カスタムカーの種類は多岐にわたるが、その中に「ビーチカー」というジャンルがあるのをご存じだろうか? 小さくてレトロでクールな3台のビーチカーを実際に見ることができたので、一体どんなクルマなのか、写真とともにご紹介していきたい。
ビーチリゾートで大活躍?
ビーチカーとはその名の通り、ビーチリゾートで足として用いられていたクルマだという。1960年代にはヨーロッパを中心に多くのビーチカーが活躍していたそうだ。クルマから屋根やドアを取り払った開放的な作り、濡れた水着のまま乗り込んでホテルまで移動できるような内装の工夫などが特徴で、見るからにリゾートにぴったりなカスタムカーである。
「アソモビ2022 in Makuhari」ではフォレストオートの「FAFビーチカーシリーズ」を間近で見ることができた。
スリットルーフで日光を取り込む
最初の1台は「FAF ビーチバン」だ。
ベース車両は1963年から“てんとう虫”のラインアップに加わったスバル「360カスタム」。ノーマルモデルからルーフ後端を延長して荷室空間を確保し、リヤゲートを追加した商用バンだ。まだマイカーが贅沢品だった当時、仕事にレジャーに使えるクルマとして人気を博した。
FAFビーチバンで特に目を引くのがルーフ。もともとあったルーフを取り外し、13本のウッドバーを使ったスリットルーフに変更している。このスリットルーフはヒノキ材を用いたオリジナルのパーツだ。まずはルーフ形状に合わせて1本1本異なる型を製作し、そこから薄く切った3枚のヒノキ材を接着してプレス圧着するという手の込んだ作りになっている。
オリジナルの雰囲気を壊すことなく、青空の下では陽の光を車内いっぱいに取り込める見事なアイデアだ。
地産材にこだわったウッドデッキ
続いては、FAFビーチカーシリーズの第1作「FAFビーチクルーザー」だ。
ベース車両は1972年式のホンダ「バモスホンダ」。オープンカータイプの軽トラックで、フロントマスクにスペアタイヤを装着するユニークな車両だ。
1960年代のヴィンテージクルーザーをイメージしたという「FAFビーチクルーザー」。サスペンションに同社の「FAFリフトアップスプリング」を装着することで車高が若干上がっており、悪路走破性も向上している。
「FAFビーチカーシリーズ」の特徴のひとつは木材の活用で、いずれのモデルでも埼玉県西部の三富(さんとめ)平地林の地域材を多く使用している。ウッド部分の加工は高村クラフト工房が担当。FAFビーチクルーザーでは、ウッドデッキや運転席と助手席のフロアに三富平地林のヤマザクラとコナラを使っている。
乗降口にはチーク材でステップを設けたが、これもビーチクルーザー感を演出する上で重要な要素になっているという。
ダイハツの希少車がベースに?
最後に紹介する「FAFビーチバギー」がベースとしているのは、とてもレアな旧車だ。1970年に100台限定で販売されたダイハツ工業「フェローバギィ」である。
「フェローピックアップ」のシャシーに強化プラスチック製のボディーを架装した「フェローバギィ」。 ダイハツの資料によればボディサイズは全長2,995mm×全幅1,290mm×全高1,400mmで、ホイールベースは1,940mmとなっている。搭載する水冷2サイクル356ccエンジンは最高出力26PS/5,500rpm、最大トルク3.5kgm/4,500rpm。最高速度は95km/hだ。
外装そのもののカスタムはペイントとステッカー程度にとどめ、「FAFリフトアップスプリング」「FAFバンパーガード」「ヒッチメンバー」などのオリジナルパーツを活用。ロールバーに光る4連ランプがバギーっぽさを強調している。
内装ではセパレート型のシートをフルバケットシートに変更。インパネにはチーク材のウッドパネルを使っているが、三富平地林のシデやスギもふんだんに使用している。
令和に誕生したフォレストオートの「FAFビーチカーシリーズ」。もしこんなビーチカーが砂浜を走っていたら、渚の視線を独り占めするに違いない。