マーケティングで語られる理論・戦略には、4Pや3Cといった数々のフレームワークがあります。基礎的なマーケティング知識を抑えるには、フレームワークの理解も欠かせません。今回は市場分析・事業戦略・購買プロセス・マーケティング施策に役立つフレームワークを10個紹介します。
市場の分析で使えるフレームワーク
まずは市場環境を分析し、現状を把握するのに役立つフレームワークから見ていきましょう。
3C分析
3Cとは、Company(自社)、Customer(顧客)、Competitor(競合)の3つの要素で市場を分析する手法です。要素が3つのみと比較的シンプルで理解しやすいのがメリットです。
3C分析で肝となるのは自社の分析で、第三者的にフラットな視点で捉えることがコツとなります。
PEST分析
PEST分析は自社を取り巻く外部環境にフォーカスし、以下4つの要素で分析する手法です。
・Politics(政治)
・Economy(経済)
・Society(社会)
・Technology(技術)
近年、IT技術の進化などで外部環境は激しく変動する傾向です。定期的に分析を行い、中長期的な視点で潮流や動向を把握することが求められます。
SWOT分析
自社の状況を、以下4つの要素で分析し、自社の方向性を探るためのフレームワークです。
環境 | プラス要因 | マイナス要因 |
---|---|---|
内部環境 | Strength(強み) | Weakness(弱み) |
外部環境 | Opportunity(機会) | Threat(脅威) |
内部環境のStrengthは自社の事業の強み、Weaknessは克服すべき弱みです。外部環境のOpportunityは市場におけるチャンス、Threatは自社にとって脅威となる存在です。
プラス・マイナスの要因を組み合わせて分析するのも有用です。例えば弱みと機会を組み合わせることで、新たに生まれたビジネスチャンスを生かすために、弱みを補強する戦略とは何かを考えるのに役立ちます。
5フォース分析
自社に与える力(フォース)を5つの分類に分け、それぞれがどの程度自社の脅威となるか、あるいは影響を与えるかを検討するものです。5つのフォースとは、売り手・買い手・業界内の競合・新規参入者・代替品です。
SWOT分析における脅威(Threat)の洗い出しに使ったり、脅威の深堀に使ったりすることができます。
具体的な事業戦略に役立つフレームワーク
ここからは、顧客のターゲティング、自社の製品・サービスのポジショニングなど、具体的な戦略構築で使えるフレームワークを紹介します。
STP分析
STPは、Segmentation(選別)、Targeting(ターゲティング)、Positioning(ポジショニング)のそれぞれの頭文字を取ったフレームワークです。S→T→Pの順番に、下記のように分析を進めます。
・S:顧客層を年齢・性別・年収・居住地・ライフスタイルなどでセグメント分けする
・T:分けたセグメントのうち、ターゲットとする層を決める
・P:ターゲット層を踏まえ、自社製品・サービスの立ち位置を決める
STP分析を行うことで、どのような顧客にどのような製品を届けるのか、基本的なマーケティング戦略を構築することができます。
バリューチェーン分析
バリューチェーンとは価値連鎖のことで、原材料の調達から顧客へのデリバリーまでを複数の工程に分け、価値のつながりとして表現します。バリューチェーンを分析することで、自社の事業のどの工程がどの程度の価値を生み出しているのかを把握できます。
・原材料の調達
・製造
・物流
・販売
・アフターサポート
新規事業の検討においてバリューチェーンを構築することで、どの工程で強みを付けるのか戦略を立てるのに役立ちます。また既存の事業戦略・経営戦略が適切か、改善のポイントがどこかを探るのにも有効です。
顧客に購買してもらうためのプロセスを立てるフレームワーク
顧客の行動を理解し、購買・契約につなげるプロセスを策定するのに役立つフレームワークです。
AIDMAモデル
製品・サービスの認知から、購買までのプロセスを表すフレームワークで、以下5つの要素の頭文字をとったものです。
1.Attention(注意)
2.Interest(関心)
3.Desire(欲求)
4.Memory(記憶)
5.Action(行動)
上記1~5の順番に進むのが標準的な購買プロセスとされています。プロセスを理解することで、消費者に対して適切なアプローチを図るのに役立ちます。
AISASモデル
インターネットの普及で購買行動に起きた変化に応じ、AIDMAをアレンジしたものです。
1.Attention(注意)
2.Interest(関心)
3.Search(検索)
4.Action(行動)
5.Share(共有)
AISASにおいて、ユーザーは製品・サービスについて検索し、他と比較をしたり口コミを見たりします。購入後も口コミサイトやSNSなどに投稿して、周囲と共有を行います。購入後の行動もチェックすべきなのが、AIDMAとの大きな違いです。
マーケティング施策の立案に役立つフレームワーク
ここからは、具体的な施策の立案に使えるフレームワークを解説します。
4P分析
下記4つの「P」をどのように実行するか、戦略を構築するフレームワークです。
・Product(製品)
・Place(流通)
・Price(価格)
・Promotion(プロモーション)
どのような製品を、いくらで、どのような場所・流通経路で、どのようなプロモーションを実施して販売するかを決めていきます。この4つの要素は「マーケティングミックス」とも呼ばれます。
4C分析
販売側の視点である4Pを、顧客視点に置き換えたフレームワークです。
・Consumer(顧客)
・Convenience(利便性)
・Cost(コスト)
・Communication(コミュニケーション)
顧客にとって利便性の良い流通方法、顧客が負担できるコスト、顧客との円滑なコミュニケーションが求められます。4Pで立てた施策を、4Cの視点から見直して調整することも有効です。
フレームワークを上手に活用してマーケティング戦略を立てよう
マーケティングにおける代表的なフレームワークを紹介してきました。基本的なマーケティング戦略の構築に役立つもの、具体的な施策の効率に役立つものなど、様々な種類があります。
世の中の変化によって、フレームワークは見直されることがあります。例えばAIDMAからAISASが派生したようなケースです。
フレームワークは十分役に立つものですが、未来永劫にわたって使えるとは限らないことに注意しましょう。自社や市場の環境に応じてアレンジして使うのも有効です。