エミライは、FiiO Electronicsの新しいスタンダード・ポータブルオーディオプレーヤーと位置づけた「M11S」を9月2日に発売する。価格はオープンプライスで、店頭価格は88,000円前後を見込む。

  • M11S

大きな人気を博したというFiiOのポータブルプレーヤー「M11」(2019年発売)をベースに、クアルコムの8コアSoC「Snapdragon 660」を搭載してスムーズな動作を実現。ESS製のDACチップ「ES9038Q2M」を左右独立構成で搭載し、上位機種「M11 Plus ESS」(2022年2月発売)と同様のデジタルオーディオ回路構成や、独自の新世代ヘッドホンアンプ回路を搭載するなど、従来機から大幅に性能を強化した。FiiOでは、M11Sを「音楽リスニング体験のスタンダードを新たなステージへを誘う戦略モデル」と位置づけている。

  • 回路構成のイメージ

ヘッドホン出力は3.5mmシングルエンド、2.5mm/4.4mmバランスの3系統で、さらに4.4mmバランスライン出力機能も追加している(ヘッドホン出力兼用)。

FiiOカスタム仕様のAndroid OS 10をシステムに採用し、Google Playストアからさまざまなアプリを追加可能。音楽再生に特化して音質を高める“Pure musicモード”も利用できる。USB DACやBluetoothトランスミッター/レシーバーとして使えるモードを備えるほか、AirPlayとDLNAストリーミングにも対応している。

  • ヘッドホン出力とUSB端子

M11Sの詳細

従来のM11は、旭化成エレクトロニクスの「AK4493EQ」を左右独立構成で2基搭載していたが、M11SはESS「ES9038Q2M」×2に変更。PCM 384kHz、DSD256(11.2MHz/USB入力のDoP再生時はDSD128)まで対応する。MQAフルデコード機能も備える。

1基で左右チャンネルを再生可能なDACチップの能力を、すべて片チャンネルのためだけに使い、新世代アンプ回路と相まって「非常に高い出力を持たせながらも、音楽再生のために生み出されたプレーヤーならではのピュアなオーディオ体験」を可能にしたという。

  • M11Sのオーディオ回路構成

FPGAを中心とした、デジタル領域信号処理回路とフェムト秒クロック水晶発振器による「デジタル・オーディオ・ピューリフィケーション・システム」(DAPS)を採用。

DAPSでは上位機M11 Plus ESSと同様に、SoCから送られるデジタルデータを、独自のPLL技術を搭載した独自開発の第4世代FPGAを経由させて、FPGA内でデジタルオーディオ信号として「DACが最も真価を発揮しやすいよう」に緻密に処理。また、44.1kHz系/48kHz系専用の2基の超低ジッター・フェムト秒クロック水晶発振器により、「デジタルオーディオ回路部全体に高精度かつ低ジッターなマスタークロックを提供し、クリーンで極めて高い忠実度を誇るD/A変換を実現する」という。

FiiOと米THXとの協力体制で培った経験を活かし、FiiOが開発した新世代ヘッドホンアンプ回路を搭載。オペアンプはM11と同じ「OPA1642」+「OPA926」構成だが、バランス出力時で670mW/32Ωという強力な駆動力を実現(M11は550mW/32Ω)。さらに、1.9uVという「歴代ポータブルプレーヤー製品のなかでも有数の低ノイズフロア」と、従来比62%の低ノイズ化を達成したとする。

このヘッドホンアンプ回路により、「高感度のIEM(カスタムイヤホン)との組み合わせにおいても、静寂のなかから立ち上がるきめ細やかなサウンドが、音楽再生のために生み出されたプレーヤーならではの音楽の美しさを引き出す」とのこと。

3.5mmライン出力と4.4mmバランスライン出力に対応し、ライン出力時はヘッドホンアンプ部を自動的にバイパスしてオーディオ信号を出力。バランス接続対応のポータブルヘッドホンアンプとのバランス・ライン接続が可能になる。

電源回路は、左右のDACチップ、I/V変換部、前段ローパスフィルター部、増幅拡張回路に独立した電源を用意。音質に関わる重要なセクションに、最適かつ強力な電源供給を行い、「各コンポーネントの真価を発揮し、音楽のダイナミクスをより高度に再現する」という。

  • 側面

FiiOカスタム仕様のAndroidシステムと、Snapdragon 660を搭載。スマホのような使い勝手を実現しつつ、音質劣化の原因となるAndroidのSRC(サンプリングレート・コンバーター)機能をバイパスする仕組みを盛り込んで、ポータブルプレーヤーとしての性能を高めた。メモリは3GB、ストレージは32GB。最大2TBまでのmicroSDカードも利用できる。

Bluetooth 5.0準拠で、Bluetoothヘッドホンなどに音楽を送信するだけでなく、スマホから音楽をワイヤレス伝送して再生するレシーバー機能も装備。対応コーデックは、送信時がLDAC/LHDC/aptX HD/aptX/AAC/SBC(LHDC利用時は96kHz/24bit対応)、受信時はSBC/AAC/LDAC。

容量5,300mAhのバッテリーを搭載し、連続再生15時間を実現。QC4.0とPD急速充電にも対応し、3時間でフル充電できる。5型のIPS液晶ディスプレイ(720p対応)を搭載し、マルチタッチ操作をサポート。本体は六角形を基調とした第6世代ハニカムデザインを採用した。本体サイズ/重さは125.2×74×18.5mm(縦×横×厚さ)/約271g。

  • 背面