藤井聡太王位に豊島将之九段が挑戦する、お~いお茶杯第63期王位戦七番勝負(主催:新聞三社連合、日本将棋連盟)の第5局が9月5・6日(月・火)に静岡県牧之原市の「平田寺」で行われました。結果は128手で藤井王位が勝利し、七番勝負の成績を4勝1敗として、王位防衛を果たしました。
本局は豊島九段の先手で、今期5度目の角換わりとなりました。38手目、後手が4筋に飛車を転換したところまでは前例がある進行で、局後に藤井王位はこの形になればやってみようと思っていた順だったと明かしています。
対して豊島九段が後手玉頭でもある4筋の歩を突いたことで前例が無くなりました。後手に好形を作られる前に動いた順です。とはいえ本格的な戦いには至らず、先手は銀矢倉に玉を入城させ、後手は玉を中央に陣取ったまま、左右のバランスを取る形になりました。
封じ手で後手の藤井王位が先手玉頭に手を付け、2日目に入ってようやく戦いが始まりました。とはいえ形勢の均衡はしばらく取れた状況が続きます。午後になって、自玉頭にも関わらず5筋を戦場にした藤井王位の構想がうまく、後手が形勢をリードし始めました。自玉頭とはいえ金銀の枚数で勝っているのが大きいようです。
豊島九段は自玉の隣に自陣角を放ち、決定打を与えません。対して藤井王位も自陣角を打ちました。こちらは遠く先手玉をにらむ攻めの手です。その後の進行で、この後手の角と先手陣を守っている飛車の交換になりました。取った飛車を先手陣に打ち込んだのが厳しいのに対し、先手は後手玉を寄せるのには戦力が足りません。
最後は藤井王位が自陣にあるもう一枚の飛車を切り飛ばした手が決め手になり、先手玉を即詰みに打ち取りました。藤井王位は王位戦3連覇を達成し、通算で獲得したタイトル数は10となりました。この10期獲得の間に一度もタイトル戦番勝負で負けていないのも驚異的です。過去の大棋士を見ると10期目獲得の時点で、羽生善治九段は2度、大山康晴十五世名人と中原誠十六世名人は4度のタイトル戦敗戦がありました。
王位戦では残念な結果となった豊島九段ですが、引き続いて王座戦にも挑戦中です。こちらは開幕戦を勝って、無冠返上に好スタートを切っています。そして藤井王位は来月から、やはり自身が保持する竜王の防衛戦が始まります。王位戦で好勝負を見せた両者から今後も目が離せません。
相崎修司(将棋情報局)