Androidタブレットの中でもひときわ大きな、15.6型フルHDディスプレイを備えた新製品がアイリスオーヤマ「LUCAタブレット」シリーズに加わります。
12万1,980円と強気な価格設定ですが、Android 12を搭載し、スペック面でも見劣りしない“本格派の大画面タブレット”に仕上がっています。9月15日に発売予定で、全国の家電量販店やホームセンターのほか、ネット通販でも販売する予定。型番は「TM152M8N1」。実機に触れながら、Androidタブレットの今後についても考えてみました。
普段使いにちょうど良いスペック。クリエイター需要も
15.6型LUCAタブレットの詳細はニュース記事で既に紹介していますが、改めて整理しましょう。
最大の特徴は、15.6型でフルHD/1,920×1,080ドットの液晶パネルを備えていること。現行のタブレット製品は10型前後が主流となっており、iPadシリーズのラインナップでも12.9型(iPad Pro)を超えるサイズはありません。
最新のLUCAタブレットのサイズ感は、どちらかというとタブレットよりはモバイルディスプレイに近いモノがあり、アイリスオーヤマの担当者も「持ち運びと据え置き、どちらで使っても使い勝手が良いサイズ」として、15.6型というサイズを選んだと話していました。
OSにAndroid 12を採用し、CPUはMediaTek MT6779、GPUはPowerVR GM9446。8GBメモリと128GBのストレージを搭載しています(4GBメモリ/ストレージ64GBの「TM152M4N1」という機種もあります)。CPU/GPUは最新世代のチップというわけではなさそうですが、試用機を触った限りでは、画面のスワイプやタップといった操作はきわめて軽快。画面遷移でもたつくこともありませんでした。普段使いには十分なスペックといえるでしょう。
リア・フロントともに800万画素のカメラを搭載。側面には電源や音量調整のための物理ボタン、USB Type-C端子のほか、左右に計4スピーカーを備えています。内蔵バッテリー容量は8,000mAh。
内蔵ストレージは128GBと十分な容量がありますが、さらにmicroSDメモリーカードスロットを備え、最大512GBまでのmicroSDカード(別売)を使って容量を拡張することもできます。
通信関連では、IEEE 802.11a/b/g/n/ac準拠の無線LANを搭載し、Bluetooth 5.0に準拠しています。SIMカードが刺さらないので単独ではネット接続できませんが、スマートフォンのテザリングなどでネットに接続できれば、屋外でも使えそうです。
ただ、本体サイズ/重さが364×11×224mm(幅×奥行き×高さ)/1,250gで、それなりに大きく重たい製品なので、付属の専用スタンドに乗せて家で使うのがメインとなりそうです。なお、同製品専用のシリコン製保護カバーも別売オプションとして用意するとのこと。
アイリスオーヤマでは、15.6型LUCAタブレットの具体的な使い方として、映像や電子書籍といったコンテンツを楽しんだり、Web会議やオンライン授業などで使ったりといったオーソドックスな使い方を提案しています。
また、同社製のワイヤレステレビチューナー「LUCAステーション」(別売、24,800円)と連携する専用アプリがプリインストールされているので、LUCAステーションとセットで購入すればテレビを置かずに宅内でどこでも地デジ放送などを楽しむこともできます。
15.6型LUCAタブレットはほぼ“素のAndroid”に近い状態ですが、もちろんGoogle Playストアが使えるので、ユーザーの用途に合わせてアプリを追加して、さまざまな用途で活用できそうです。手書きメモアプリを入れて、冷蔵庫に貼り付けるメモのように、家族への頼みごとや伝達事項を書き込んでおく、という使い方もアリでしょう。
これだけ大きなサイズであれば、イラストを描く人にとっては「これ、液タブ(液晶タブレット)として使えないだろうか?」と思いつくかもしれませんが、専用のスタイラスペンなどは用意していないとのこと。
とはいえ、担当者によるとそういったクリエイター需要があることは想定しているほか、小中学生の学校授業で採り入れられているScratch(スクラッチ)やViscuit(ビスケット)といったモジュールプログラミングアプリをLUCAタブレットで活用することも見込んだ上で、15.6型画面を採用したと話していました。
Googleのタブレット再参入、LUCAタブレット活用の幅を広げるか?
ここ数年、Androidタブレットは数少ないメーカーがいくつか高性能モデルを出していた以外は、低価格機が主流で停滞した状態が続き、アップルのiPadシリーズと比べるといまひとつ存在感を示せていなかったように感じられます。タブレット向けのアプリも、ラインナップが豊富とは言えない状況です。
実際、MM総研の調査によれば、国内のタブレット市場はアップルのiPadがメーカー別出荷台数の首位を12年連続で獲得。OS別の出荷台数・シェアを見ても、半分以上をiPadOSが占めており、残りをAndroidとWindowsで分け合っている状態です(もっとも、これらの統計にはAmazonのFireタブレットのように、ネット通販中心の製品の売上が反映されにくいことに留意しておく必要はあります)。
しかし、2022年になってAndroidタブレットを取り巻く状況に変化の兆しも出てきました。それが、GoogleがTensorプロセッサーを搭載した高性能なAndroidタブレットを再び市場に送り出すとサプライズ的に表明したこと。“Pixel Tablet”の登場は2023年になるとのことですが、Androidスマートフォンを普及させ、PC業界でもChromebookのラインナップを着実に増やしてきたGoogleがタブレット市場に再び参入するということで、大きな注目を集めたことは記憶に新しいでしょう。
Androidタブレット“本家”のGoogleが再び市場に戻ってくるとなれば、タブレットに最適化されたアプリの開発が盛り上がり、iPadと比べて不利な現状に変化が起きることも期待されます。そしてGoogle新タブレットがけん引するかたちでAndroidタブレット用アプリの普及が再び加速していけば、その影響を受けてアイリスオーヤマのLUCAタブレットの活用の幅がさらに広がる可能性もあると思われます。
今のところ、LUCAタブレットはコンテンツ消費をメインとしたパーソナルユースや、法人・文教向けのニーズをカバーする方針ですが、今後はタブレットで絵を描いたり、動画を編集したりといったクリエイター需要をも取り込んでいけるようになるかもしれません。LUCAタブレットも含めて、Androidタブレットを取り巻く状況は要注目です。