税制優遇が受けられ、お得に投資できる「NISA(少額投資非課税制度)」。そのNISAについて、これまでの投資上限が引き上げられる可能性が出てきました。また、制度の恒久化、非課税保有期間の無期限化も検討されています。

NISAは今後どのように変わり、どのくらいお得になるのでしょうか。NISA制度の見直しについて、最新情報をまとめました。

■NISAはどのように変わる?

<金融庁が財務省へ提言>

8月末、金融庁は2023年税制改正要望について、NISAの恒久化や投資枠の拡大を財務省へ正式に求めました。与党の税制調査会が中心となり議論を進め、年末にかけて、投資枠の引き上げ幅など具体的な内容を決める予定となっています。

これに先立ち、岸田総理は5月、英国の金融街シティーで講演した際、NISAの拡充などにより、預貯金を資産運用に回すよう促すことを表明していました。年末までに、NISAの抜本的拡充を盛り込んだ「資産所得倍増プラン」を策定する予定です。

これまで、金融庁は過去4回もNISAの恒久化を要望してきましたが、実現には至りませんでした。今回は、「岸田政権の政策に沿う要望である」として、制度の恒久化を目指しています。

<NISAとは>

このように、政権が掲げるプランの要ともなっているNISAですが、そもそもどのような制度なのでしょうか。通常、株や投資信託などの金融商品に投資すると、その売買益や受け取った配当には、約20%の税金がかかります。

しかし、NISA口座(非課税口座)では、毎年一定金額の範囲内で購入した金融商品から得られる利益に対しては、一定期間、税金がかからないのです。

なお、NISAには一般NISA、つみたてNISA、ジュニアNISAの3種類があります。一般NISAは現行の制度が2023年末で終了し、2024年からは2階建ての制度である「新NISA」が始まる予定です。

つみたてNISAは、積立投資で買い付けるNISAで、「長期・積立・分散投資」に適した一定の投資信託のみが投資可能商品となっています。ジュニアNISAは未成年を対象としたNISAで、2023年末で制度の終了が決定しています。

<NISA制度の見直し点>

では、具体的に、金融庁からNISAについてどのような見直しが要望されたのでしょうか。提言されたのは、主に以下の5つの項目です。

1.制度の恒久化

これまで新規に投資できる期間(投資可能期間)は、一般NISA(新NISA)で2028年まで、つみたてNISAで2042年までだったものを、恒久化する。

2.非課税保有期間の無期限化

一般NISAで5年間、つみたてNISAで20年間だった非課税保有期間を、無期限化する。

3.年間投資枠、非課税限度額の拡大

一般NISAで120万円、つみたてNISAで40万円だった年間投資枠を拡大し、それに伴い、一般NISAで600万円(120万円×5年)、つみたてNISAで800万円(40万円×20年)だった非課税限度額も拡大する。

4.「成長投資枠(仮称)」の導入

つみたてNISAとの併用を前提とし、上場株式や一定の商品性を持った株式投信等への投資が可能となる「成長投資枠」を新たに設ける。

5.つみたてNISAの対象年齢を未成年者まで拡大

2023年末に制度が終了するジュニアNISAに代わり、つみたてNISAの対象年齢を現在の20歳以上から、未成年者まで拡大する。

なお、これらに加え、日本証券業協会が7月に行った提言では、一般NISAの年間投資枠は120万円から240万円へ、つみたてNISAは40万円から60万円へ引き上げ、さらに、2つの制度を併用可能とすることで、年間投資枠の合計を300万円とする案が示されています。

<提言通りになれば、どれだけお得?>

金融庁や日本証券業協会の提言通りに変更されれば、NISAは非常に魅力的な制度になるでしょう。これまで、一般NISAとつみたてNISAは併用不可でしたので、年間投資枠は120万円または40万円まででした。しかし、年間投資枠が提言通りに増え、併用可能となれば、年間投資枠は一気に300万円に跳ね上がります。

また、つみたてNISAの対象年齢が未成年者にも拡大されれば、子どもの分の非課税枠も活用できます。ジュニアNISAのような払い出し制限がなければ、使い勝手の悪さに悩むこともありません(ジュニアNISAは、2024年1月以降払い出し制限が解除)。

さらに、現行の一般NISAでは、5年間の非課税期間満了後、非課税期間を延長するためには、翌年の枠を使用し資産を移し替える手続きが必要でした。非課税期間が無期限化すれば、この「ロールオーバー」も不要となります。

お得に投資できるだけでなく、使い勝手良く、シンプルな制度に変わることを期待したいですね。NISA制度の見直しについて、今後も注目していきましょう。

■NISA制度の見直しを機に、投資を始めてみよう

今回の金融庁の提言により、年間投資枠は大幅に増える可能性があります。さらに、これまでは投資可能期間が決まっていたことで、制度の利用開始が遅れるほど非課税枠が減る恐れがありました。

しかし、今後制度が恒久化となれば、非課税枠の減少を気にすることなく投資をスタートできます。NISAが未経験の人も、制度の見直しを機に投資を始めてみてはいかがでしょうか。