本局は振り駒の結果、永瀬王座の先手となり角換わりへ進みます。永瀬王座が飛車角交換から後手陣に馬を作ったのに対し、豊島九段は交換となった桂を使って先手陣を崩しにかかります。後手が△8六歩とアヤを付けて迎えた63手目、ここで▲同歩と応じるのも自然でしたが、永瀬王座は▲6二銀△4三金▲5五桂と、果敢に攻めに出たのが決断の一手でした。

しかし、豊島九段が鋭く反撃します。ここで△6九銀と王手に打ったのが意表のただ捨て。▲同玉とさせることで玉を危険地帯におびき寄せ、△8七歩成の当たりがより強くなりました。この辺りから徐々に形勢は後手に傾いていったようです。

進んで、永瀬王座が▲4三金と詰めろを掛けた局面。ここで豊島九段がギアを上げます。竜の王手で下から追い上げて、永瀬玉をどんどん上部に逃していきます。5八の地点にいた永瀬玉をあっという間に6三まで追いやり、後手陣に入玉させました。一般的には上部に逃がすのは筋の悪い追い方とされていますが、この場合はこの攻め方がピッタリでした。8一に設置されている後手の飛車が縦横無尽に働いており、入玉した永瀬玉は想像以上に狭いのです。

さらに王手で追いかけながら自玉を攻防手で安全にした豊島九段は、先手玉を的確に追い詰めて勝利、無冠返上へ向けて幸先のよいスタートを切りました。次局がアドバンテージを取りやすい先手番なのも大きいでしょう。第2局は9月13日(火)に、名古屋市の「名古屋マリオットアソシアホテル」で行われます。

相崎修司(将棋情報局)

<p></picture></span></a>鋭い切れ味で初戦を制した豊島九段(提供:日本将棋連盟)</p>

鋭い切れ味で初戦を制した豊島九段(提供:日本将棋連盟)