総合人事コンサルティング会社のフォー・ノーツはこのほど、全国のオフィスワーカー400名を対象に「年功序列をはじめとする人事評価制度に関する意識調査」を実施した。

同レポートでは、調査対象者を「年功序列である」グループと「やや年功序列である」グループ、「年功序列ではない」グループに分け、得られたアンケート結果を分析。年功序列をはじめとする人事評価制度の実態及び、それらの抱える課題点と解決策について考察している。

調査期間は、2022年6月28日〜6月29日。全国の現在勤めている会社に人事評価制度が「ある」と答えた日本国内のオフィスワーカーで、派遣社員、パート、アルバイトを除く正社員もしくは契約社員を対象に、インターネット調査にて実施。男女比は男性69.5% 女性30.5%。回答数は、20代・30代・40代・50代以上・各100名ずつ計400名。

  • Q.1 あなたの会社の評価制度で、採用されている評価項目はなんですか。(複数回答可)

勤務先の評価制度で採用されている評価項目を聞いたところ(複数回答可)、「成果評価(成果目標の達成度)」が最も多く、7割近くの会社が評価項目として採用していた。次いで「行動評価(目標達成に向けたプロセス・行動)」(60.5%)、「能力評価(知識やスキル)」(50.5%)となった。

  • Q.2 あなたの会社の人事評価で、最も重視されているポイントはなんですか。(単数回答)

勤務先の人事評価で、最も重視されているポイントを聞いたところ(単数回答)、「成果・業績など、仕事の結果」が43.3%となり、他項目と大きく差をつけ、最多となった。「経験・勤続年数・年齢など」を最も重視されているポイントとした回答者は、11.3%にとどまった。

  • Q.3 あなたの会社は年功序列ですか。(単数回答)

勤務先の会社が年功序列かどうかという質問(単数回答)に対しては、「年功序列である」「やや年功序列である」と答えた回答者があわせて70%以上を占め、評価ポイントとしては成果を重視する(Q.1、Q.2)としながらも、多くの企業では、年功序列の要素も併存している実態が明らかとなった。

  • Q.4 あなたの会社の、社内の人間関係は良好だと思いますか。(単数回答)

社内の人間関係について聞いた質問(単数回答)で、社内の人間関係が「良好ではないと思う」と答えた割合が最も高かったのは、Q.3で「年功序列である」と答えた回答者グループで、26.8%が「良好ではないと思う」(「あまり良好ではないと思う」(18.3%)、「まったく良好ではないと思う」(8.5%))と答えた。

最も「良好だと思う」割合が高かったのは、Q.3で「年功序列ではない」と答えた回答者グループで、78.8%が「良好だと思う」(「まあ良好だと思う」(67.3%)、「すごく良好だと思う」(11.5%))と答えた。

「すごく良好だと思う」と「まったく良好ではないと思う」の割合が最も低かったのは、「やや年功序列である」と答えた回答者グループで、「やや年功序列である」と答えたグループは、社内の人間関係に関して大きく満足はしていないが大きな不満もなく、ほどほどに満足している様子がうかがえた。

  • Q.5 あなたの会社には、心身共に健康に働ける環境がありますか。(単数回答)

「心身共に健康に働ける環境がありますか。(単数回答)」との質問では、健康に働ける環境が「ない」と答えた割合が最も高かったのは、Q.3で「年功序列である」と答えた回答者グループで、35.2%が健康に働ける環境が「ない」(「あまり健康に働ける環境がない」(22.5%)、「まったく健康に働ける環境がない」(12.7%))と答えた。

健康に働ける環境が「ある」と答えた割合が最も高かったのは、Q.3で「やや年功序列である」と答えた回答者グループで、89.2%が健康に働ける環境が「ある」(「十分に健康に働ける環境がある」(13.4%)、「まあまあ健康に働ける環境がある」(75.8%))と答え、Q.3で「年功序列ではない」と答えた回答者グループを上回った。

  • Q.6 あなたの会社には、やりがいを持って働ける環境があると思いますか。(単数回答)

「やりがいを持って働ける環境があると思いますか(単数回答)」との質問では、Q.3で「年功序列である」と答えた回答者グループのみが、やりがいを持って働ける環境が「ない」と答えた割合が著しく高かった(「あまりないと思う」(42.3%)、「まったくないと思う」(21.1%))。

やりがいを持って働ける環境が「ある」と答えた割合が最も高かったのはQ.3で「やや年功序列である」と答えた回答者グループで、60.2%がやりがいを持って働ける環境が「ある」(「すごくあると思う」(3.7%)、「まああると思う」(56.5%))と回答したが、「年功序列ではない」回答者グループとの差は2.6%にとどまった。

  • Q.7 その理由を教えてください。(複数回答可)

Q.6で、やりがいを持って働ける環境が「ない」(「あまりないと思う」、「まったくないと思う」)と回答した人のみにその理由を聞いたところ(複数回答可)、全体では「仕事の結果やプロセスを校正に評価されない」(46.4%)、「自身の成長の実感できない」(43.6%)、「社内のキャリアステップが明示されていない」(38.0%)ことが多く理由として挙げられた。

一方、Q.3で「年功序列である」と回答したグループの特徴として、やりがいを持って働ける環境が「ない」理由として「適切な目標設定がされない」(37.8%)、「社内のキャリアステップが明示されていない」(46.7%)を挙げる割合が他グループに比べ著しく高く、「年功序列である」グループ特有の問題が明らかになった。

  • Q.8 あなたは、現在勤めている会社で将来のキャリアビジョンを描けていますか。(単数回答)

  • Q.9 あなたは、新しいスキルや知識を身につけるための行動をしていますか。(単数回答)

「現在勤めている会社で将来のキャリアビジョンを描けていますか。(単数回答)」との質問(Q.8)では、将来のキャリアビジョンを「描けていない」と答えた割合が最も高かったのはQ.3で「年功序列である」と回答したグループで、57.8%が将来のキャリアビジョンを「描けていない」(「はっきりとは描けていない」(38.0%)、「まったく描けていない」(19.8%))と答えた。

「新しいスキルや知識を身につけるための行動をしていますか。(単数回答)」との質問(Q.9)でも、新しいスキルや知識を身につけるための行動を「していない」と答えた割合が最も高かったのはQ.3で「年功序列である」と回答したグループで、53.5%が新しいスキルや知識を身につけるための行動を「していない」(「あまりしていない」(32.4%)、「まったくしていない」(21.1%))と答えた。

Q.6・Q.7で、「年功序列である」回答者グループは「適切な目標設定がされない」「社内のキャリアステップが明示されていない」ために、やりがいを持って働ける環境が「ない」と感じているという特徴が明らかとなったが、Q.8・Q.9でもその結果を推察させる結果となった。

  • Q.10 あなたは、現在勤めている会社に将来性を感じますか。(単数回答)

「現在勤めている会社に将来性を感じますか。(単数回答)」との質問では、将来性を「感じない」と答えた割合が最も高かったのは、Q.3で「年功序列である」と答えた回答者グループで、64.8%が将来性を「感じない」(「あまり将来性を感じない」(43.7%)、「まったく将来性を感じない」(21.1%))と答えた。

将来性を「感じる」と答えた割合が最も高かったのは、Q.3で「やや年功序列である」と答えた回答者グループで、55.0.%が将来性を「感じる」(「すごく将来性を感じる」(6.9%)、「すこし将来性を感じる」(48.1%))と答えた。Q.3で「年功序列ではない」と答えた回答者グループ(「すごく将来性を感じる」(10.6%)、「すこし将来性を感じる」(38.9%))を上回ったが、「すごく将来性を感じる」という回答だけに限ると「年功序列ではない」回答者グループのほうが3.7%上回った。

  • Q.11 その理由を教えてください。(複数回答可)

Q.10で、将来性を「感じない」(「あまり将来性を感じない」、「まったく将来性を感じない」)と答えた回答者のみにその理由を聞いたところ(複数回答可)、全体では「会社を支える次世代が育っていないから」(48.5%)、「会社や事業の成長を感じられないから」(46.5%)が多く理由として挙げられた。

一方、Q.3で「年功序列である」と答えた回答者グループのみの特徴として、将来性を「感じない」理由として「新しいことにチャレンジする風土がない」(50.0%)を挙げる割合が他グループに比べ著しく高く、「年功序列である」グループ特有の問題が明らかになった。

  • Q.12 あなたは人事評価において、何を最も重視してほしいですか。(単数回答)

「人事評価において、何を最も重視してほしいですか」という質問では、全体では「成果・業績など、仕事の結果」(35.5%)と「行動・能力など、仕事のプロセス」(29.5%)が多数を占めた。

Q.2で得られた、現在勤務している会社が重視している人事評価ポイントごとに回答者グループを分け集計したところ、ほとんどのグループで現在勤務する会社が重視している人事評価ポイントを、全体での割合より多く望んでいることがわかった。

しかし、現在勤務する会社が「経験・勤続年数・年齢など」を重視していると答えた回答者グループでは、「経験・勤続年数・年齢など」を望む割合が全体での割合を下回り、「経験・勤続年数・年齢など」を重視して評価することは、それを重視している会社に勤務している社員からも望まれていないという状況がうかがえる結果となった。

今回の調査の結果を受けて、同社代表取締役社長・西尾太氏は、「『ちょうどよい塩梅』の年功序列は、社内環境にポジティブに作用。ただし社員の成長志向を高める『適切な評価制度』と『適切な目標設定』が必須条件」と分析。

今回の調査結果を参考に、「人事評価制度が形骸化していないか、年功序列が色濃く残っていないか、社員の成長を促す制度の運用ができているかなどを見直し、改善していくことで多くの企業により良い組織づくりを行って頂ければ幸い」とコメントしている。