橋本愛演じる合格率100%の謎多き家庭教師・トラコこと根津寅子が、お金の使い方を通して生きていく上で大切なことを教えていく日本テレビ系ドラマ『家庭教師のトラコ』(毎週水曜22:00~)。あす31日放送の第7話では、いよいよトラコの本当の狙いが明らかに。トラコから「(保護者たちへ)そろそろ例のこと伝えて」と命じられた福多(中村蒼)は、「おまえがやろうとしてることって、あまりにも過激だから」と5年前の再会を思い出す。
佳境を迎える第7話を前に取材に応じてくれたのは、前半戦で家族の再生と成長を演じた上原里美役の鈴木保奈美、下山智代役の板谷由夏、中村真希役の美村里江という母親役の3人。撮影の裏話や印象に残っている台詞、今後の展開について「万福亭」のシーンさながらに自由に語ってもらった。
――今作は『家政婦のミタ』や『過保護のカホコ』など、家族の物語を多数描いてきた脚本家・遊川和彦氏の最新作ですが、皆さんから見たストーリーの面白さを教えてください。
鈴木:「お金の使い方」をテーマにしているのは面白い切り口だなと。日本ってお金について話しにくい環境があるというか、学ぶ機会が少ないじゃないですか。この年になっても税金だったり保険だったり分からないことだらけなので、義務教育で教えてくれれば良かったのにと思うんです。日々何かしらにお金がかかるから、生きることとお金を使うことはイコールといっても過言ではない。キャッシュレス化が進んで目に見えるお金がどんどんなくなってきているからこそ、自分でちゃんと考えましょうというのはすごく面白いテーマだと思います。大人はもちろん、知恵ちゃん(真希の6歳の娘。演:加藤柚凪)くらいのお子さんにも「お金のことを考えよう」と思えるきっかけになってほしいです。
板谷:遊川さんの脚本には、社会に対する皮肉やメッセージが込められていますよね。今作では「お母さん」もテーマの1つなので、遊川さんのお母さんに対する思いを汲み取って演じたいと思っています。5話にもご自身の実話を盛り込まれていて、「『病室で『良かったね』って言ったときにお母さんが号泣した』という話をやりたいからよろしくお願いします」と熱く語ってくださったんですけど……その話を聞いたのが演じる直前で。めちゃくちゃプレッシャーですよと言いました(笑)。
美村:遊川さんの脚本には、目に見える撒き餌のような毒と、油断しているときに刺されるようなこっそり隠された毒があるんです。テンポ良く進みながらも一気に沈む瞬間があって、視聴者を翻弄させるトリックのような要素が毎話必ず入っている。役者としては、引っ張ってからフッと落とすようなお芝居がしたいな、見ているときは楽しいけど見終わった後に「ふむ……」と考え込んでいただけるようなものが作れればうれしいな、と思っています。
――これまでで印象的なシーンを教えてください。
美村:5話で智代さんがトラコ先生に遺書を添削されるシーンは斬新だなと思いました。本音を隠してドラマティックに書いてしまいがちな遺書にちゃんと素直な気持ちを書かせようという考えは、遺された人にとっても素敵なことですよね。私も死ぬ前に添削してもらいたいって思っちゃいました(笑)。
板谷:私もいつかそんな機会があったら、自分に正直になって書こうと思いました。我ながらいい遺書だった!(笑)
鈴木:私は1話でトラコ先生が知恵ちゃんに言った「ちゃんと目を開いて見ろよ」という言葉が印象的でした。トラコ先生は「自分で考えなきゃ」とよく言いますが、自分の実際の生活でもちゃんと目を見開いて見て、自分で考えなきゃいけないなと痛感します。
――心に残るトラコ先生の台詞がたくさんありますよね。
美村:厳しくされたり肩透かしな行動をされたあとに「いいんじゃない」と言われると、「やったー!」ってうれしくなる……ドMになりつつあります(笑)。きっと演じている愛ちゃんが持つ引力ですよね。この人に褒められたいって思わされるんです。
板谷:私も5話で優しい顔をしたトラコ先生に「いいんじゃない」って言われて泣けました。あれは熱血先生としての表情だったのか、素のトラコだったのか……。
美村:いろんな感情が表に出るお母さん役の私たちと、ずっと先を見越して安定しているトラコ先生の対比が面白い。私たちが自由にアップダウンしても、トラコ先生の台詞で物語がしっかり締まる説得力があるからすごいなと思います。