政府の後押しもあり、多くの人にとって投資を行うことが身近になってきました。その動きの背景にあるのが、つみたてNISAとiDeCoという制度です。この二つの投資制度に人気が集まる理由は、資産形成をしながら節税効果も期待できるという点からです。今回は節税効果という観点から、つみたてNISAとiDeCoのどちらを選ぶべきか、ファイナンシャルプランナーが解説しますので、参考にしてください。
「つみたてNISA」「iDeCo」制度の違い
「つみたてNISA」と「iDeCo」は仕組みの違いはありますが、どちらも長期的な資産形成と節税対策に適した制度になっています。
この二つの制度の名前を知っている人も多いはずです。
一方で興味を持っていても、投資と聞くと中々手を出しづらかったり、制度が複雑でどれくらいの効果があるのか分からず、最初の一歩を踏み出せない人もいるはず。
この章では、この二つの制度の仕組みを分かりやすく説明するとともに、違いを比較していきますので確認してください。
つみたてNISA
つみたてNISAとは資産形成を後押しするために、政府が作った税制優遇制度です。2014年に開始されたNISA制度の一種で、国民がより安全に投資ができるように2018年に新設されました。
1人1口座まで開設が可能なつみたてNISAでは、1年間の投資金額上限が40万円と決まっており、投資で得た運用益に対して最大20年間の非課税制度が適用されます。
また、購入できる金融商品も金融庁が選別した「長期・積立・分散投資」に適した投資信託・上場株式投資信託(ETF)に限定されているので比較的信頼性が高いです。
利用する証券会社によって違いがありますが、最低100円から投資ができることや、手数料が安価なこと、いつでも引き出しが可能な点なども含めて、投資初心者が利用しやすい制度といえます。
iDeCo
個人型確定拠出年金と呼ばれるiDeCoは、個人で将来の年金を作る制度です。加入者は自分で決めた金額を毎月積立・運用し、60歳以降に運用益を含めた掛金を、一括または分割で受け取ることができます。加入期間中の積立金と運用益に対して、非課税制度が適用されているため、つみたてNISA同様に節税効果が期待できます。
iDeCoは月額5,000円から始めることが可能で、自営業なら最大月額6万8,000円、公務員であれば月額最大1万2,000円など職業によって、掛金の上限が決まっているということも特徴です。扱っている金融商品は、元本割れのリスクが低い元本確定型商品と、投資信託がメインです。また、原則60歳まで、積立金を引き出すことができないという点も忘れてはいけません。
上記でも触れたように、つみたてNISAとiDeCoのどちらにも節税効果が期待できます。一般的に、自分自身で節税対策をすることが難しい、給与所得で生活しているサラリーマンにとっては有効的な制度であることは間違いありません。
「つみたてNISA」の節税効果
つみたてNISAは上述したように、年間40万円まで積立可能でそこで得られる運用益に対して20年間の非課税制度が適用されます。つまり、仮に2022年に40万円投資した場合、2042年までその積立金の運用ができ、翌年の2023年に投資した40万円は2043年まで運用可能ということです。現在のつみたてNISAの制度は、2042年までしか利用できないため、2042年までに投資した金額を2062年まで運用できるのが最後になります。
具体的にどれくらいの金額を節税できるかを見ていきましょう。
※20年間、毎年39.6万円積み立てて運用、運用利回りを年利3%と仮定して計算
(40万円/12ヶ月→3.33万円/月となるため、3.3万円×12ヶ月にて年間積立金額を算出)
※運用益に本来掛かってくる税率を20%で計算
〇毎年39.6万円積み立てた場合の20年間の節税額
①総投資額:792万…39.6万円×20年
②運用益:286.6万円…(792万円×3%の20年)-792万円
③節税額:57.32万円…286.6万円×20%
この通り、つみたてNISAでは運用で得た利益に対して、非課税制度が適用され、総額で1,078.6万円(①+②)を積み立てることができます。
節税額は投資額によって異なりますが、最大額40万円(39.6万円)を積み立てることで、60万円近いお金が手元に残るつみたてNISAの制度はやはり魅力的です。
「iDeCo」の節税効果
iDeCoでは運用から得た利益だけでなく、積立金に対しても課税所得からマイナスできる、非課税制度が適用されます。積立金の運用期間は、現制度の加入最終年65歳から加入年齢を逆算して考えます。
それでは、課税所得600万円のサラリーマンが45歳に加入して20年間最大金額である、年間27.6万円を積立・運用した場合の節税効果を確認していきましょう。
※20年間、毎年27.6万円を積み立てして運用、運用利回りを年利3%と仮定して計算
※課税所得600万円に掛かる所得税10%・住民税共に10%、本来運用益に掛かる税率を20%で計算
〇毎年27.6万円積み立てた場合の20年間の節税額
①総投資額:552万円(27.6万円×20年)
②所得税:55.2万円(①×20%)
③住民税:55.2万円(①×10%)
④運用益:201.6万円(①×3%の20年-①)
⑤節税額:150.7万円(①+②+③×20%)
このように、一般的なサラリーマンが20年間運用を行った場合、所得税・住民税・運用益に対する節税額は150万円以上になり、最終的に753.6万円(①+②)積み立てることができます。
所得税や住民税に関しては、分かりやすく簡単な数字で表していますが、積立金に対しても節税効果が期待できる点が、iDeCoの優れたポイントです。
どちらが節税効果が高いのか
このように、つみたてNISAもiDeCoも大きな節税効果が得られる優れた制度であることは間違いありません。それを踏まえた上でどちらの方が、節税効果が大きいかを考えると、iDeCoに軍配が上がります。
理由は上述したように、運用益にのみ非課税制度が適用されるつみたてNISAと比べて、iDeCoでは積立金に対しても節税効果が期待出来るからです。 一方で、すぐに引き出しが可能なつみたてNISAと違い、60歳まで引き出しができないという自由度の低さも考慮した上で自分自身のライフプランと合わせてどちらを利用するかを検討してください。
まとめ
つみたてNISAとiDeCoはどちらか一方だけではなく、併用して投資を行うことが可能です。それぞれの、メリットとデメリットを補うように利用することができれば最大限の節税効果を得ることができるでしょう。一方で、税金に対する知識は複雑ですので、自信が無い方は、ファイナンシャルプランナーに相談することをおすすめします。
この記事を執筆したファイナンシャルプランナー
倉知洋平(くらちようへい)
所属:株式会社マネープランナーズ