ホテルの総支配人役を演じるにあたりどんな準備をされましたか?
監督からホテルマンが職業人としての心得を書いたような本を1冊読むように言われて。ホテルマンとしての在り様を知る上で、すごく参考になりました。お辞儀や立ち居振る舞いなども事前にご指導いただいて、現場でも割と細かく丁寧におさらいしましたね。"ホテル座の怪人"として感情をあらわさず、冷静に、冷酷に一つ一つの変化を実行していく得体の知れない姿と、なぜそこまでするのかという、内面のコントラストを強く出せば出すほど、物語として魅力的になると思ったので。そういったことも意識しながらやっていましたね。