NTTドコモが5G SAサービスを個人向けにも開始しました。高速大容量、低遅延、多量接続という5Gの特徴の真価を発揮するのはSAサービス以降とされており、期待のサービスです。新サービスの実際のところはどうなのか、サービス開始時点で提供エリアとなった東京駅の丸の内駅前広場でチェックしてみました。
ドコモの5G SA(Stand Alone)サービスは、法人向けには2021年12月から専用データ通信端末でスタートしていましたが、今回スマートフォンに対応し、個人でも利用可能になりました。Sub-6帯(3.7GHz帯/4.5GHz帯)とミリ波(28GHz帯)の3つのバンドで利用可能です。
通信速度は最大で下り4.9Gbps、上り1.1Gbpsと超高速。ドコモのWebサイトで確認できる提供エリアはごくごく限られていて、関東・東北・北海道では北海道のJR札幌駅(南口周辺)、宮城県のJR仙台駅(仙台PARCO1前ペデストリアンデッキ周辺)、東京都の東京駅(丸の内駅前広場)と、ごく限られたエリア。大阪府では20カ所以上のスポットがありますが、九州では福岡県JR博多駅(博多駅前広場周辺)の1カ所のみで、基本的に地方ごとに最低1カ所以上は……という感じでしょうか。
提供エリアは今後順次拡大するものと思われますが、主要ターミナル駅周辺の一部、イベント会場や商業施設などを中心に展開し、2023年3月末までに47都道府県への展開を目指すとしています。とはいえ展開速度は遅く、それほど早期のエリア化を期待できるわけではありません。
正直、主要ターミナル駅周辺に限って5G SAが展開される意味はあまりあるとは思えませんが、ショーケースとしてたまたま使えたらラッキーぐらいの感覚でいるといいでしょう。
また、5G SAの利用はオプション扱いで、月額550円の料金が必要です。ただし終了時期未定の無料キャンペーンが用意されており、当面は無料で利用可能。ドコモにはこうした終了時期未定でずっと無料が継続しているオプションが他にもあり、「もともと無料が前提だったが、何らかの理由で料金を設定しなければならない」という事情があるのかもしれません。
さて、そんな5G SAです。筆者の行動範囲でテストができるのは、東京のJR東京駅丸の内口を出た正面にある丸の内駅前広場だけですので、ここでテストしました。平日13時ごろ、17時ごろ、19時ごろと、3回テストしています。
テストに使ったのはシャープ「AQUOS R7」です。たまたま2台の「AQUOS R7」を用意できたので、一方はSAオプションを契約したドコモ回線、もう一方にはオプション未申し込みのahamo回線でテストしました。「AQUOS R7」の場合、特に端末のアップデートをせずに5G SAに接続できました。
実際に丸の内駅前広場へ行ってみると、5G SA自体は広くカバーされているようで、少なくとも丸の内駅前広場全体で電波自体は届いている模様。ところが、テストをしてみるとスピードは5G NSAとそれほど差がありません。
かなり苦労してポイントを探してみましたが、スピードが出た場所でも2回目は低速に落ちてしまうなど、なかなか安定しません。結果として、最高速が出たのは丸の内駅前広場の「東京駅」の石碑から71mほど離れた場所。向かって左側、皇居方面を向いた状態で計測したときでした。
その時の速度は、下り1,177Mbps(約1.2Gbps)、上り188Mbps。同様にテストしていたライターの中山智氏が深夜に下り2Gbps超え、上り200Mbps超えをYouTubeで報告しているので、このぐらいが上限でしょうか。
しかし、広場内を移動していると、下りで数百Mbps、遅いと200Mbps台ということもあり、安定しません。通信速度は、電波の状況、無線区間の混雑など、様々な事情で変動します。そのため、理論的な上限速度に達することはまずないのですが、もう少し安定して速度が出ないと実感できません。その後もウロウロと計測していたところ、5G NSAでも下り1,359Mbps、上り111Mbpsを叩きだしてしまい、ますます実感はしづらくなりました。
とはいえ、単に高速というだけだと5G SAのメリットは完全ではありません。5G SAでは、ネットワークスライシングやMEC(Multi-access Edge Computing)といった技術によって真価が発揮されます。無線区間だけの技術ではないので、まだその効果は実感しにくいでしょう。
いずれにせよ、スマートフォンでWebサイトやSNSを見るぐらいならNSAでもSAでも大差はありません。それよりも安定してデータが流れることが重要です。とはいえモバイル通信は総じて上り速度が遅いので、このあたりが高速化すると、様々なシーンでの応用が期待できます。
個人的には写真や動画のアップロードが高速化するだけでも嬉しいのですが、YouTubeなどの配信が高画質化・安定化する可能性もあるでしょう。SAが真価を発揮すれば、現在のような配信遅延が解消され、視聴者とのやり取りでよりリアルタイム性が出せるかもしれません。
法人分野では多くの応用が考えられますが、いかにネットワークを構築し、新技術の投入が進展するかにかかっています。コロナ禍をはじめとした問題もありますが、今後の各社の取り組みが加速することを期待したいところです。