具体的には、明るさの変動が大きい約1万天体のスペクトルを用いた大規模解析として、現時点で最大の掃天観測であるスローン・デジタル・スカイ・サーベイによって取得された可視光スペクトルから、鉄、酸素、水素の輝線強度として等価幅を測定し、天体ごとに輝線強度と後の明るさの変化量がプロットされた。その結果、ある時期のスペクトルから計算された輝線強度が、その後の明るさの変化と密接に関係していることが発見されたとする。

  • クェーサーの輝線強度を表す散布図

    10年後の明るさの変化を色で表した、クェーサーの輝線強度を表す散布図。カラーバーの値から、左下に分布する天体ほど暗くなりやすく、右上に分布する天体ほど変化が少ないことがわかる (出所:京大プレスリリースPDF)

また、別の時期に取得された同一天体のスペクトル同士を比較することで、各天体の明るさの変動に伴う輝線強度の変動量が調べられた。クェーサーが暗くなるとき、明るくなるときの遷移や、平均的には酸素輝線と鉄輝線が反相関を示すような分布が示されていることが確認され、各天体の明るさの変動は、平均的な状態を境にして暗い状態と明るい状態を振動するように遷移しているということが示唆されたという。

  • クェーサーの輝線強度が、どのように変化したのかの図

    クェーサーの輝線強度が、どのように変化したのかを矢印の始点と終点で表した図。明るいときの天体の分布が茶色の等高線で、暗いときの天体の分布が青い等高線で表されている (出所:京大プレスリリースPDF)

研究チームでは、今回の研究の最大の成果について、クェーサーの酸素輝線の等価幅と鉄輝線に対する強度比が、その後の明るさの変動と密接に結びついているという事実が発見されたことだとする。また、クェーサーの大規模な変動が、その天体にとっての平均的な状態を中心に振動しているということが示されたことも挙げており、このことから、近年数多く報告されている明るさの変動現象は一時的なものではなく、繰り返し起きてきた現象であり、今後も繰り返されることが示唆されるとしている。

なお、今回の研究成果から、ランダムだと思われていた明るさの変化が、スペクトルの情報だけから予測できる可能性が示されたと研究チームでは説明するほか、各天体の平均的な明るさからどの程度逸脱しているのかが推定できるため、クェーサーの質量獲得の歴史において、現在はどの程度活発に成長している段階なのかを議論することができるようになるとしており、大質量ブラックホールの成長過程を知る上で重要な考察を与えることが期待されるとしている。