道林教授は、8月13日に小笠原海溝の最深部への潜航を実施。小笠原海溝は、太平洋プレートがフィリピン海プレートに沈み込んでいる場所であり、小笠原諸島の東の海底に南北に細長く続く海溝として知られている。
道林教授は、午前8時に母船プレッシャードロップ号からヴェスコヴォ氏とともにリミッティングファクター号に乗船し、午前11時51分に水深9801mの泥に覆われた海底(北緯29度25分5秒・東経142度42分25秒)に到達。水中では10mで1気圧がかかることから、この水深では1000気圧近い水圧がかかっていることになる。なお、小笠原海溝の最深部はこれまで公式には9780mとされていたが、今回の地形探査でそれよりも21mほど深いことが判明したとする。
道林教授は、海溝最深部と西側陸側斜面の地形地質とマントルを構成するカンラン岩などの岩石および生物の観察を実施。そして、午後2時23分に海底を離れて午後5時20分に海面に浮上し、午後5時40分にリミッティングファクター号を下船した。
また今回の潜航によって道林教授は、1962年にフランスの有人潜水船アルシメード号(アルキメデス号とも呼ばれる)に乗船し、千島・カムチャッカ海溝の最深部である水深9545mまで潜航した東京水産大の元学長である故・佐々木忠義教授が持つ日本人最深記録を抜き、60年ぶりの更新を達成したという。