「朝の時間を活用したら、心の余裕ができる」「仕事の生産性が上がる」といった数多くの効果があるとされる「朝活」は、忙しい社会人にこそ重要だといわれます。
著書『朝1分間、30の習慣。』(すばる舎)を上梓し、「質問」によって能力を引き出して自分らしく生きるメソッドを提唱する「質問家」のマツダミヒロさんも朝活推進派です。朝活にもさまざまなものがありますが、マツダさんが推奨する5つの朝活を教えてくれました。
■朝にしっかりと光を浴びることが朝活の基本
いま、社会人のあいだで「朝活」が流行しています。朝の時間帯を充実させることが、その日の幸福度を上げることにつながると実感している人が多いからでしょう。
このことは、個人の主観的な感覚でもなんでもなく、紛れもない事実です。2012年にトロント大学の研究チームが行った調査によると、いわゆる朝型で朝から積極的に活動している人たちは、それ以外の人たちと比べてより多くのポジティブ感情を抱くことが明らかになりました。
ただわたしは、誰もが朝型になるべきだとは思いません。夜勤をしている人もいますし、生まれつき強い夜型だという人もいるでしょう。ですから、自分自身のライフスタイルにおける起床時間を朝と考え、その時間帯に朝活をしてほしいと思います。もちろん、その朝活の内容も人それぞれでいいのですが、ここではわたしがおすすめする朝活を紹介していきます。
【ベスト「朝活」5選】
1.カーテンを開けて朝日を浴びる
2.「ボディースキャン」をする
3.自分なりのリラックス法を行う
4.目的なくテレビとスマホを見ない
5.自分の気持ちを書く
ひとつ目は、「カーテンを開けて朝日を浴びる」というものです。単純なことですし、「朝活とまでいえないのでは?」と思った人もいるかもしれませんが、これこそが朝活の基本です。なぜなら、光こそが体にとっての朝、そして夜を規定するものだからです。
わたしたちの体は、朝に光を浴びた14〜16時間後に「メラトニン」というホルモンを分泌しはじめます。メラトニンは、「睡眠ホルモン」とも呼ばれ、その名のとおり、眠気を誘発して睡眠の質を向上させてくれる働きを持っています。
つまり、朝にしっかりと光を浴びることで夜は気持ちよく眠れ、翌朝にしゃきっと目覚められるというわけです。前日の夜になかなか眠れず、朝からぼんやりとしていては朝活どころではありません。
■人生のあらゆる場面において、力んでいいことはない
おすすめするふたつ目の朝活は、「『ボディースキャン』をする」というもの。「ボディースキャン」とは瞑想の一種で、目が覚めてから横になったまま、足元から頭まで全身に意識をめぐらせて体の声を聞き、自分の体の状態を確認するというものです。
そうすることで「ちょっと胃腸の調子がよくないな」といったふうに体の不調の兆候を察知し、症状が進行する前に対処することができます。
忙しく働いている人のなかには、体調が多少悪いくらいでは、たとえまわりに心配されても「大丈夫、大丈夫」と答える人もいます。そうして無理を続けて結果的に大きな病気を患ってしまえば、自分にとって大きなマイナスになることはもちろん、仕事仲間などまわりに迷惑をかけることにもなりかねません。
3つ目の朝活は、「自分なりのリラックス法を行う」というものです。多くの人は、力を入れることは簡単にできますが、適度に力を抜くことは苦手です。でも、力を抜くことこそがパフォーマンスの発揮につながります。
武道やスポーツをやっている人ならイメージしやすいことでしょう。柔道でも剣道でもゴルフでもテニスでも、力んでいいことはなにもありません。無駄な力を入れることで、逆に力を出せなくなります。もちろん、このことは武道やスポーツに限らず、仕事などあらゆる場面において共通するものです。
そこで、これまでに自分がリラックスできた、安心できたときのことを思い起こしてみてください。それこそが、あなたにとってのリラックス法です。それらを朝に行えば、適度に力が抜けて、持てる力をしっかりと発揮することができるようになるでしょう。
■気持ちを整えて1日をスタートさせる
おすすめする4つ目の朝活は、「目的なくテレビとスマホを見ない」というもの。テレビとスマホはどちらも、意識して能動的に利用しないと自分を受動的にさせていくものです。結果的に、限られた貴重な時間がどんどん奪われていきます。
みなさんにも、暇だからとスマホを手にしたら、SNSや動画共有アプリを延々と見てしまって気がついたら2時間も3時間もたっていたという経験があるでしょう。それらの時間は無駄でしかありませんし、本当にもったいない時間の使い方です。
もちろん、目的があるのなら問題ありません。楽しみにしている番組を見たり、自分の成長のために必要な情報を得たりするためなら、2時間でも3時間でもテレビやスマホを使ってもいいでしょう。同じ2時間、3時間であっても、目的なくテレビやスマホを見ることに使った時間とは意味合いがまったくちがってきます。
わたしがおすすめする最後の朝活は、「自分の気持ちを書く」です。先に紹介したボディースキャンとも通じるものですが、今度は体ではなく心の声に耳を傾けてみてください。「いまの気持ちは?」と自分に問いかけて、その答えを書き出しましょう。自分の気持ちを知ることは、頭のなかだけではなかなかできません。書き出すことで気持ちを客観視するのです。
そして、その答えに対して、2、3回ほどさらに質問を重ねていきます。たとえば、「いまの気持ちは?」と自分に問いかけ、「もやもやしている」と書き出したとします。そのあとに続けて、「どうしてもやもやしているの?」「いま抱えている仕事に気がかりなことがあるから」「どうすればいい?」「尊敬している先輩の〇〇さんに相談する」といった具合です。
もちろん、はじめの答えが「最高の気持ち!」であればなんの問題もありませんが、この例のようにネガティブな気持ちを抱えていた場合、この問いかけと回答によって解決法を見つけられ、気持ちを整えることができます。
気持ちが落ち着かない、不安が頭から離れないという状態では、当然ながらいい1日を送ることはできません。気持ちを整えた状態で1日をスタートさせることがなにより肝要です。
構成/岩川悟(合同会社スリップストリーム) 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人